白豚娘の入手
骨巨人との戦いは緊張を強いられるので、やっぱり普通の戦いよりも疲れる。
付け加えると、長期間の野営では疲労が回復しきらずに、徐々に疲れてしまうのだ。
そう考えると迷宮での滞在は3日を限度とし、それ以上の探索は致命的なミスを引き起こすと考えていい。
……僕に限っては。
これがゴブリン達となると、僕ら人間と違い視界が確保されているので、消耗がそこまで大きくならない。
迷宮への適性はゴブリンの方が高いとみるべきだろう。
迷宮内での3泊目を終え、今日は4日目。
とうとう宝箱の解放となる。
これまでの経験から考えられる宝箱の中身の法則は以下の通り。
・ フロア3への滞在時間に比例し、中身の価値が高くなる(フロア2などは関係ない)
・ 出てくるのは「白い生き物」である
・ 経過時間ごとに「初回ボーナス」が設定されており、レアなモンスターが手に入る(24時間ごとにカウントされる模様)
・ 今まで出てきたのはノーマルが「アヒル」「ニワトリ」「鶴」「白ゴブ」で、レアが「白ゴブ姫」「鞍馬」
アヒルから鶴までは8時間ごとに切り替わるのが確認されている。
で、24時間経過するとあとは白ゴブで、48時間経過でも今のところ変わっていない。時間経過によりスキルの数だけは増えたけどね。
こうなると優秀なスキル持ちを手に入れるべく4泊5泊も計画したいところだけど、それをやるのは、僕がやるのは無駄だと思う。そのうち刀の中から誰かにやらせるつもりだ。
ま、それよりも今は初回ボーナスがあるかないかを期待しよう。
そしてオーク系モンスターかさらに上位の別モンスターをゲット。
可能なら鞍馬の嫁が欲しいので、オーク系モンスターの雌が出てくれるといいんだけど。
「じゃあ、開けてくれ」
「ワカッタ」
いつものように、宝箱から離れたところで棒やロープを使って信綱が蓋を開ける。
今まで罠があった事はないけど、今後も無いとは言い切れないからね。
宝箱の蓋が開き、上から中身が見えるようになる。棒付き鏡を使って確認すると、中には女物の服を着た白いオークがいた。
僕はひとまず安心できると判断し、鞍馬に向かうよう、視線で指示を出す。
鞍馬は僕の指示に従い、宝箱に近寄って“中身”を見た。
「ブヒィィーーッ!!」
鞍馬、勝利の雄叫び。
両手を天に挙げ、快哉を叫ぶ。
迷宮内で叫ぶなと言いたいけど、鞍馬にしてみれば人生(?)初の同族だ。叫びたくもなるだろう。
誾や他の仲間も、仕方が無いなといった顔で周囲の警戒をしている。声に誘われて敵が来ないとも限らないからね。
「鞍馬。その子を連れて地上に戻るよ。じゃないと一緒にいられないだろ?」
「ブヒッ!!」
鞍馬は僕の呼びかけで正気に戻ると、天に掲げた手を下ろし、真剣な表情になった。
そうだ。この出会いは始まりに過ぎず、地上に戻ってからが本番なのだ。特に、ホームに戻りサーヴァントにしてしまえば蘇生も可能になるけど、逆を言えばそれまでは死なせてしまえば終わりという事でもある。鞍馬も真剣になろうというものだ。
僕らがそうやって騒いでいると、宝箱の中の彼女は気だるげに身を起こした。
この白オークはゆったりとしたワンピースを着ていて、白ゴブ姫のようなノーブルな感じはしない。装飾品の類いも付けていない。
宝箱から出てきた足を見れば靴を履いているので、歩きに問題なさそうな事にほっとした。
どうでもいいけど、オーク種の雌は複乳のようである。胸に押し上げられた服の感じから言えば、人間の2に対し6か8か。
身長の方は僕と同じぐらいで、鞍馬より頭一つ小さい。体格は――ふくよかというか、ぽっちゃり系と言っておこう。オークなら標準だよ、きっと。
こうして僕らはオークの雌を手に入れるという難事に成功し、ご機嫌な鞍馬と共にホームに引き返すのだった。
そして、彼女が「初回ボーナス」対象であった事を知る。
……ついでに鞍馬が全力で泣いた。嫁にできなかったからね。しょうがない。




