人類が滅んだ理由
二XXX年、人類は滅びた。天変地異が起きたわけでも核戦争が勃発したわけでもない。真綿で首を絞めるかのように徐々にその数を減らしていった。
そのきっかけは学校から始まった。後に「いじめ時代」と呼ばれることになる出来事によって人類は滅亡することになる。
二〇XX年、全国各地の学校で壮絶ないじめが起きた。被害者たちは心に大きな傷を受け、他人に対して心を開くことができなくなった。たくさんの被害者たちが自ら死を選んだ。
誰に優しくされても、その裏ではあざ笑っているのではないか、信用させた後で裏切るつもりではないか、疑心暗鬼を抱く彼らいじめ被害者に待ち受けていたのは孤独な日々だった。自分以外、誰も信用できない日々、そんな彼らが生涯独身を貫いたのは言うまでもない。
いじめは減ることなく、まるで風物詩のごとく毎年発生した。その結果、年々未婚率が増加し、それに伴い出生率が減ったのだ。
事態を重く見た各国の政府はいじめ撲滅運動を開始したが、効果はなかった。誰も法則には抗えない。数が減ろうが、誰もいじめの荒波から逃れることはできなかった。人類を縛り付けていたのは「働きアリの法則」だった。
働きアリはすべてが働いているわけではない。百パーセントの内、二十パーセントは必ずサボる。後の八十パーセントは働いている。だが優秀な能力を発揮しているのは八十パーセントの内の二十パーセントだけであり、後の六十パーセントは凡人並みの働きしか見せない。これは働きアリの世界だけでなく、あらゆる生物の世界に適応される法則である。人間も例外ではない。
いくらいじめっこを取り除いたところで、残った集団から新たないじめっこが生まれるだけに過ぎない。世界から徐々に人間が減ろうとも比率は変わらない。愚かなことに人類は百人を切ってもいじめを止めなかった。最後の一人が死ぬまでずっと続いていた。
いじめっこが殺すのは一人の人間の未来だけではない。未来に生まれるはずだった人間をも殺している。生まれるはずだった命、失われるはずのなかった命。いじめっこたちは気づかない。自分たちの手で未来を奪っていたことを。彼らは死ぬまで気づかなかった。
――人類はこうして滅びた。