こくはく
狂った友情と愛情の物語
会場の一室からぞろぞろと人々が顔を覗かせていた。年齢や性別はバラバラで、皆一様に静けさを漂わせている。その集団の中に、人の流れに逆らうように歩く、一際異彩を放つ少女が一人いた。
少女の名は黒葉玲子。彼女は漆黒のドレスに身を包み、まるでフランス人形のようなおぞましいまでの美しさを兼ね備えていた。少女というにはあまりに色っぽく、大人というにはあまりに幼い。その少女とも大人ともつかない雰囲気が、彼女に影を落としている。
玲子が歩くと人の波が割れた。迷いなく突き進んでいながら、足取りは重い。目指す先には一人の少年がいる。
「真白君、君が殺したんでしょう?」
彼の前に立った玲子は、誰もいなくなった部屋でポツリと呟く。真白と呼ばれた少年は、その名に違わず全身を白で覆っていた。
「私は知っているのよ。君がアカリをどう思っていたのか」
玲子は目を伏せ、胸元をぎゅっと掴んだ。何かに耐えるように、何かを堪えるように。襲い来る衝動に身を任せ、じっと佇んでいた。
「君はアカリを愛していた。だから赤石君を殺したんでしょう? 違う?」
玲子の問いかけに真白は答えない。無言のまま、彼女を見上げていた。
「あの子、泣いてたわ。当然よね。彼氏が死んだんだから。君のせいであの子は不幸になった。私は許せない。君を。君を人の道から踏み外させたあの子も。でも何よりも許せないのは……分かっていながら何もできなかった私自身よ」
玲子は自嘲めいた笑みを浮かべる。屋根を打つ雨の音が彼女の心情を表しているかのようだった。
「いつからだろうな。俺たち四人の仲がぎこちなくなったのは。子供の頃は問題なかったのに。どうして恋や愛を知ってしまったんだろうか。俺が桃田を、桃田を赤石が好きになった頃からすべては変わってしまった。分かっていたんだ。奴と両思いだってことは。俺の横恋慕だってことは。俺自身が一番良く分かっていた。それでも俺は奴が許せなかった。桃田の愛情を一身に受ける奴がどうしても許せなかった。……お前の言うとおりだよ。赤石を殺したのは俺だ」
頭を抱え、目を血走らせ、唇を噛み締め、真白は自らの罪を告白した。足は震え、立っているのもやっとといった有様。――だから気づかない。自らの犯した罪に押しつぶされ、周囲を見る余裕もなかった真白には避けることは不可能だった。
「許さない、許さない、許さない、ゆ・る・さ・な・い!」
骨が潰れる音がした。ぐしゃりと脳みそが飛び散る。何度も何度も振り下ろされる大きな石。
音が聞こえなくなった頃には真白は動かなくなっていた。
「あ、あ、あ、あ……ああああああ!」
少女の慟哭。罪の意識によるものか、あるいは憎しみか、それを知る者はいない。
会場を後にした玲子は、漆黒のドレスが濡れるのを気にせず歩いていた。玲子は知っている。彼女の罪を。
たどり着いた場所は――墓地だった。
「やっぱりここにいたのね」
玲子の声に、一人の少女が振り向いた。髪はボロボロで、肌も荒れている。痩せこけた頬には若々しさの欠片もない。
「玲子……ごめんね」
「いいのよ。アカリ。悪いのは真白君だから」
アカリと呼ばれた少女は泣き笑いのような顔を見せた。
「私ね。赤石君のことが大好きなの。付き合えて本当に幸せだったの」
玲子はアカリの言葉に黙って頷き、ぽんぽんと頭を撫でる。
「でもね。真白君のことも好きだった。大切な友達だったから」
「……分かってるわ。ずっと一緒にいたから」
「うぅ」
少女は泣き続けた。死んだ恋人を思い、大切な友を思い、声が枯れるまで、涙が枯れ果てるまで、アカリは泣き続けた。
