雷門の力
「雷門さん!」
不良たちがどよめく。
これがランキング八位。
とげとげの肩パッド、爆発に巻き込まれたようなアフロ。
世紀末に出てきそうな格好だが、顔つきだけは整っている。
「へへ、でも、俺ぁよぉ。弱いやつには興味がねぇのよ」
「では、強さをみせつければいいと?」
「ああ、俺みてぇな強さがあれば相手にしてやるよ。おい」
雷門が近くの不良に顎で指示を出した。
すると、不良が慌ててゲームセンターの奥に走っていった。
しばらくすると、不良が拳ほどの氷を持ってきた。
「へへ、いいねぇ」
雷門は氷を受け取り、そのまま口に入れた。
「出るぞ! 雷門さんのあれが!」
「おらぁ!」
雷門が一気に氷を噛み砕いた。
「すげー! あの氷を一撃で!」
「やっぱ雷門さんはやべぇぜ」
不良たちの賞賛を浴びて雷門がにやりと笑った。
それ戦いになんか関係あるのか?
反応が薄いわたくしを見て雷門が眉をひそめる。
「……これだけじゃねぇぜ。おい!」
雷門に急かされて不良が再び姿を消す。
再び戻ってきたその手にはカキ氷があった。
先ほどよりも大きい。
「嘘だろ! 雷門さん!」
「まさか、更にあれをするのか!」
不良たちが再び騒ぎ出した。
雷門はカキ氷を受け取ると。
「おらぁ!」
一気に口に含んだ。
まるでハムスターのように頬袋が膨らんでいる。
そのままガリガリと噛み砕いた。
一秒もたたずに飲みこむ。
「へ、どうだ」
ドヤ顔でわたくしを睨みつけた。
「さすが雷門さん!」
さっきも思ったが。
だから、なんだというんだ。
「へへ、お前にこれができるかよ!」
「その氷、貸してください」
「あ、ああ、いいぜ!」
不良たちから拳大の氷を受け取る。
わたくしはそれを手刀で二つに叩き割った。
「これでいかがでしょうか?」
「そうきたかよ。どうやら、言ってもわからねぇようだなぁ」
雷門と改めて向き合う。
近くで見ると体つきは素人のものとは思えないほど鍛えられている。
さすがはランキング八位だ。
「行くぜぇ」
雷門が拳を振り上げて――。
「おらぁ!」
振り下ろした。
無造作な一撃。
だが、速度が尋常じゃない。
わたくしは身をひねってかろうじてかわした。
雷門の拳はわたくしの後ろにあったゲーム台の椅子に直撃して大きくひしゃげた。
背もたれもない簡素な椅子だが、それでも金属製だ。素手でどうにかなるようなものではない。
「どうしたよ。ビビったのか! おい!」
雷門が中指を立てて挑発する。
なるほど。技よりも力で押すタイプか。
それならば――。
「まさか」
わたくしは近くにあった椅子に手を当てる。
「相性が良くて安心しました」
力を込めると椅子が同じようにひしゃげていく。
もう一人のわたくしなら女の子らしくないという理由で力を誇示するような戦いは好まない。
でも、わたくしは別だ。
使えるものは何でも使う。
「女にしてはまぁまぁ力があるじゃねぇか。へへ、いいねぇ」
雷門が楽しそうに笑う。
まるで野生のトラが獲物を獲物を狩るときに見せるような笑みだ。
わたくしも同じような笑みが浮かんだ。
こういう強い相手との凌ぎ合いこそがわたくしが望んだものだ。
一触即発の空気に場の全員が凍りついた。
「来なさい」
わたくしが半身になって拳を目線にあせた。
ボクシングのような構え。
対して雷門はなぜか後ろに下がった。
ここで距離を取る?
わたくしと彼の間にはゲームセンターの椅子という障害物が生まれるだけで特に意味はないはずだ。
そこに一瞬の油断が生まれた。
「行くぜぇ!」
雷門がショルダータックルを仕掛けてくる。
ダンプカーのようにゲームセンターの椅子をなぎ払いながら。
「――な!?」
まずい!
「死ねやぁ!」
さけられない!
せめて、一撃だけでも――。
直撃する瞬間――。




