大集落の戦利品
農耕民族を目指している僕らだが、残念ながら、実態は狩猟民族のままだ。
しょうがないんだ。農作物は、簡単に育たない。
大きめの袋1つで500円もしない大豆を育てるのに必要な労力は、1時間や2時間の労働では全く足りない。換算したら10倍は欲しいと思う。
広大な土地を耕す大規模な農家になって、機械化で労力を減らしても怪しいんじゃないかな?
実際にやってみて思たけど、それを上手くいかせるための方法を、僕は知らない。
リアル農家は苦労の連続で、しかもそれが報われないって話をよく聞く。
仕入れ先の値下げ交渉や、天気などと言った自分たちではどうにもならない不幸や、害獣対策や。頭が下がる思いだね。
日本からの物資が制限されるのは、買って持ち込んだ方が早くて確実だから。
制限しないと難易度も何もあった物じゃないよね。
「長様! 戻ったであります!! って、臭っ!!」
僕がのんびり料理を作っていると、大集落にちょっかいをかけていた刀たちが戻ってきた。
で、リーダーをしていた喋れるゴブリンの弥九が顔を盛大にしかめた。
作っていたのは豚骨? 猪の骨を使った特濃ラーメンスープだ。薬味としてニンニクを大量にぶち込んでいるので、ショウガと柚子の皮という臭い消しを使っていてもとても臭い。
この臭いが駄目だというゴブリンは多く、実際に食べ出せば貪るように食べるというのに、スープの煮込みは嫌がる奴が多い。火の番をするのは暑いという事もあり本当に嫌がられる。サーヴァントのご主人様相手でも命令拒否をするほどに。
……なのに、食べ出すと臭いを気にしないんだよね。不思議でござる。
弥九たちには小麦粉とドングリ粉で麺を作らせ、僕はスープの味を調整。
僕の≪料理≫スキルさんが仕事をしてくれるのでなんとなくでも美味しい物ができあがる。
ついでにカレー味のラーメンスープを作りながら、弥九に尋ねる。
「大集落での戦利品は、どうだった? 服は手に入った?」
「もちろんであります。服は30着以上、槍は穂先のみを24ほど回収しております」
弥九は麺をこねつつ、胸を張って報告する。
弥九を始め、サーヴァントのゴブリンは体が大きいけど、その大きいという評価は、上に「ゴブリンにしては」と付くため、僕より軽い。麺をこねる手には確かに力が入っているが、体重が軽ければ結局はしっかりこねる事などできない。かといって踏んで麺コネをさせるのは絶対に嫌なので、時間をかけてこねさせるけど。
それよりも大集落での戦利品だ。
大集落では鉄の穂先に加え、青銅の穂先も見つかっている。鉄は鉄で使いやすい金属だけど、青銅は融点の関係で鉄より加工しやすい金属だ。これは練習用として非常に助かる。僕は思わず笑顔になった。
そして服が人数分よりも多く手に入ったのだから、これで毛皮生活から着衣生活にクラスチェンジできる。
これは今後も交換用や予備のため、大集落をいっぱい襲わないといけないね。
時間が経てば服の質も上がっていくだろうし、繊維に戻せれば素材にもなるし。
本当、大集落は僕らにとって都合のいい収穫場所だね。きっと運営が僕らのための物資補給所として設定したからこんなに便利なんだよ。
しばらくして麺が茹で上がると、飯の時間だ。
この日はラーメンパーティという事で大いに盛り上がった。チャーシューやメンマは材料があるけどまだ作ってない事をちょっと後悔したけど、それは今後の努力目標で。
今はただ、目の前にある物をいただきましょうかね。




