信綱のリベンジ
情報制限のせいで、冒険者ギルドからも情報が引き出せていない事が分かった。
普通、ゲームでも何でもそうなんだけど、人は情報の共有と引き継ぎで効率化を図っている。
つまり運営は、その効率化を嫌っているという事なんだ。
何でもかんでも制限しているわけじゃ無いけど、「未知への一歩を進むための勇気が無い人はその先を見る価値無し」って言いたいんだろうね。
難しいね。
アタック67回目。
今回はこれまでよりも一歩先に進むため、3泊を予定して動く。
妊娠している義姫と交替するように信綱をパーティに入れ、1人と5匹で迷宮へと挑む。
何度か挑んでいると、迷宮の癖のようなものが分かってくる。
ランダムとはいえパターン化された構造を推測して先の階段を見つける事は不可能ではなく、頑張ればなんとかなる事だ。
その結果、今ではどの階層もほぼ最短ルートで進む事ができる。
「信綱、いける?」
「ダイジョウブ! オサ、オレ、タタカウ!」
単語でぶつ切りな信綱の喋りにもずいぶん慣れた。
信綱は単語を覚える事に必死で、助詞や助動詞が苦手だ。あと、文法も理解しているとは言いがたい。
でも、なんだよね。
信綱とこうやって日本語で会話できるというのは、わりと楽しい。
こうやって会話を重ねていけば、信綱も日本語が上達するだろうし。もう少し、みんなとの時間を増やすべきだろうね。
そうやって迷宮を進むと、最初の中ボスとの戦いになる。
信綱のトラウマ、スケルトンご一行だ。
「コンド、オレ、カツ!!」
信綱はスコップを手に、意気軒昂だ。
いや、弱気の虫を抑えるために、あえて強気な事を言って自分を奮い立たせているのかな?
今のところ、戦わせても問題はなさそうだ。足の方を見てみても、震えているといった事は無い。
とにかく相手を行動不能に追い込む。
僕と信綱は誘い出したスケルトンを通路でバラバラにしつつ、とにかく数を削る。
鎧と兜が無い分、スケルトンは脆く、関節のところで簡単にバラバラになる。
あの時とは、状況が全然違う。
僕も信綱も危なげなく戦い、全てのスケルトンを行動不能に追い込んだ。
そうやって戦いと言えるものが終わってから、床に落ちているスケルトンの頭蓋骨を壊して回る。
とても簡単な作業だった。
全部終わった頃には迷宮探索開始から3時間が経過しており、昼飯の時間になっていた。
トイレ休憩も含め、1時間の大休憩を取る事にする。
ここまでは予定通りであり、行動に遅延は無い。
僕が信綱を見ると、信綱はとても疲れた様子で、肩で息をしていた。
怖かったというか緊張していたというか、体に力が入りすぎていたんだろうなぁと思う。リラックスしていない状態で体を動かすと、無駄に疲れるからね。命がけの戦いなんだから気を抜きすぎるのは駄目だけど、緊張しすぎるのも良くないんだよ。
これ、本当に大丈夫かな?
僕は普段通りでは無い信綱の様子を気にとめつつ、持ってきた水を口にした。




