お宝?
前回、僕らは宝箱からニワトリを拾った。
だから、宝箱に生き物が入っている事は構わないんだ。
突っ込みたい気持ちはあるけど、それはもうそういうものだと思っているし。ダンジョンの常識は僕らが持つ、日本の常識じゃ無い。
だけど、これは無いんじゃないかな。
僕に対する、ピンポイントな嫌がらせだ。
入っていたのは白ゴブリンだ。
しかも、赤いバラのブーケを持って白いドレスを着用している。
何でだよと、声を大にして突っ込みたい。
何なんだよと、叫んでしまいたい。
いくら何でも、僕らにどうしろって言うんだよ。
訳が分からないよ。
混乱する頭を抱えながら、僕はこの白ゴブリンを見なかった事にした。
宝箱の蓋を閉め、早々に逃げだそうとしたが。
「ノーッ!?」
宝箱の中のゴブリンが目覚めたようだ。
勢いよく蓋を内側から吹き飛ばし、あたりを見渡す。そして僕を見つけると、宝箱の中から飛び出して抱きつこうとした。
「させません!」
「ノ!?」
その抱きつこうとした白ゴブを、誾が止める。
この白ゴブは僕のサーヴァントじゃないし、安全を考えれば適切な判断だと思う。
しかし誾の声には何と言うか、白ゴブに対する嫌悪感というか、怨敵を前にしたかのような感情があるように思えた。
誾は白ゴブの腕を取ると、そのまま捻って関節を極める。
あとは地面に押し倒して制圧。見事と言える、きれいな流れだった。動画を撮りたいからもう一回やってと言いたくなるほどである。
「ノ、ノーッ!」
「うるさい。黙りなさい。何を言っているか分かりません」
押さえつけられた白ゴブは当然のように暴れるが、腕を背中の方に捻られてしまえば相当な腕力差がない限り、抜け出す事は困難である。
白ゴブの制圧は完璧です。暴れるたびに誾の締め付けが強くなっていく気がする。
白ゴブは全力で抜け出そうとしているように見えるけど、誾にはまだ余力がありそうだ。
あと、白ゴブと誾たちの間で会話は成立しないみたい。野良ゴブリンの時もそうだったけど、同じゴブリンだからと言葉が通じるなんて事はなさそうだ。
「誾。言っている事が分からないのはいいとして、前に捕まえたゴブリンたちとも違う言語をしゃべっているのかな?」
「はい。全く違う言葉をしゃべっています」
そうだよね。
普段のゴブリンは「グギャギャ」なのに、このゴブリンは「ノー」だから。
念のために聞いてみたけど、コミュニケーションは諦めた方がいいと思う。
そうなると、だ。
この白ゴブリンを味方と思って連れて行くのは大きなリスクがある。
宝箱の中に入っていたから所有権が、などと甘い事を考えると、足下をすくわれる気がする。
けど、殺してしまうのは、もったいない。かもしれない。
ステージ2でサーヴァントが手に入った事はなく、この白ゴブもまだサーヴァント化していない。
けど、ホームまで連れて行けばサーヴァントになるかもしれなくて。
とりあえず、縄で縛って連れて行く?
好感度はダダ下がりだけど、それが現実的なプランかな?