「落ち着いた?」
玲子は優しく問いかける。
「うん、少しは」
アカリは墓の前に腰を下ろし、手の甲で涙を拭った。
「これって赤石君の墓?」
「うん、最後に墓参りしておきたかったから」
「最後って?」
「玲子、分かってるでしょ」
アカリはナイフを取り出し、玲子に差し出した。玲子は黙って受け取る。最初からそのつもりだったかのように。
「どうしてこんなことになったのかな私たち」
「分からないわよ、そんなの」
「そうだよね」
玲子とアカリは額をくっつけ、少しの時間押し黙った。雨はまだ止まない。
「先に行ってるね、玲子」
「後で必ず行くから、アカリ」
二人は名残惜しむようにぎゅっと抱きしめあった。玲子が持つナイフが、アカリの心臓に突き刺さる。吹き出る血が漆黒のドレスを汚す。アカリは赤石の墓に向かって倒れた。
「あの世では二人仲良くね」
玲子は血に濡れたナイフを天に掲げ、勢い良く振り下ろした。鮮血が舞う。凄惨な死だった。それでも玲子は笑っていた。満足したかのように。
アカリは微笑んでいた。赤石の側で。
雨は――止んだ。
「オレを地獄に堕としてください」
少年は地獄の主――閻魔大王――に向かって頭を下げた。閻魔大王は厳しい目つきで少年を睨む。
「なぜだ? 貴様は天国行きだったはずだ。なにゆえ地獄に堕ちたいと申す」
「友達が待ってるんです。オレの大事な人たちが地獄で待ってるんだ。だからオレは地獄に行かないといけないんだ」
少年の叫びに、閻魔大王は眉を顰める。
「貴様が言う友は殺人者であろう。しかも貴様を殺した男と、恋人を殺した女だぞ。それでも会いたいと申すのか?」
閻魔大王の言葉に、少年は表情を変えた。唇を噛み、眉を顰める姿は今にも泣きそうだ。
「恨みがないとは言いません。憎んでないとは言えません。それでも……真白はオレの親友で、黒葉は大切な幼馴染だ。オレたちの絆はそう簡単に壊れはしない。まだ壊れていない。オレたちは元通りになれる! 会わなきゃいけないんだ。伝えなきゃいけないんだ。オレの思いを。じゃないとあいつらが浮かばれない」
閻魔大王はため息をつき、少年の後ろに広がる暗闇に声をかけた。
「わしの役目は終わりだ。後は貴様たちの問題だ。好きにするがいい」
「えっ?」
少年には閻魔大王の言っている意味が分からなかった。いくつもの足音が響き渡る。
「赤石君」
少年――赤石の背に一人の少女が抱きついた。振り向いた赤石の目に映ったのは「アカリ……?」少年の恋人だった。
「どうしてここにアカリが?」
赤石に抱きついたまま、アカリは答える。
「閻魔大王様の計らいだよ。地獄に堕ちた私たちを連れてきてくれたんだ」
赤石はアカリの言葉を受け、閻魔大王に目を向ける。閻魔大王は赤石の視線から目を逸らし、頭をポリポリとかいた。地獄の主に似つかわしくないしぐさに、赤石とアカリは目を見合わせて笑った。
「良かった。アカリに出会えて」
「うん。私も赤石君に出会えて嬉しい」
久しぶりの逢瀬に二人は人目を憚らず、強く強く抱きしめあった。
「わしはもう行くぞ。貴様たちの居場所は用意してある。後ろの門を通れば数分でたどり着く」
閻魔大王は二人から目を逸らし、早口で用件を伝え、そそくさと姿を消した。
「もしかして気を使わせちゃったかな?」
「そうかもな」
二人は申し訳なさそうに肩をすくめる。
「――アカリ。私の存在忘れてない?」
「あっ」
地獄に漂う闇よりも、暗く深い衣をまとった少女は冷たい目で二人を見ていた。
「黒葉」
「赤石君、アカリを刺したの謝るわ。ごめんね」
玲子の言葉に赤石よりも早くアカリが反応した。
