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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
プロ・オーヴァーランダー
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大集落攻略 前半戦

 陽動三回で敵の数を削ったとはいえ、重要施設の防備が完全に解かれるということは無い。

 むしろ、襲撃を警戒してある程度密集してくれる。


 だけど、敵の増援が来る可能性がぐっと下がる。

 目の前の敵だけで打ち止め。

 そう考えると、陽動の意味があるわけなんだよね。



 竹で作った大きめの盾を構え、敵の集落を走る。

 縄文時代なのか弥生時代なのか分からない大集落の建物の間を縫うように駆け抜ける。

 道中、目についたゴブリンを殲滅しながら先へと進む。


 目についたゴブリンを殺しておくのはこいつらが仲間を呼んで僕らを囲むのを防ぐためだ。

 戦うことができなくても仲間を呼ぶくらいならどんなゴブリンにもできるからね。

 安全第一なんだよ。



 敵とチマチマ戦いながらだけど、いいペースで僕らは進む。

 祭壇があったのは大集落の中央だったので20分かかったけど、途中で3回ほど戦ったにしては早かったんじゃないかな。


 祭壇の周囲は広場になっている。

 まるで盆踊りの櫓のような祭壇の周りには、ひしめき合うようにゴブリンが集まっていて、ドローンで確認したときは100匹ぐらいはいるんじゃないかなって思った。


 敵の数が多いのは脅威だけど、密集しているなら催涙弾の効果が高くなる。そこは運が良かったと思える部分だ。





 これまでのアタック中に観察して分かったことだけど、大ボスに相当するモンスターはこの大集落にいない。

 ホブゴブリンは何度も見かけたし、総数は10匹ぐらいいそうだけど、それでも更なる上位種はいないと断言していい。


 建物の陰から祭壇の方をうかがえば、100匹ではなく50匹ぐらいのゴブリンがたむろしていた。

 多分だけど、思ったより数が少ないのは、いなくなった連中はただいま消火作業中だからだと思う。

 火の回りが普段より早いのかな? なんにせよ、ラッキーだね。



「みんな! 一発目!」


 グダグダしていると、他からゴブリンが戻ってくるかもしれない。

 僕は大きく声を上げると、10mかそこらしか離れていない場所にいるゴブリンに向けて催涙弾を投げる。

 それに合わせ、誾たちも同じように催涙弾を投げた。


「「「グ、グギャァァ~~!!」」」


 思い思いの方向に飛んで行った催涙弾は、多くのゴブリンの目や鼻、喉を焼く。

 唐辛子成分(カプサイシン)が溶けた揮発性の油は確実に多くのゴブリンを行動不能に追い込み、残った、無事だった連中へプレッシャーをかける。


「当たりが出たからもう一回!!」


 僕は続けて撒き菱を大量にばら撒く。

 撒き菱の上でのたうち回っていたゴブリンは、その肌にどんどん穴をあけていく。

 毛皮を纏っている連中もいるけど、肌を全部隠すほど着込んだ奴はいない。顔に、腕に、腹に背に。どんどん傷を増やし、流血を強いる。

 その血の臭いもまた、敵へのプレッシャーを強めるのだ。



 ただ、そうやって敵に大打撃を与えたにも拘らず、逃亡するゴブリンがいない。

 よほど鍛えてあるのか、それとも祭壇という宗教建造物だけに信仰心からこの状況に耐えているのか。

 どちらにせよ、これで敵を壊走させるという目論見は上手くいかないようだった。



「続いて二投目!」


 とはいえ、僕らのやる事は変わらない。

 今回は大盤振る舞い、一人当たり5発の催涙弾を用意しているので、残った連中も密集しているなら遠距離攻撃でそのまま潰させてもらおう。

 近接戦闘は最後の手段。遠距離で決められる戦闘は全部遠距離で終わらせるのが安全だ。


 僕はまだ届く範囲にいる8~10匹の集団に向けて次の催涙弾を投げる。

 それを見た誾たちも、順番に、前の人とは違うゴブリンの集団を探してはそちらに向けて催涙弾を投げる。


 最初は敵がいっぱいいたからみんなで投げたけど、敵の数が少なくなってからは狙って、順番に交互に投げていく方が催涙弾を節約できる。

 もしも敵が100匹以上いて、一投目を終えてもまだまだたくさんいたなら二投目もみんなで投げたんだけどね。



 さすがに敵も馬鹿じゃない。

 何匹かは僕らの近くの家をうまく使い、安全に反対側へと回って挟撃を仕掛けてきた。

 敵の方が数が多いんだから、囲ってボコボコにするという基本戦術に従って僕らを襲う。


 ただ、基本に忠実なやり方は当たり前のように警戒するわけなんだ。僕らの後方にはやっぱり撒き菱を使って、今いる場所を簡易防衛陣地にしているんだよ。

 前に進めば終わるんだし、撤退・後退は考えていないんだ。

 後ろに回り込んだ連中はもれなく撒き菱の餌食になった。





 そうやって戦っていると、ホブゴブリンが僕ら目掛けて突進してきた。

 雑魚なゴブリンで僕らの消耗を狙っていたんだろう。ホブゴブリン10匹が一丸となって僕らを排除しようとする。


 ホブゴブリンは他の連中よりもいい靴を使っているので撒き菱の上を走っても平気、という事は無い。

 ただ単に痛みを無視して、とにかく僕らを打ち殺してやろうとしているのだ。


 撒き菱はこいつらにはちょっとした足止めの役にも立たないみたいだ。

 そして催涙弾を使えない距離まで接近を許してしまう。



 僕の大集落攻略は、後半戦に差し掛かろうとしていた。

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