迷宮 フロア3②
見た目が一緒なら、敵も変わらず。
フロアが違うんだから、そんなことは無いよね。
フロア1では、白ゴブリンだった。
フロア2では、白ゴブリンとスケルトン。
そしてフロア3では、スケルトンの亜種、スカルビーストが加わった。
スカルビーストは、その名の通り骨でできた動物だ。
中型犬程度の大きさの四つ足動物が骨だけになったような外見をしている。
多分犬なんだろうけど、犬の骨格なんて知らないから断言はできない。
これが加わったことで、戦闘の難易度は一気に上がった。
「蔵人! 足元注意で!」
スカルビースト――通称は骨犬は背が低い。
そのため、攻撃しようと思うとかなり近づけないと攻撃を当てれない。
しかもスケルトンの様に何も考えず横にスコップを振るだけでいいわけではなく、必ずやや下の方を攻撃するので非常にやりにくい。攻撃は肩の高さが一番やりやすく、骨犬の様にひざの高さを狙わないといけない相手は、攻撃範囲が狭くなるからいやだ。
しょうがないので、骨犬はゴブリンたちに任せることにしている。
ゴブリンは僕より背が低いので、骨犬相手なら僕よりもマシに戦えるんだよ。
どうでもいい話だけど、こいつら相手に光とか聖なる力ってやつは効果を発揮しない。
不浄な力で動いているわけではなく、魔法的な力で動いているため、意味が無いらしい。
ゲームみたいに火には弱いけど、それを言い出したら生き物だって火に弱い。
よく分からない、運営のこだわりようである。
メインで戦うのは僕と信綱だけど、他の皆にも協力してもらったり、交替してもらって疲労を溜めないようにしている。
メインで、というのは隊列の話である。
蔵人と誾は真ん中で、義輝と卜伝が後列になる。
前に進めば、必然的に僕らが戦闘を受け持つことになるのだ。
前で戦う僕らは、一番の危険に面するという事で、荷物持ちを免除されている。
逆に後ろ4列のメンバーは食料や水で15㎏近い荷物を抱えて付いてきた。
荷物は徐々に軽くなるとはいえ、前半の移動では戦う僕らよりも疲れる役目だった。帰りになれば戦利品の持ち帰りもある。とても大変だ。
一応は負担の分散を試みるけど――もっと適切な方法があるんじゃないかと思う訳だ。
特に、こんな時は。
「宝箱だね」
「宝箱ですね」
迷宮ステージは、ときどき宝箱が出てくる。
スケルトンのサーヴァントなどよりも早くに見付かったこの宝箱は、割と大きい。横幅1m、奥行と高さが50㎝、施錠もされずに蓋をされたこの宝箱は、蓋をそのまま持ち上げれば開けることが可能だ。
こんな大荷物が手に入るとなると、今回の探索はここで引き上げにした方が良いかもしれない。中身によるけど、これ以上の移動は難しいだろう。
「まずは中身の確認だね」
「では、蔵人に頼みますね」
「グギャッ!」
宝箱には罠が仕掛けられているかもしれない。開けるのは危険行為だ。
僕は論外。
誾は回復薬。
信綱はメインアタッカー。
残り3匹の中で一番器用なのは蔵人だ。
だから蔵人を信用し、任せることにした。
蔵人は箱の後ろに立って、中身を確認できない位置から蓋をゆっくりと開ける。もちろん僕らは退避済みだ。
開かれた宝箱に罠は無かったようで、1分ほど待ってみたけど、特に何も起こらないので中身を確認してもらう。
「グギャ?」
中を見た蔵人は、何か不思議なものを見たという表情で中身を取り出した。
中から出てきたのは、ニワトリ。雄雌の番が3組ほど入っていた。
自分でも何を言えばいいのか分からない。
ニワトリは欲しかったし嬉しいんだけどね。宝箱から手に入るというのは予想の範囲外なんだよ。
「……帰ろっか?」
「はい……」
誾も、この展開は予想できなかったようだ。
僕は誾の生返事を聞くと、みんなに撤収するぞと宣言した。




