スコップの寿命?
4回目のアタック。
今回は『猪の牙の納品』に照準を合わせての挑戦になる。
ありがたいことに、狙ったクエストがあったのでそれを受注。前回のように、狙った奴が無いと結構困るからね。
僕は予定を立てて動くタイプなんだよ。
今回は猪の解体に挑戦するつもりだから、その為の準備からやっておかないといけない。
具体的には穴掘りをして、猪を「煮る」ための湯船を作るのだ。
当たり前だけど、僕の持ち込めるお水はあんまりない。
飲み水や体を洗う水、調理用に使う分だけでいっぱいいっぱいなんだ。“湯水のごとく”使うなんてありえない。
節約して使うとなると、簡単な湯桶を作って最低限のお湯で済ませる必要がある。
ただ、“桶”は作るのが大変だから、穴を掘って湯船にするのが現実的なラインだと思う。
そんなわけで、初日はスコップ片手に大き目の穴を掘っておいた。
あとは水がすぐに浸みていかないようにビニールシートを敷いて完成。
猪を狩ったらここに放り込んでお水をかけ、焼いた石で沸騰させることになるかな?
あ。やる順番を考えると、お湯を作ってからにしないとビニールシートに穴が開いちゃうか。そこはまぁ、上手くやるしかないね。
猪を放り込む穴を用意したら、今度は猪が同じ場所にいるかどうかを確認しに行く。
ダンジョンの状態は毎回リセットされるっていうけど、生き物の状態までリセットされるかは分からないんだよね。
もしかしたら同じ場所にいるかもしれないし、確認しておくことは無意味じゃないと思う。
僕がそうやってダンジョンを歩けば、道中には必ずゴブリンが出てくる。
僕は素手のゴブリンを遠くから投石で、近付かれればスコップで殺していく。ゴブリンを殺すのにも慣れてきたし、今の僕なら2匹までなら同時に相手取れると思うよ。
これはスキルの熟練度がどうこうと言うより、殺すことに慣れてきたからだと思う。
人間が殺し合いをするのに必要なのは、心構えとか精神状態が何よりも大事なんだよ。
殺す気持ちを穏やかな中に持てるなら上手く殺せるし、追い詰められた緊張感の中でしか殺せないなら下手な殺しになる。
実力を十全に発揮できるかどうかが分かれ目なんだね。
今の僕なら、ゴブリンぐらいに慌てるなんて事は無い。
互いの実力を把握している事もあり、何の気負いもなく殺し合える境地に至ったわけだ。
気持ちに余裕が出来れば余計な力を使って疲れる事も無いし、長時間の行動が出来るようになる。
もう少し、行動範囲を広げられるかな?
僕はゴブリンを20匹ほど殺すと、前回猪の居た場所にたどり着いた。
残念ながら生き物の状態はリセットされるようで、近くに猪が木々に付けるマーキングは無かった。
新しい狩場を毎回探せって事かぁ。
残念ながら楽はさせてくれないね。
この日は31匹ものゴブリンを屠る事になり、まさに大猟と言える成果を挙げた。
ただ、使っていたスコップがそろそろ限界になってしまった。
柄のところと刃と言うか先端部分の固定が甘くなり、ぐらつくようになってしまった。
このスコップは前回から酷使していたから、それもしょうがない。
ゴブリン殺しに使うなんて想定外の使用方法をしていたんだし、劣化が早いのも納得だよ。
ゴブリンだけで50匹ぐらい屠ったんだよね。
それ以外に穴をいっぱい掘ったし、よく頑張ったと思っていいのかな?
もしかしたら止めネジが緩んでいるだけかもしれないけど、残念ながら工具のドライバーは持ち込んでなかったんだ。
修理できるかどうかはリアルに帰ってからするとして、今回は新しい、予備のスコップを使おうかな。