迷宮探索
アタック63回目。
刀の30匹が分散して小集落3つを2日で殲滅し、その翌日から3日かけて大集落の間引きを行うように段取りを組んだ。報酬は大鍋で作るカレーライス(猪肉入り・野菜なし)だ。
催涙弾はダンジョン内ではフレンドリーファイアになる可能性が高いので使えないと判断し、1つを残して残りは全部、刀に預けた。これで遠距離火力は十分だと思う。
それとは別に、僕は信綱ら6匹を引き連れて『骨の迷宮』攻略へと向かう。
マッピングは練習するとして、明かりの方は3種類を追加で用意した。
ヘルメットの上に付けるタイプのヘッドライト。
周囲360°を照らすアウトドア用品のLEDランタン。
原始的だけど、木の棒に油をしみこませた布を巻いた松明。
当面は元から使っていた懐中電灯とこの3種類を使い、ダンジョンを歩くことになる。
「前回の地図は使えませんね、長様。構造が変わっています」
「不〇議なダンジョンタイプかぁ。これはまた、難易度高めだね。
でも、このタイプの迷宮は宝箱とかがたくさんあるって聞くからね。そこは期待していいかも」
「宝箱、ですか。それは楽しみですね」
ダンジョンを歩いてすぐ、僕らは何度も十字路や三差路に出くわし、頭を悩ませることになった。
前回はそれなりに歩いてから分岐があったことを考えると、前回と構造が違うのは間違いない。進行方向は磁石を使って確認しているので、勘違いという事は無いはずだ。
これ、絶対に初心者向けのダンジョンじゃない。上級者向けだよ。
ダンジョンの迷宮は、僕の今いる毎回構造の変わるタイプと、構造が変わらないタイプの2種類がある。
前者は難易度高めという事もあり、宝箱が良く見つかるという話。しかも構造が変わるたびに追加・補充される。
後者は難易度低めだけど宝箱は取ったらそのままで、復活や補充は無いという。
宝箱の中身は宝石などというハズレもあるけど、質のいい金属装備などが手に入ることもあるという。
現金的な意味で高収入という事は無いんだけど、ダンジョン攻略に使える装備が手に入るのは素直に嬉しい。
そう考えると、ダンジョンに向かう刀部隊を編成してもいいかなって思うんだけど、現在の人数ではちょっと手が足りないというか、オーバーワークだ。
子供部隊が採取をしていて戦闘部隊に回せないと考えると、もっと集落で回収できるサーヴァントの数を増やした方が良いかもしれない。
収入と仕事量を考えると、これ以上無理をさせるのは酷いと思うし、効率が悪い。
ネックになる生産基盤は大集落という、いい略奪場所を手に入れたわけだから、そこをうまく使えば安定させられる?
難しいかな?
手に入るかもしれないお宝に思いを馳せつつも、警戒だけは怠らない。
会話があるのは休憩中や主に2m近い竹の棒で床を叩いたりして足を止めているときだけである。そして出来るだけ小声で話して足音などを聞き逃さないように配慮している。
森の中もそうだけど、会話って周囲への警戒レベルを著しく下げるんだよね。漫画とかで見る、割と大きめの声でしゃべりながら歩いている連中って、本当にチートだと思う。僕らには歩きながらお喋りをして、なおかつ周囲の警戒を怠らないなんてできないんだからね。
スキルがあっても、そこまで万能じゃないんだよ。
「誾、義姫。地図の方はどう?」
「今のところ破綻はありません。義姫も同じです」
「そっか。多少見にくくなっているけど、間違いがないなら構わないよね」
「いずれ、見やすさと正確さを両立して見せます。いましばらくお時間をください」
「うん、いいよ。そこは焦らないで。他にも仕事を任せたいからさ、地図だけに無理をすることは無いからね?」
地図の方だけど、こちらは途中のまっすぐな通路を描かないことで対処することにした。
分岐だけを描き、分岐先をナンバリングして誤魔化すのだ。
ホームから最初に出てくる場所を0として、そこから先、最初の分岐を1とするなら、分岐は1A、1Bなどと、左から時計回りにアルファベットを振っている。
この地図の描き方の問題は、描いてある番号を結ぶのが難しいという事。読み解くのに時間がかかるんだ。
それに、繋がっている場所があったとしても気が付きにくいという事。途中が無いから、ループして合流しているのかどうかが分かりにくいんだ。
あとで清書をさせる気でいるけど、ちゃんとした地図になるかは不明。
パソコンで頑張るけどさ、難しいよね、マッピング。
こうして僕らは迷宮を歩く。
道中で2回ほど白ゴブのチームを倒し、先へと進む。
僕らは僕らで、迷宮内で一泊する予定である。
こっちでは拠点を作る意味がどこまであるか分からないのが難点だね。EP消費の固定はちゃんと機能するのかな?
一回試してみようかな。迷宮の入り口近くで。




