中ボス戦②
スケルトンの倒し方は二つ。
頭蓋骨の破壊と、左胸、心臓の位置にある『核石』の破壊だ。
頭蓋骨と聞いた時は、「頭部を破壊されたら失格なのかな?」って思ったけど、それはどうでもいい。
スケルトンがヘルムとブレストプレートを装備している理由も多分そういう事で、弱点の保護が目的なんだと思う。
逆に、注意点は『弱点を破壊するまで動き続ける事』だ。
例えばだけど、スコップで首から上を吹っ飛ばしたとするよね。
それで頭蓋骨が壊れていればいいんだけど、壊れてなければ首から下がそのまま動いて戦うわけなんだ。視界がなくなってくれれば適当に暴れまわるだけなんだけどね。床に顔が落ちてもこっちを見れれば普通に戦えるらしいよ。
他にも背骨と尾てい骨を切り離したとして、床に落ちた上半身だけで戦っていたって話もある。上半身だけで床に倒れたスケルトンから足を掴まれたりしたら、かなり怖いよね。
とにかく、スケルトン相手は必ず弱点破壊をする必要がある。
そんな訳で、僕らは代表者2匹を入り口すぐそばに待機させて、スコップを横に振り顔面ホームランを狙う。
敵の数が多い時は狭い場所で数の利を殺すのが基本。僕らが迷宮の通路でやられたことをやり返しておく。
入り口の幅は通路と同じ5mの広さがあり、2匹がスコップを振り回していればほぼ完全にカバーできる。念のための後詰も用意しておけば完璧だ。
入り口近くで戦えば、吹き飛ばした頭は部屋の中に飛んでいき、僕らを見失う事になる。そうすれば戦闘能力は著しく下がることになる。
あとはまともな戦闘ができなくなったスケルトンだけになってから順に潰していけばいい。もし僕らの方に頭が飛んできたならそのままとどめだ。
この戦法が、一番安全なはず。
前に立つ信綱と卜伝がスコップを振ると、スケルトンは盾や剣でそれを防ぐ。
だけど、横薙ぎに振るわれたスコップを止めるのには技術がいる。スケルトンの一番の欠点、体重の軽さがあだとなって全身を吹っ飛ばされたりもする。
そしてもう一つの欠点、ぶつかり合った時に骨が絡み合ってしまうという間抜けな一面が姿を現す。仲間のあばら骨に肘が嵌ってしまったスケルトンは顔面を強打され、後ろにいた僕らの方に頭蓋骨を吹き飛ばされる。
それを僕らはバールで殴り壊し、とどめを刺した。
ぶつかられたスケルトンも仲間の骨が絡んで上手く動けない所を同じように処理された。
順調な出だしだが、しかしすぐに対応されることになる。
スコップの横薙ぎはモーションが大きいため、一撃と一撃の間の隙も大きい。それをフォローする仲間が後ろにいるわけだけど、何度も同じことをやっていたからかスケルトンの方も僕らへの対処をし始めたのだ。
6体目のスケルトンをどうにかした信綱の攻撃、そこにタイミングを合わせてスケルトンの1体が突進を仕掛けた。
ちょうど信綱の体をブラインドにした突進は後ろに控えていた蔵人の攻撃を抑え、信綱に剣が突き立てられる。剣は信綱の腹を貫通し、致命傷を与えた。
信綱は最後の力を振り絞り、スケルトンの頭を脇に抱えると、それを捻って外し、僕らの方に投げた。
「蔵人! 前へ!!」
僕は大声で蔵人に命令すると、自身も前に出て信綱を回収する。
腹に刺さった剣の傷は致命傷だけど、信綱はまだ死んでいない。適切な処置をすれば死なずに済むはずだ。
「誾!!」
「『癒しをもたらせ』!!」
僕は≪回復魔法≫の使える誾に指示を出し信綱の治療をさせる。
誾も心得たもので、『単言詠唱』――ごく短い呪文詠唱による魔法の発動を行う。威力など魔力効率を考えると通常の、もっと長い呪文詠唱の方が強いんだけどね。戦闘中なら、応急処置ならこの方がいい。
誾の手のひらが光り、その光に照らされた信綱の傷が癒えていく。僕は癒えていく傷の邪魔にならないようにゆっくり剣を抜くと、何も言わなくても控えていた義姫が、渡しておいた回復薬で信綱のダメージを消していく。
≪回復魔法≫が無駄の様に見えるけど、いきなり剣を抜いてしまうと出血やショック症状で信綱が死ぬ恐れがあったんだよね。
剣によるダメージではなく剣を抜くことによるダメージ、それを緩和するためにも魔法は必要だったんだ。
……たぶんだけど。
ネットでそういう事例があったって聞いていたから、念のためにそうしたんだよ。
信綱の怪我をどうにかした僕らは、そのまま急いで戦闘に復帰する。
3匹で戦線をどうにかしていた蔵人らは、防御主体にすることでどうにか持ちこたえていた。そこに僕も加わり立て直しを図る。
やれやれ。今回も帰ったら反省が必要だね。




