表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーヴァーランダー  作者: 猫の人
プロ・オーヴァーランダー
114/290

戦後処理

 いちまんぽいんと。

 EPの確認をした僕の頭が真っ白になった。



 アタック60回目。

 1万P。

 それがステージクリアの報酬だった。

 あまりの額の大きさに、現実逃避してしまったようだ。


 オーヴァーランダーを始める前、両親や弟妹の遺産その他で通帳の額が何度も浮き沈みしたけど、そのときは家族の死を受け止めるのにいっぱいいっぱいで、実感が全くなかった。

 で、冷静な今の僕が1万PものEP、日本円にすれば約1000万円相当のポイントを見てしまうとこうなるみたいだ。

 大学中退の21歳に、1000万円は刺激が強すぎです。



「長様?」

「ああ、なんでもない。なんでもないよ」


 僕の様子がおかしかったので、誾が僕の顔をのぞき込んできた。

 いけないね。みんなに心配をかけてしまったようだ。


 僕は咳払いをして集まったみんな、信綱たち6匹の幹部ゴブリンを見渡す。

 これからするのは大集落襲撃時の反省会であり、誾への沙汰を言い渡す場なんだ。みんな、顔に緊張を浮かべている。



「しかしあの時はそれが――」

「ですが、それは結果論――」


 それぞれの行動、そこで何があったかを説明してもらう。

 その上で評価を下し、最適解について検討をする。

 事後であればわかる問題点も、その時の当事者にしてみれば取り難い選択肢であったりもする。そこはちゃんと考慮し、堅実でそこそこの結果を出したことにちゃんと労いの言葉をかける。


 今回の問題点で一番の目玉は、やっぱり誾が殺されたときの『魔法』だ。

 あの時は何かよく分からない事をされたんだけど、僕以外、蔵人や卜伝といった後ろに控えていたみんなにはちゃんと分かったみたい。

 蔵人の目には、あの白ゴブが動物の霊を使役して僕にけしかけていたように写ったらしい。


 シャーマン系の魔法なのかな?

 司祭っぽい感じもしたので、多分そうだと思う。

 持っていた杖はしっかり見ていなかったし回収もしていないけど、きっと動物の骨がくっついていて、それが触媒になったに違いない。漫画でそんなのがあったし、ゲームっぽい設定のオーヴァーランダーならきっとそうだろうね。



 でも、まぁ。

 それでもあれは、なんとかできたと思うんだよね。

 僕を庇って誾が襲われた事、途中で拾ったホブゴブリンシールドが有効だったことを考慮すると、細かい誘導はできなかったみたいだし、高威力の弓の様な物でしかなかったように思う。

 つまり、遠距離攻撃に意識を向けていればどうにかなったはずなんだ。

 実際、僕は気がつけなかったけど、誾は僕を庇うことができる余裕があったわけだし。


 まだまだだね。





 結論としては僕が一番駄目だったって事になるんだけど、誾が納得しないので罰を用意してきた。

 納得してくれるかな?

 してもらわないと困るんだけどね。


「じゃあ、誾への罰だけど」

「はい」


 誾以外の他のみんなには事前に話を通しておいた。

 多分これでいいだろうって内容だ。


「僕への奉仕活動って事で、マッサージ係を今日から12日間ね」

「は!?」


 予想外だったのか、誾が驚きの声を上げた。

 僕としてはそこまで変なことを言っているつもりはないんだけど。


「その様なこと、罰などと言わず、許可がいただければいつでも行います!」

「誾、異論は認めないよ。

 そもそも、僕に対する罪悪感を持っているなら、僕の利になる事をして、その貢献をもって贖罪とするべきなんだ。

 誾がどんな罰を望んでいたかは知らないけど、“これは罰なので誾の意見は聞いてあげません。”

 大人しく従うように」

「は、い……」


 誾は僕が意見を変えないのを理解すると、がっくり項垂れて指示に従う姿勢を見せた。


 僕らの中にはまだ法律がなかったからねぇ。

 罪に対する罰なんて、僕の裁量でどこまでも変わるんだよね。

 今この場では、それをうまく使わせてもらいましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