「何言ってるの玲子。あれは同意の上でしたことでしょ。謝る必要なんてないよ」
頬を膨らませ、地団駄を踏むアカリ。赤石と玲子はアカリのあまりの子供っぽさに笑わずにはいられなかった。
「――お前らに罪なんて一つもない」
地獄の底から響いたような、あるいは闇から生まれたような、それほどの暗さを伴って響き渡る声に赤石たちは表情を一変させる。
「真白」
暗闇から現れたのは、純白からは程遠い白の衣をまとった少年――真白だった。その目は何よりも暗く、地獄に住む者に相応しい様相を示していた。
「俺が壊したんだ。何もかも。俺が赤石を殺したから。桃田も黒葉も死ぬことになった。俺がみんなを殺したんだ。俺以外に悪はいない。地獄に堕ちるべきは俺一人で十分だ。……なぁ、赤石、お前が閻魔大王に言うべきは『オレを地獄に堕としてください』じゃない。『桃田と黒葉を天国に連れてきて欲しい』と主張すべきだった」
真白から放たれるオーラは禍々しく、閻魔大王にすら匹敵するほどの重圧感。誰も何も言えなかった。
「聞こえてるんだろ? 閻魔大王。この三人を天国へ導いてくれ。桃田と黒葉に罪はないんだ。頼む。せめてこいつらには幸せな時間を」
「それを決めるのはわしではない。こやつらだ」
まるでずっといたかのように閻魔大王は姿を現した。
「貴様らは友なのであろう?」
閻魔大王の言葉に、赤石はニヤリと笑った。
「あぁ、オレたちは友だ。地獄の果てまでついていってやるさ」
アカリはふっと息を吐き、真白を見つめた。
「真白君。殺してごめんなさい。私、冷静じゃなかった。真白君も大切な存在なのに。自分で壊しちゃった。ごめんね。許してくれる」
真白は顔を歪める。苦しそうに辛そうに叫んだ。
「何を言ってる。許すも何も! 悪いのは俺だろうが! 謝られる理由なんてない。俺にそんな資格なんかない!」
真白の慟哭を上回るかのようにアカリは叫ぶ。
「うるさい! 四の五の言うな! 友達じゃないか! 私たちは友達じゃないか! ……謝る理由も許す資格もあるよ」
はっとしたように真白は目を見開いた。目をキョロキョロとさせ、ぶつぶつと唸っている。真白は覚悟を決めたかのような表情をし、アカリではなく赤石に視線を合わせた。
「赤石、殺してごめん。許してくれなんて言わない。でも謝るくらいはさせてくれ」
真白は地面に両手をついて土下座した。禍々しい雰囲気は消えている。覚悟を決めた少年、否、男にはこれまでにない力強さがあった。
「真白、頭を上げてくれ。許すに決まっているだろ。ムカつきはしたけど、オレたち親友だろ。謝ってくれたんだ。殺しはチャラにしてやる」
「赤石、恩に着る」
頭を上げた真白は、アカリに顔を向けた。
「桃田、赤石を殺して悪かった。俺を殺したことはそもそも気にしてない。全部俺が悪いんだ。殺されても仕方ない」
「ううん、仕方なくなんかない。真白君を殺したのは私の罪。私のせいだよ。謝るくらいはさせてよ。許してくれる?」
不安げな顔を浮かべるアカリに、真白は力強く頷いた。
「許すに決まっているだろ。お前は俺の好きな人なんだから」
アカリはほんのりと頬を赤く染め「うん、ありがとう」と言った。
「閻魔大王様、オレとアカリは真白と共に地獄に堕ちます」
「それで良いのだな?」
「はい」
赤石の言葉に閻魔大王は深く頷いた。そして「本当は全員を天国に導ければ良かったのだろうが、殺人を犯したことには変わりはない。わしの力ではどうしようもできぬ。すまぬな」と言った。
「なんだ頼んで損した」
閻魔大王はこめかみをひくひくとさせ、真白を睨みつけた。
