ちょっとした経験値稼ぎ
ステージ2のフロア3。
何回目だっけ? もう10回ぐらい来たかな?
何度も挑んで慣れてきたので、フロア3の移動も行きたい場所になんとなく行けるようになってきた。
マップを書かなくても道に迷わないっていいよね。
今回は3泊もする予定なので、中ボスも倒すつもりで準備してきた。
前回の教訓に従い、鉄球による集中砲火で片を付ける。
鉄球は僕が3発で残りは2発。使う鉄球は全部信綱が作った物である。基本、使い捨てになるだろう。
ただ、持ち込む鉄球が重すぎるため、フロア2を初日にクリアするので、翌日に刀の後続部隊が鉄球を届けにやってくるように手配をした。
鉄球の重さは1個7㎏ぐらいなので、13個持ち込めば91㎏とシャレにならない重さがある。他にも荷物はあるし、自分たちだけで持ち込むのは無謀で厄介なのだ。
正直な事を言えば、台車など、運搬用の道具を使えば負担を軽減できるんだけどね?
これを機に、12人体制の、難易度が上昇した迷宮を経験しておこうという魂胆もある。
何度も通って慣れたフロア3だけど、たまには違う事をして刺激を受けるのもいいと思うのだ。
そうじゃないと、戦闘経験値とかが全然貯まらないからね。
最近は下の連中も強くなりつつあるので、上位陣の底上げをしたいんだよ。
鞍馬がいれば防御力に関係なく戦えるし、安全マージンは十分に取れるだろうからさ。
フロア3の階段近くで1泊し、翌日。
「かなりじゃなくて、無茶苦茶キツイ」
「本日は3戦以上しないようにしましょう。鞍馬の魔力が無くなれば、思わぬ不覚を取ることがあります」
「オサ、ムリスルナ」
僕らは人が増えてパワーアップした雑魚を相手に、苦戦していた。
出てくる雑魚はスケルトンを主力に白ゴブリンや骨犬という組み合わせのままだ。
だけどスケルトンが武装したことで継戦能力が大幅に増したことに加え、白ゴブも強くなったし、何よりも骨犬が大型化して脅威度が増したのが怖い。
骨犬は骨狼とでも言うべき大きさになっていて、膝下までの体高が膝上ぐらいになっていた。
最初に相対したときはそこまで気になる変化とは見えなかったが、これまでと比べて明らかに速さと力が増していた。
わずかな変化であれば誤差を修正するように戦えばいい。
だけど無視するのが難しい変化であれば抜本的な戦術の見直しが必要になる。
これまではスコップの一振りで何とかなっていたのが、一撃の重さが増し、ゴブリンでは体格差の都合で反動が抑え込めないほど大きくなり、どうしても倒しきれなくなったのだ。
おかげで鞍馬が魔法を使い、優先的に骨狼を倒すことで戦線を維持するのがやっとだった。
「武器を重くすれば殴ったこっちが弾き飛ばされることも無くなるけど」
「重い武器では小回りが利きません。移動の時に使う体力も大きくなります」
「けど、骨狼相手ならしょうがないよね。全員分用意する必要はないけど、みんなスコップメインで戦うのも怖いし、1匹2匹は別の武器の方が良いね」
僕は軽く私見を述べ、今後の方針を検討させることにした。
ちなみに、この場合は鞍馬がハンマー使いになるだろうと思う。
鞍馬はオークセイント、オーク種なので骨狼に吹き飛ばされない体重とパワーがある。ゴブリンとは基本能力が違うのだ。
この問題は今後の課題として、ホームに帰ってから再検討することにした。
ここでグダグダ言い合っても結論は出ないからね。戦う本人の適性とかもあるし。
そんな訳で僕らは最小限の戦闘を済ませ、迷宮の作る暗闇の中で、暇と戦う長い休憩を取るのだった。




