ミニUFOを追いかける
「え?」
「なーに立ち止まってんの?」
前を歩いていたコガネが振り向く。後ろを歩いていたクロカは足を止め、じっと空を見ている。
「ほんとどうしたの?」
いぶかしげに眉を寄せたコガネがクロカの視線を追う。
「は?」
コガネは目をぱちくりさせる。
「何あれ?」
頭上数メートルの地点に円盤が浮かんでいた。円盤はゆらゆらと揺れ、うろうろと飛び回っている。
「さぁ……もしかしてUFOかな」
クロカはごくりとつばを飲み込んだ。手のひらがじんわりと汗ばんでいる。
「初めて見たかも」
コガネは目を輝かせ、携帯のカメラを円盤に向けた。パシャリと一枚、二枚、三枚と撮り続ける。
「あ」
円盤が静かに移動を始めた。
「追いかけよ」
コガネはクロカの手を引き、円盤の後を追う。
「ちょ、ちょっと学校はどうするの?」
「んーサボっちゃえ」
あっけらかんと言い放つコガネ。クロカは苦笑しながらも後を追った。
「どこ向かってんだろうね」
「秘密基地とかかな」
二人はひそひそ声で話をしながら円盤を追いかける。円盤はあっちへこっちへとふらふらしながら移動していた。
「なんかぶつかりそうじゃない?」
コガネがぼそっと呟く。円盤は電信柱付近を飛んでおり、電線に停まる鳥にぶつかってもおかしくないくらいの危なっかしい動きをしていた。
「もっと高いところ飛べばいいのにね」
「小さいし、あれぐらいが限界なのかも」
円盤のサイズは人の頭より少し小さいくらいのサイズだった。
「ミニUFOだったら期待できないかも」
「期待って?」
「宇宙人」
コガネは残念と言わんばかりに肩を落とす。
「あー、でも小人サイズの宇宙人かもしれないよ」
「おー! ありえるかも」
クロカの慰めに、コガネのテンションが上がる。
「くー、小人宇宙人を写真におさめたい」
コガネは自身の手で肩を抱き、身をくねらせる。
「小人宇宙人がいるって決まったわけじゃないんだけど」
クロカはあきれ顔を浮かべた。
「いるって思ったほうが面白いじゃん」
コガネはニカッと笑う。
「あ、見て。着陸しそう」
クロカが小さく叫ぶ。円盤は二人の視線の先にある公園に降りようとしていた。
「――兄ちゃんすっげえ。UFO使いじゃん」
「がはは。兄ちゃんが作ったからな」
円盤は一人の男の手に降り立った。周りには子供たちが集まっており、円盤に目を輝かせている。
「作った?」
男の言葉に、コガネとクロカははてと首をかしげる。
「ん? なんじゃおぬしらは?」
二人の存在に気付いた男が声をかける。
「えっとたまたまそれを見かけて、気になって追いかけてきたらここに」
クロカは円盤を指差した。
「おー、ワシのオリフォに興味を抱いたか」
「オリフォ?」
聞き馴染みのない単語に、コガネとクロカは目を見合わせた。
「オリジナルUFOの略じゃ」
男は手に持った円盤を掲げる。
「こいつはワシが作ったUFOでな。資金はないからサイズは小さいがな。なかなかよくできてるだろ」
「兄ちゃんはすっげえんだぜ。UFOを自由に操れるんだ」
子供たちが満面の笑みを見せる。
「……要は作りもんじゃん」
コガネはがっくしと肩を落とす。
「でもワクワクしたでしょ。本当にUFOだと思ったし、そう見えるものを作れるってすごいよ」
クロカは頬を上気させ、にこっと笑う。
「言われてみればそうかも」
コガネは男が持つ円盤をじっと見る。
「他にもあったりする?」
「あぁ。たくさんな」
コガネとクロカは手を握り合い、ぴょんと飛び跳ねる。
「見たい」
男はニカッと口角を上げる。
「ワシはいつもこの公園でオリフォを見せとる。他のも見たいなら明日また来るといい」
「うん、そうする。じゃ、また明日」
「おう。楽しみに待っとる」
「姉ちゃんたち、またねー」
男はふむと腕を組み、子供たちは元気いっぱいに手を振った。
「またねー」
コガネはぶんぶんと手を振る。その横でクロカも手を振った。
「楽しみだね明日」
二人は軽い足取りで公園を後にした。
『地球人はおろかだな。あんな目立つ乗り物、乗るわけがない』
『UFOなんてしょせん地球人が考えた設定だ。我々の目的は偵察。目立つのは好まない』
電線から鳥の形をした宇宙船が飛び立つ。船内には二体の小人宇宙人がいた。




