変化
「そ、そんな」
だとしたら消され――。
「でも、その男との絡みは面白いわ」
えええぇ……。
わたくし的には不本意極まりない。
「だから、デートなどと言い出したのですね」
「ええ、お陰でますます面白くなりそうだわ」
なんて勝手な。
こんな男とデートだなんて虫唾が奔る。
かといって、わたくしには断ることができる立場ではない。
一体、どうすれば――。
頭がオーバーヒートするくらい必死に考えを巡らす。
このままだとあんな男とデ、デートすることに。
どうせデートするならもっと強い人とデートしたい。
たとえば、お姉さまみたいな人と――。
想像するだけで頬が熱くなってきた。
すると――。
「う、あ」
な、なに?
頭が痛い。
突然の頭痛にわたくしは思わず膝をついた。
「どうかしたの?」
お姉さまが心配そうに顔を覗き込む。
大丈夫です。
そう言おうとしたが、上手く唇が動かない。
まずい。
意識が遠くなっていく。
地面に倒れこんだ。
お姉さまが何かを言っているが、もう聞き取ることは出来ない。
こんな……こんなはずではなかったのに。
わたくしはあの人にはできないことを……。
そして、わたくしの意識は完全に途切れた。
頭が、痛い。
「ん、んんぅ」
目が覚めたら見知らぬ天井……というか、どこかわからない。
お、オレどうなったんだ?
「目が覚めた?」
目の前にはたんぽぽがいた。
「な、なにがどうなってるんだ?」
「やっぱり覚えてないの?」
「なんのことだよ?」
「なるほど。ふふ」
たんぽぽは真面目な顔をしているが、隠し切れないように含み笑いしていた。
「オレにもわかるように説明してくれよ」
「一応、聞くけどあなたが覚えているのはどこまで?」
どこまでだっけ。
オレは額に手を当てて考え込む。
「ええと、確か別人を作るとか言っててそこから――くそ、いってぇ」
思い出そうとすると頭痛が走る。
「おそらく自己防衛ね。あまり深く思い出さなくてもいいわ」
「一体、何が――」
そのとき、目の前に誰かが倒れていることに気づいた。
あ、あいつは――。
「義則!?」
慌てて駆け寄る。
よかった。気を失っているだけみたいだ。
「お前! あいつに何したんだよ!」
怒りに任せてたんぽぽに詰め寄った。
しかし、たんぽぽは涼しい顔のままだ。
「あなたとこの男のデート話に邪魔だったから気絶させただけよ」
「ふざけんな! そんな理由で――」
ん?
「オレと義則が!? デ、デート!? ど、どういうことだよ!」
「簡単に言うと、あなたの幼馴染……義則だっけ? 彼とデートできるわ」
一瞬、完全に動きが止まった。
やがて、徐々に言葉の意味が脳に浸透していった。
「……はぁぁぁ!?」
「でも、条件があって、あなたはもう一人のあなたに変装しないといけないの」
意味が全くわからない。
「面白いでしょ?」
たんぽぽはにこにこと笑っている。
そのとき、ドアが開いた。