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オーヴァーランダー  作者: 猫の人
プロ・オーヴァーランダー
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演習実践

 最初に作った拠点は、もう何度も行ったことがあるので新鮮味も何も無い。

 ご近所へのお出かけという印象が強い。


 ただ、新人連中にしてみれば初めてホームの外で寝泊まりするという事で、安全の担保の無さが緊張感へとつながっている。

 間違えたらと言うか何かあったら死ぬわけだし、適度な緊張感を持つのは良いと思うよ。

 でも緊張しすぎて実力が発揮できないのは駄目だからね?





 刀たちもダンジョンに何度も派遣している。

 採取や巡回など、敵ゴブリンを警戒しつつ森を歩くこと自体は慣れているはずなんだけどね。刀たちは一様に緊張し、動きが硬い。普段よりも荷物が多いとはいえ、これは無い。


「全員、進軍止め。休憩に入るよ」


 移動開始から30分。本来であれば、まだ休みなんて必要ない時間。

 それでも僕は足を止めるように指示を出す。

 普段であればハンドサインで指示を出すんだけど、今回は普通に声を出した。

 今の刀だと見逃しかねないからね、周囲にいるかもしれない敵への警戒よりも確実性を選んだよ。


「休憩って言ったんだけどね。反省会にするよ」


 僕は刀たちの顔を一通り見渡す。

 それだけで刀たちは僕が何を言いたいか理解したようだ。俯いたり怒られるかもと恐がったりと、自分たちの不味さを思い返している。


 なら、僕から強く言う必要はないかな?


「緊張しすぎ。そんなんじゃすぐに疲れるよ。深呼吸、しよっか。

 はい、大きく息を吸ってー、吐いてー」

「グー、ギュー」

「じゃあ右手挙げて、左手挙げて、左手下げて、右手下げない」

「ギュ!?」

「ちゃんと動けー」


 緊張って、するなって言ってもどうにもならないからね。

 深呼吸と、いきなりの命令で固くなった頭をほぐす。


 昔、学校の部活で、先輩たちにやられた手だ。

 一つの事に囚われた頭を別の方向に向けて強制的にリセットする技、らしい。


 僕の突然の指示に対応できた奴、出来ない奴。

 反射的に指示に従った奴もいれば、何をすればいいのかとキョロキョロ周りの仲間を見る奴もいて、なかなか楽しい。

 最終的には全員で僕の指示に揃って動き、いい感じに緊張を解いていた。



 そのあとは何事も無く拠点にまでたどり着いた。

 問題は無かったけど、兎はいたのでついでに狩っておいた。今日の晩御飯に一品追加された瞬間だった。





 最初の拠点では、特に難しい事をしない。

 何に出会う事も無い周辺警戒と昼飯・晩飯の準備や綿花などいくつかの採取を行う。


 このあたり、いつもやっている事と同じだから誰も困らない。

 ご飯のメニューが普段と違うけど、それぐらいは問題ないんだよね。メインの準備は僕の仕事だし。


 あ、メニューは僕らと刀で違うよ。そういった待遇の差ははっきりさせないといけないからね。



 そうやっていろいろやって、夜になった。

 僕以外は寝ずの番がある。念のための夜警は必須なのだ。


 僕は寝ずの番をしないよ。

 ゴブリンはみんな≪夜目≫スキルがあるけど、僕には無いからね。足手まといなのさ。

 けして、やりたくない訳じゃないんだよ。


 その代わり、寝ずの番は仕事前に眠気覚ましに缶コーヒーが支給される。

 その程度のご褒美はあるんだよ。

 ちなみに、一番コーヒーが好きなのは義輝だ。こいつだけいつもブラックを飲んでいる。


 ……あ。ブラックコーヒーは苦手なゴブリンもいるからちょっと甘めの奴で統一しているけどね、それでもダメな子がいた様だよ。

 ご褒美じゃなくて追加の罰ゲームになっちゃったね。反省。

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