大きな変化もなく
信綱の戦線離脱は痛いけど、これで人数制限ぎりぎりに収まったので、信綱はホームに残って生産活動に従事するだけなんだと自分をだます。
そうでもしないと負の雰囲気が広まっちゃうからね。悪い空気は払拭するに限るんだよ。
僕らが迷宮攻略をしている間に、1ステージ目、ゴブリンの森で刀がEPを稼いでいるのをメニュー画面で確認。
大集落に挑む前だけど、この段階で700Pも稼いでいるので、刀たちの進歩が見えて嬉しいね。
なお、今日はまだ2日目の夜である。
だからもう2日かけて大集落の削りが終わるわけだ。
3日目の朝。
刀たちが戻ってくるまでに、僕らは僕らで出来る事をやる。
信綱は鍛冶ならまだ何とかなるみたいで、火の魔法を使いつつ、手に入れた武具を炉で熔かしている。
魔法の炎に炉が必要なのかって気もしたけど、イメージ強化なのかこの世界の炉が何らかのゲーム的能力を持つものなのか、とにかく炉の中に火の魔法を使うと鉄をも熔かす凄い火力を出せるみたい。
炭を使っても、そこまで温度が高くなることは無いんだけどね。
熔かした鉄をインゴットに戻して、また鉄の武器に加工するんだけど、手持ちの、持ち込んだ普通のハンマーでどうにかなるかな?
最初に作るのは武器よりも工具関係の方が良いかもね。
……いい物が簡単に作れるわけじゃないんだけどね。無謀でも挑戦していかないと、いつまでたっても駄目なまま変わらないんだよね。
蔵人たちは、久しぶりに糸を紡いでいる。
綿花も森の方で収穫している分がそれなりに溜ったので、それを糸にしているわけだ。
そう言えば、ステージ2は迷宮なので、麻とかそういった生産用の素材が手に入らないのが残念だね。
やっぱり大集落の連中が着ている物を地道に奪っていくしかないんだ。
略奪するのを地道な活動っていうのはいかにもゲーム的だけど、農業関連ではダンジョンモンスターにすら劣る僕ら狩猟民族にとっては、それこそ日常なんだよね。
ゲームでは当たり前にやっているモンスターの殺戮やアイテムの強奪って、実際に自分がやるとどう考えても悪行だよねぇ。
母ゴブリンたちは採取担当、子供の刀は訓練をしたり、まぁいろいろ。
風呂用の薪を用意したり、新しい家を今から建て始めていたりしている。あと、今ある家の改修とか。
事前準備や周囲の改善って大事だよね。
高い生活水準を維持しつつ、徐々にその水準を上げていくのが幸せなライフスタイルなのだと思う。
高い水準であっても、代わり映えせず同じ水準のままでは不幸になっていくよな感覚に襲われるらしいからね。
そのへん、ゴブリンの数が増えていくと、より顕著に表れてくるらしいよ。比べるものが身内しかないのって、閉塞感が強くなるとも言うし。
ちなみに。
ホームの村には、未だにトイレが無い。
僕の部屋にはあるんだけどね、ゴブリンたちはまだトイレを自作できないでいるんだよ。
僕以外が出すものを出すときは、基本的にダンジョン側で済ませるように指導している。
こっちにトイレを作ったとしても、下水が無いから結局は自分たちでどうにかするしかないからねぇ。
いざって時の穴は掘らせているけど、おが屑パワーでもその処理に限界があるから。
トイレ問題は何気に難しいんだよ。




