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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
プロ・オーヴァーランダー
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決戦前夜

 僕の作った骨子をもとに計画をみんなで決めて、アタック2回で8回の訓練をして。

 うち2回は大集落を使って本当に敵がどう動くかのシミュレーションまで頑張ったよ。


 大集落の防衛部隊に、弓の使い手はいなかった。

 その代わり、何匹かのゴブリンが石を持ち歩いていた。弓は無いけど投石って考え方はあるみたいだね。そこそこ厄介だ。

 ただし投石に関しては僕らの方に一日の長があるみたい。同数同士の戦いでなら、飛距離その他で投げ負けることは無さそう。


 これで相手が学習したらどうしようかなって思ったけど、これまでの集落襲撃の結果を考えると、そこまで気にしなくても良さそうなんだよね。



 そんな訳で、準備は万全。覚悟も決めた。ついでにEPが貯まったから小屋の改装もした。

 だから僕らは大集落の攻略に挑む。





 アタック59回目。

 今回は小規模な集落の襲撃は行わず、大集落攻略にのみ力を入れることにしている。


 母ゴブリンと子供ゴブリンは居残りだ。

 生後2ヶ月の子供ゴブリンはもう体だけ見れば大人に近く、何気に生まれた時から日本語を聞かされていたおかげかスキル無しで日本語を操る。

 けど、体が出来上がってもスキルが全然ないので足手まとい。≪悪路走破≫や≪パルクール≫、刀の連中が最近覚えた≪森林歩行≫などのスキル持ちだけでなく、母ゴブリンとかスキル化してないけど森を移動するのに慣れた連中にすらかなわない。

 子供はまだ学ぶことばかりなんだよね。


 母と子に見送られ、残るメンバー全員で森を移動。作りかけの簡易拠点に向かう。 



 初日に寝泊まりする簡易拠点は、全員が雑魚寝することができる広さで作った。

 と言っても堀も土壁も浅いし低いし、外と内を決めただけって感じの作りかけだ。防衛拠点と呼べるほどでもない。

 飯は外で食べるし、寝るときは青々とした草の上にマント代わりの毛皮を敷いて寝ることになる。


 明日は決戦と言っても、寝ずの番などをしないわけにはいかない。僕は免除されているんだけど、なんとなく眠れなかったので最初に寝ずの番をするゴブリンと一緒に外を歩く。


 今日は雲が無く月明かりがまぶしいほどで、空を見上げれば一面の星空と真ん丸なお月さまが良く見える。

 それも眠れない理由なのかな? 森の中を歩くのに困らないから気にしないでおくけど。



「おかえりなさいませ、長様」


 周辺の巡回を終えると、僕はおとなしく寝床に戻る。

 夜も更けたし軽く動いたことで少し眠くなったので、今度こそと横になろうと思ったんだけど、誾が正座して僕を出迎えた。

 誾は幹部って事で、寝ずの番は免除されているんだけどねー。


「……外を出歩いたことで心配させたかな。ごめんね。

 一応、他のゴブリンと一緒にいたから危険はなかったよ」

「では、すぐにお休みになられますか?」

「うん。さすがに眠くなったからね。明日に響かないようにしなくちゃ」


 僕が出歩いたことに気が付いた誾は、追いかけるでもなくここで待っていた様子。

 心配をかけたことに頭を下げ、さっさと寝袋に体を押し込んだ。


「長様。お休みなさいませ」

「うん。お休み」



 あとで思い返せば、誾には何か予感があったのかもしれない。

 ただ、この時はそこまで気にする余裕が、僕には無かったんだと思う。


 そうして僕は決戦の日を迎えた。

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