フロア3の中ボス④
都合良く仲間になったオークセイントの鞍馬。
多分大丈夫だとは思うけど、その性能を全く確認せずに中ボスに挑むのは無謀だ。
そんなわけで、日帰りでフロア2の探索を行い、実力を確認する。
「ブヒー!!」
鞍馬が何か叫ぶと、スケルトンの足下が光り、体を構成する骨が関節の接続を維持できず、バラバラになって崩れ落ちた。
鞍馬の≪神聖魔法≫はスケルトンをただの骨に戻す効果があるみたいだ。
「鞍馬、それは何回使える?」
「ブヒ」
僕がそのその様に尋ねると、鞍馬は両手の指を使って7回だと答えた。
あと7回で、魔力がフルにあれば8回使えるらしい。
「相手の体の大きさは関係ある? 強い奴相手だと効果が薄いとか、魔力の消費が重くなるとかって事はない?」
「ブヒブヒ」
何度か会話を重ねた結果、強い奴には効果が薄くなるらしいことが分かった。ゲームで言うなら固定ダメージ式で、あの中ボス相手では数回打ち込まないと倒せない可能性が高いという。スケルトンはちょうど一発で倒せるHPって事なんだろうね。
そうなると中ボス戦ではあんまり意味が無いのかな?
もしかしたら、ダメージ次第では動きが鈍くなるという可能性もあるし、無駄じゃないと良いなぁ。
そうやって鞍馬の期待値を計り、僕は今回のアタックを終えた。
日本に戻った僕は骨を溶かす物で、よさげな物を探してみた。
そして自分には手に入らない、使えない物だということを理解した。
コーラ飲料が骨を溶かすという話は、清涼飲料水に含まれる酸味のことで、それを言い出したら普通に僕らが飲む飲み物なんかの大半がアウトになるっていうどうでも良い内容だった。
で、実際に骨だけを溶かすような薬品などはけっこうあるんだけど、危険物取り扱い資格が必要な物が大半で、僕はそんな物を持っていないから買うことができなかった。ついでに、どうやって作ればいいのかも分からないので諦めるしかない。ネットに作り方は載っているんだけど、材料をそろえる時点でアウトみたいだからね。
そんなわけで、骨を溶かしてどうにかする手段は諦めた。
もっと手軽に戦う方法を考えている。
ネット上にあるプレイヤーの動画の中には巨人との戦いを撮った物もそれなりに存在する。
そんな中で参考になりそうだったのは、ポーラ、投げ分銅を使った戦い方だった。けっこう長めの鎖を相手の体に巻き付けて動きを阻害している。
別に地面に縫い付けるといった事はしていないんだけど、鎖が巻き付いたことでうまく肘を曲げられないといった場面があり、それなら僕らでもなんとかできそうだ。
鎖は用意……ホームセンターで買えるけど、向こうに持ち込むのが大変そうだなぁ。
でもなんとかなるなら、いいか。
問題はその人たちのメインウェポンで、槍をメインにしていたんだよね。
理由は、巻き付いた鎖をよけて攻撃できるから。振るタイプの武器ではなく、突くタイプの武器がいいって事なんだよ。スコップも槍として使えるけど、穂先が広すぎて微妙というのが僕の判断だ。
スコップは万能武器だけど、本当の意味で万能というわけじゃない。幅広く使える、応用性の高い武器って意味で万能武器なんだ。
槍は……ゴブリンの大集落から回収してきた奴を使えばいいかな?
槍の質次第ではそのまま使えなくても、パーツとして使えるようにすればいいか。
とりあえず直近の方針はそれでいこう。
僕は他にもいくつか準備をして、数回のアタックの中で槍や鎖の取り扱いの習熟を行い、中ボスに挑む段取りをした。
鞍馬との連携もあるし、誰をお休みにするかも決めないといけなかったので、すぐには動けなかった。
そうして迎えた71回目のアタック。
全ての準備を終えた僕らは、フロア3の中ボス戦に挑む。
何度かの訓練の結果、蔵人が待機となり鞍馬を迎えた6人パーティ。
鞍馬は意思疎通に若干の不安があるけど、それでも骨巨人と戦うための、最高戦力を整えた。
いざって時の脱出ルートがあることを期待しつつ、僕らは迷宮へと足を踏み入れた。




