改造計画
三日後。
いつもオレとたんぽぽが会う場所は学校の調理室だ。
どうやらたんぽぽが先生を言いくるめたようでいつでも好きに使えるらしい。
放課後にそこで女の子らしさの講習を受けに行くのが最近の日課だ。
講習といっても大したものではなく、具体的には初歩的なお菓子作りや裁縫等だ。
正直、全然駄目だ。
お菓子は薬物検査でひっかるものに成り果てた。
裁縫は原始人が着るよりも酷いものになった。
正直、進歩は見られない。
でも、こいつを信じて――。
「無理ね」
開口一番で言い放った。
「諦めるの早いだろ!」
「しょうがないわ。今日で約束の三日目なのに全く女の子らしくならないのだから。一日考えて見たけど正攻法は無理ね」
「オレはなんのために今日まで特訓を受けてきたんだよ!」
「正直、猿に芸を覚えさせるほうが楽ね」
自分でも失敗ばかりだという自覚があるため言い返せない。
「くそ! やっぱりオレには無理だったのかよ」
がっくりと項垂れる。
落ち込むことが少ない俺でもここまで言われたら気にしてしまう。
「面白……じゃなくて妹の幸せを願いたいけどさすがに困ったわね」
「いっそ別人にでもなれればよぉ」
オレの言葉にたんぽぽが拍手を打つ。
「それいいわね」
「なにがだ?」
「別人になりましょう」
なに言ってんだ、こいつ。
「いやいや! どうやってだよ!」
「我ながらナイスアイディアね。この子は単純そうだからあの薬を使って今日と祝日を利用すれば……」
目を輝かせてぶつぶつと呟く。
聞けよ。
「洗脳って拷問と似たようなものよね。だとすればなんとかなるかも」
やばいこと言ってる。
やがて、たんぽぽが顔を上げて俺を見た。
「ねぇ、催眠術って知ってる?」
なんか変なこと言い出したな。
「催眠術って……五円玉を目の前で揺らすやつか?」
「一般的な回答はそんなものかもね。私がしってるもおのは単純な作業を繰り返させることによって判断力を鈍らせて相手を思ったとおりに操るというものよ」
「完全に駄目なやつだろ! それ!」
「安心しなさい。別に変なことはさせないわ。ちょっと人格を変えるだけよ」
「どう安心しろっていうんだ! おい!」
「そう不安そうにしないの。彼を振り向かせたいんでしょ?」
「う、ぐ」
それ言われたら何も言えない。
「あなたもわかってるでしょ? 現状のままだと駄目だって。これくらいしないと効果ないわよ」
「……わかったよ」
「ふふ、任せなさい。ドン・ロドリゲスの名にかけて誓うわ」
「誰だ! そいつ!」
「私のおじいちゃんが好きなヴァーチャル・ユーチューバーよ」
「もっとマシな名前を賭けてくれ!」
何も信用できない。
「いいから、お姉ちゃんに全て任せなさい」
めちゃくちゃ不安だ。