迷宮 フロア3①
信綱の不調は気になるけど、現段階では致命的じゃ無い。
意識の片隅にとどめておくとして、僕らは休憩を終えて先に進む事にした。
フロア2になると、白ゴブだけで無くスケルトンが雑魚として出てくる。
そいつらとの戦いでも信綱は安定していて、徐々にスケルトンへの苦手意識をなくしていくように見えた。
フロア2も何度か来ているので、だいたいの構造は分かる。道中の分岐でも迷う事無く進み、中ボス戦に挑む。
フロア2の中ボスは、人数オーバーで挑んだフロア1の中ボスよりも劣るスケルトンの群れだ。フロア1よりやや大きめの盾を装備しただけで、武器はボロボロの剣のままだし、他の防具を装備しているわけでも無い。能力的にも、体感だけどあんまり変わらないかな。
数はやや多いけど、僕は最後まで戦い続けられるレベルだし、最初は蔵人を前に出して信綱は温存しておけばいいかな。
敵の質が変わらなければ対処は同じ。数の利を殺すために通路で戦うだけだ。
引き込み、リーチを活かして壊すだけ。
ルーチンワークで問題なくいける。
結果はフロア1と何も変わらない。
疲れはしたけど無傷の勝利。
体力の問題があるからと、フルセットで戦わなかった信綱はまだ余力があるね。逆に戦い通しだった僕の方がきつい。汗ばみ、呼吸もやや乱れている。
時間を確認すると、夕方6時ぐらいだった。
昼の1時ぐらいから探索を始め、移動に4時間、うち途中休憩10分が2回で、最後の戦闘に事後処理を含め1時間。
ちょっと大雑把な計算になるけど、フロア2の総括はフロア1より広くなって面倒だったという程度かな。
普段であれば、そのままここで一泊して引き返す。
今回は先に進むので、ここで寝るのは変わらないけど、注意事項が一つ。
「みんな。今回はここでもう一泊するから、トイレは遠いところでするようにね」
普段であればリセットされるからとあまり離れていないところでされても気にしない事だけど、また後で来るなら気にしないと駄目だよね。
僕らはインスタントでレトルトな食事を終え、フロア3に向かう。
ちょっとぐらい覗いてみた事はあるけど、本格的に攻略するのは今回が初めてだ。
造りは上のフロアと変わらない。レンガで覆った通路がひたすら続いている。
ヘッドライトは100mぐらい先まで照らしてくれるけど、直線が続いているせいで先が見えない。首を左右に振れば脇道があるのが見えた。
「じゃあ、行動目標を確認しようか。
今回の探索は最大5時間で区切りを付けるよ。その間に中ボスが見つかる可能性は低い。まずは一回地図を作って、パターンを見切る下準備をするところから始める。
情報収集が第一目標だから、戦闘で無理はしない。何かあったらすぐに撤収するので、全員、そのつもりで」
僕らがここまで来れたのは、何度も挑んで情報をしっかり確保していたからだ。
その情報のおかげで迷宮で迷う事が無くなったし、中ボスも難なく倒せるようになった。
ただ、ここから先は未知の領域。何があるか分からない。
だったら僕らは生き残る事、情報を持ち帰る事だけを考えた方がいい。
下手に欲を出すと、絶対に失敗する。
なお、予定は3泊だけど、特に問題が無ければ2泊で撤収するつもりだ。
予定は何かあったときの保険だからね。余裕を作ってから行動する事にしているんだよ。
みんなは長い事僕のやり方と考え方に付き合ってくれているからすぐに話はまとまって、僕らは動き出した。
ただ、誾はふと思いついたように僕のそばに来て、小声で話す。
「長様。今日までこの迷宮でサーヴァントが増えるという事はありませんでした。
しかしながら、未知の領域では再びサーヴァントを得ることもあるでしょう。スケルトンのサーヴァントを、です。
信綱を見ますに……仲間に引き込むには、時期尚早かと思われますが?」
そうだねぇ。
今まで見付かってなかったから考えてもいなかったけど、そういう問題もあったね。




