表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おとなしあたー  作者: 音無威人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/50

死ね屋

 何の気なしに入った路地裏で、『死ね屋』というインパクト大のお店を見つけた。店内は薄暗く、営業しているとは思えない。

「いらっしゃい、お嬢さん」

 暗闇の中から、店員らしきおばあさんがぬっと現れた。しわがれた声は腹の底から響くようなもので、その声のボリュームとは裏腹に体は酷くやせ細っていた。

「おばあさん、この店は一体何を売っているの?」

「おや、お嬢さん、看板を見なかったのかい?」

「見たけど、よく分からなかったの」

「お嬢さんは"死ね"という想いを抱いたことはあるかい?」

 私は首を縦に振った。"死んでほしい"相手はいる。だからこそ『死ね屋』という店名に惹かれたのだと思う。

 私を裏切った彼女が憎い。私を裏切った彼が憎い。何度"死ね"と思ったことか。

「そうだろうと思ったよ。この店は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からね」

 おばあさんの言葉の意味はよく分からなかった。けれど私は期待している。彼らに復讐できるかもしれないと。

「私が売っているのは"人に死をもたらす"商品さ」

 人に死をもたらす、なんて甘美な響きなんだ。心がゾクリとした。頭がふわふわとする。なんだか薬をやっているみたい。体に悪そうだからやらないけど。

「好きに選ぶと良い」

 陳列棚には奇妙な名前の商品が並んでいた。商品名の下に説明が書いてある。

 死ぬ菜――見た目は小松菜。味はただの毒。食べた瞬間、あぁ、死ぬなと思うことから『死ぬ菜』という名前になった――ダジャレだ。

 死ぬ菓――見た目はスナック菓子。味は甘い毒。真綿で首を絞めるかのごとく、対象はゆっくりと死ぬ――アリバイ工作に使えそう。

 死ぬ根――見た目はゴボウ。味もゴボウ。食べるとおいしい。寿命が来たら死ぬ――それもうただのゴボウ。

 死ね矢――この矢で狙いを定めて射ると死ぬ――矢ってそういうもの。

 うーん。使えそうなのは二つだけ。彼は甘いものが好きだから、『死ぬ菓』を買おう。

「おばあちゃん、『死ぬ菓』をちょうだい」

「はいよ。十円でいいからね」

 意外と安い。駄菓子の値段だ。お菓子だからかもしれない。本当に効くのだろうか。一抹の不安が過ぎる。

「大丈夫さ。お嬢さんの望みは叶うよ」

 ドキリとした。おばあちゃんの声は優しかった。この人なら信じられると思った。

「おばあちゃん、私殺るね」

「あぁ、お行き」

 私は復讐を遂げるため、家に帰った。



 警察から電話があった。彼は浮気相手の彼女と心中したそうだ。本当は私が殺したのに。『死ぬ菓』を持たせて正解だった。彼なら彼女と一緒に食べるだろうと思っていた。

 私の復讐は終わった。。『死ね屋』に出会えて本当に良かった。すべておばあさんのおかげだ。お礼を言いに会いに行こうかな。

 あぁ、なんだか晩酌したい気分。冷蔵庫には何が入っていただろう。彼が何か買っていると良いけど。

 そうか。彼が死んだから、これからは私が料理をしないといけないのか。面倒だ。でも何とかなるだろう。復讐をやり遂げることもできたのだから。


 さてと冷蔵庫の中は……あっ、おいしそうな小松菜。卵とじにして食べよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