「罪を重くすることはできるのだぞ」
「閻魔大王様はすばらしい人だ。俺たちのために慈悲を与えてくれて感謝している」
「……まぁ、良い。そろそろ時間だ。貴様の場所は地獄に用意してある。そこで共に過ごすが良い」
閻魔大王が手を振ると、黒い門が出現した。
「行け」
真白を先頭に赤石とアカリも歩き出す。だが玲子だけは動こうとしなかった。
「どうしたのだ。貴様は行かぬのか?」
閻魔大王の問いかけに、玲子は「別の場所って用意できるの?」と答えた。
「玲子は一緒に行かないの?!」
アカリはショックを受けたようだった。
「だって理由がないもの」
玲子は切なそうに眉を顰めるだけで、それ以上何も言おうとしない。
「玲子……」
アカリは玲子の気持ちに気づいた。気づいてしまった。だから何も言うことができない。
「理由がないとはどういう意味だ?」
真白は玲子の前に立ち問いかける。
「……だって赤石君は真白君の親友で、アカリは真白君の好きな人で、私は真白君の何?」
玲子の目元がキラリと輝いた。ぽろぽろと頬を熱いものが流れる。
真白は玲子の涙を前に何も言えなかった。
「一緒にいたくないわけじゃない。本当は一緒にいたい。けどただの友達の私に君の側にいる資格はあるの?」
「それは」
真白は赤石やアカリに助けを請うかのように視線をやった。それに気づいた玲子は顔を真っ赤にし、声を荒げた。
「私に一緒に来て欲しいなら! ……それだけの理由をちょうだい」
顔を赤くしたまま玲子は、恥ずかしそうに俯く。
「真白」
「真白君」
心配そうに事の成り行きを見守る二人に「大丈夫だ」と告げ、真白は玲子の肩に両手を置いた。
「俺はまだ桃田が好きだ」
「分かってるわよ、そんなこと」
悲しげな表情を浮かべる玲子に対して真白は首を振る。
「でも黒葉も俺にとっては大切な女性だ。かけがえのない存在なんだ。だから俺の側にいろ。理由が欲しいなら、俺を見ていろ。いずれお前だけの俺になってやるから、それまで待て」
玲子は目を見開いた。徐々に口角が上がる。嬉しそうに身を寄せる。
「側にいていいの?」
「あぁ」
「終わったのなら、さっさと行け。わしは忙しいんだ」
呆れた顔で動向を見守っていた閻魔大王は、手をひらひらとさせた。
「閻魔大王、ありがとう」
真白は深々と頭を下げ、玲子と共に黒い門を潜る。
「遊びに来てもいい?」
アカリは黒い門の手前で振り返った。
「好きにするが良い」
「またね」
アカリと赤石は仲良く手を繋ぎ、門を通った。
「私、赤石君とデートしてくるから」
「真白、ついでにお前に与えられた場所がどういうところか見てくる」
赤石とアカリは腕を組んで、笑顔で去っていた。後に残された真白と玲子は気まずそうな表情を浮かべ黙る。
「真白君、側に寄ってもいい?」
「別に構わないが」
玲子は真白に寄り添うように座った。
「私ね、ずっと君が好きだった。初めて会ったときから、君しか見えていなかった。だからアカリを好きなんだってこともすぐに分かっちゃった。私とあの子に対する態度全然違うものね。イヤになるくらい。私を最初に呼ぶこともないし……一緒にいるのが辛いこともたくさんあったわ」
玲子の告白に真白は口を挟まず、ただ黙って耳を傾けていた。
「でもね。私は君のことが好きで好きで仕方なかったから離れることもできなかったの」
「さっきは離れようとしたけどな」
真白の軽口に玲子は眉を顰め、目つきを鋭くさせた。二人は黙ってお互いを睨み合い、タイミングを図ったかのように目を逸らす。
沈黙。静かな時間は数十秒にも満たないもの。けれど二人には何時間にも感じられるほど長い沈黙だった。
最初に口火を切ったのは真白だった。
「俺は知らなかった。お前が俺をどう思っていたか。ずっと桃田だけを見ていたから。お前の気持ちを知ったのもついさっきのことだ」
「分かってるわ。私のことなんてどうでも良かったんでしょう?」
玲子は遠い目をして呟いた。軽い口調に反して、その表情はあまりにも暗い。
「それは違う。どうでも良いなんて思ったことは一度もない。お前は俺にとって大切な――」
「――友達でしょ」
玲子は機先を制して答えを紡ぐ。真白は口を閉ざすしかなかった。
「私は君の友達になりたいわけじゃない。君が友達と言うたびに、私は傷ついてるの。でも真白君は気づかない。私を見てないから。君は今でもずっとアカリだけを見てる。側にいろなんて本当は思ってないんでしょ?」
「違う!」
真白は玲子の言葉から耳をそむけるように頭を抱えた。
玲子は膝に顔を埋め、目をぎゅっとつむった。
「何も違わないわ。アカリが悲しそうな顔をしたから、側にいろって言っただけ。君の行動基準はアカリが中心なのよ。今までもこれからもそれは変わらないでしょうね。赤石君とアカリが幸せそうにしているのを見るたび、君は自分が犯した罪と叶わない恋心に苦しむことになる。でも仕方のないことよね。罪には罰が与えなければならない。今までどおり仲良しこよしではいられない。それは君が一番分かってることでしょう?」
「黙れ!」
耐え切れなくなった真白は声を荒げ、玲子を地面に引きずり倒した。真白は血走った目で玲子を見つめている。
「今度は私を殺すの?」
玲子の言葉に真白は我に返ったように目を見開き、どさりと座り込んだ。
「……すまない」
側にいる玲子でさえ聞き取るのが難しいくらい弱々しい声だった。
「私のほうこそ言い過ぎたわ。ごめんなさい」
「いや、お前の言うとおりだ」
「やっぱり側にいろなんて思ってないんだ」
真白は慌てたように口を開く。
「それじゃない! 今までどおりじゃいられないってことに同意しただけだ。側にいてほしいというのは本心だ」
くすくすと玲子は笑う。屈託のない微笑みは、真白の荒んだ心を吹き飛ばすには十分すぎるほどの破壊力を持っていた。
「分かってて言いやがったな」
「当然でしょ? 何年君を見てきたと思ってるの。君がまだ罪に苦しんでることも分かってる。私で良ければ、捌け口になるわよ」
片目をつむり、茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせた玲子に、真白は口があんぐりと開くのを抑えることが出来なかった。
「まさかわざと俺を挑発したのか?」
「好きな人のためになら、悪役にだってなれるのよ私」
「なんて女だ」
「惚れ直した?」
まるで冗談を言うかのようにあっさりとした口調だった。
「さぁな。……でも」
「でも?」
真白は憑き物が取れたような晴れやかな顔をした。
「黒葉がいて良かったと思ってる」
玲子は頬を赤く染め、そわそわと体をくねらせ、俯いた。
「君がイヤだって思っても側にいるから」
「俺はもう間違わない。あいつらのためにもおまえのためにも、絶対に」
真白は玲子の右手を取り、ひざまずく。
「黒葉、お前が俺を正しい方向に導いてくれ」
「いいの? 私も罪を犯した人間よ」
「俺のせいで罪を犯したんだよ、お前も桃田も。だから黒葉は悪くない」
「罪は罪よ。でも君が私を必要としているなら、断る理由なんてない。真白君、よろしくね」
「あぁ、こちらこそよろしくな」
真白と玲子は握手を交わした。手は固く結ばれている。まるで未来を暗示するかのように。