ウェディング仕様?
ドレス姿の白ゴブは、縄で縛った後に誾が監督する事になった。誾はこの白ゴブにセメント対応なので、監視の目を緩める事はないだろう。
誾に監視される白ゴブが騒がしかったけど、基本は無視で。
ただ、この白ゴブの面倒なところはそれだけではなかった。
信綱ら4匹が、この白ゴブを気に入ってしまったのだ。
この白ゴブは、雌である。
ドレスを着ているのだし、誾に確認させたので間違いない。
なので、僕は信綱らが純粋に雌として欲しがっているのだろうと推測する。
雄には好かれ、雌から蛇蝎のごとく忌み嫌われる。
どこのぶりっ子だと言いたいけど、だいたい世の中そんなものだったね。異性の関心を集める奴は、同性から嫌われるものだ。
僕も、イケメンなんて死滅してしまえばいいと思っているし。
帰り道ではスケルトンや白ゴブを倒しながらだけど、無事に外までたどり着く事ができた。
飯の時間、白ゴブが食べる物に感激していたので、下がった好感度の補填はできたかなと思う。
戻ってくると、いつものサーヴァント登録メッセージが出た。
この白ゴブはホームまで連れ帰る事でサーヴァントとして登録できたらしい。サーヴァント化しているなら今後の扱いを少しマシにしていいだろう。信綱に言って縄を解かせる。
連れ帰ってみて思う事は、この白ゴブは日の光の下でも大丈夫だったのかと言う驚き。
白いからアルビノ、日光に弱い種族だと思ったよ。
もう一つは、やっぱりゴブリンの雄にモテモテで、雌から嫌われる奴だという事。
恐ろしい事にこれはスキルとアビリティで、≪異性誘惑≫というものらしい。反動で同性から嫌われるという最悪のスキル・アビリティで、この白ゴブはそういう生き物だと割り切るしかない。
なお、「異性」と関していても僕には一切効果を及ぼさない。そのあたりは種族差が大きいんだろうね。
そしてこの白ゴブ、種族の方がなかなかおかしかった。
『ホワイトゴブリン・プリンセス』
お姫様だよ、この白ゴブ。
なのに同性から嫌われるとか、最悪じゃないか。
普通、組織の中核なら同性のとりまとめこそが仕事じゃないのかな? 嫌われてどうするんだろう。
うん。現実逃避は止めよう。
問題はもっと別のところだよね。
モンスターにありがちな「キング」「クィーン」と言った支配階級の種族。「プリンセス」ならワンランク落ちるとは言え、同系統の支配階級種族だと思う。
つまりこいつが将来的にこのホームにおけるゴブリンのとりまとめ役になりかねないという事なんだ。同性から嫌われる、こいつが。
もちろん最高権力者が僕である事は間違いないし、ゴブリンたちはその一段下に置くことは確定事項だ。そこをなぁなぁにすると、ろくでもないことになる。
ただね。
そうなるとね。
「白ゴブ姫を、僕の嫁にしましょう」
なんていう勢力が出かねないんだよ!
無理!
絶対に無理!
白ゴブ姫は、結局はゴブリンなんだよ。
目の玉ランラン、耳は伸びてて尖ってて、体毛が無いツルツルのゴブリンなんだよ!
基本クリーチャーのゴブリンは、異性として見るのなんて無理なんだよ!!
犬猫の擬人化というか、制服を着て二足歩行のぬいぐるみとかあるでしょ。
アレに欲情しなさいと言われてできる、業の深い奴とは違うんだ。僕は。
それなら今まで一緒にいた誾の方がマシである。身内の認識がある分、拒絶反応が少ないと思う。
デフォルト装備のドレスとブーケ。あれ、ウェディング仕様なの? 僕に嫁ぐ気なの? 本人も準備万端なの?
でも、駄目だから。
勘弁してください。できないものは、できません。




