表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/57

08 悩みが解消されましたよーって話

引き続き、杉谷先生視点です。

06 担任の先生は大切にしましょうって話の杉谷先生視点です。

 今、坂田がいないことにさらに腹が立つ。

俺のことを良い先生と言ったあいつを見れば、少しは心も落ち着くと思ったのに。


 2分遅れで、坂田は教室に入ってきた。

少しイライラしていたのでそのままの口調で坂田に聞いてしまった。


「坂田!遅いぞ。どこ行ってた?」


 坂田咲笑は教科書を持ったまま。


「すいません、化学室に教科書を忘れて取りに行ってました」


 最後の授業は、化学。

つい、眉間に皺が寄っていることに気付く。

何をさっきから楠木先生を意識しているのだか、と自分でも思ってしまう。

彼は何も関係ないのに。


「5分前行動を心がけろ。後で職員室に来い。罰として、教材を運ぶのを手伝ってもらう」


 なんで、坂田にそんなことを言ったのか、遅刻なんてその場で注意すれば終わることをそんな風に言った自分を情けなく思った。

 重苦しい雰囲気のままホームルームが終わった。

自己嫌悪…

こんなんなら、あの女生徒にあんな風に言われても仕方ない。

肩を落としながら、職員室に戻った。

そして、坂田が来るのを待つ。

坂田がいれば…と思う自分がいるのだ。

本当に情けない。

自分よりなんこも年下のしかも生徒に頼るなよ。


「はぁーー」


 大きなため息をつく。

そんな俺に周りの教師は気づいた様子はないので、今日1日のことを反省していた。


「失礼します。杉谷先生」


 不意に名前を呼ばれ、振り返る。

坂田だ。


「あぁ、来たか。そこにある水色の冊子を国語科室に運んでくれ」


 平常心を心がけてそう言って、水色の冊子を指差す。

この位なら重くないだろうと、思ったが坂田は水色の冊子をじっと眺めてから持った。

俺は、気にしないフリをして、隣にある教材を持つ。


 職員室を出た俺と、坂田は無言だった。

というより、俺が話そうとしなかった。

少し坂田に八つ当たりしてしまったという罪悪感があったからだ。

でも、坂田といたら少しだけ、イライラしてた気持ちが薄れた気がする。


 国語科室に着き、荷物を置く。

俺は椅子にすわり、坂田を見た。

扉を見ながらそわそわしていた。

見すぎたのか、


「あのー先生ー」


 というこえが坂田から聞こえてくる。


「あのさ、 俺って、顔だけの教師か?」


 言ってから後悔した。

これって、聞き方によっては、「俺、イケメン!」って聞こえないか?


「先生はイケメンです」


 と、坂田は言った。

そんなはっきり言われても…、逆に恥ずかしいわ!


「そうか?そうでもないと…」


 否定する。坂田にそこまで言われるほどイケメンなどではない。

でもそれを最後まで言わせず坂田は言う。


「イケメンです!」


 と。

それから続けるように、


「でも、イケメンだけじゃないです。筋肉も素敵です。」


 坂田は真顔だ。

なんか、面白い。

さっきのイライラなんて、どこかに言ってしまったみたいだ。


「くくっ、あはははははは」


 最初は、坂田は真顔なので堪えようとしたのだか、無理だった。

やっぱり面白い生徒だ。

さっき気にしていたことなんて、もうどうでもよくなってきた。


「笑わないでくださいよ。本気なんですから」


 坂田はそう言うが面白いのだから仕方ない。


「そうか。うん。なんかもういいや。ありがとうな」


 そう言うと、坂田が不安そうな目をした。

安心させるために、俺は、坂田にみるる~の飴を渡す。

俺が何かを気にしていることに気付いていたのだろう。

まあ、 「俺って、顔だけの教師か?」なんて聞かれたら普通のやつは気付くよな。

どうやら、坂田は、俺の「もういいや」を悪い方で捉えてしまったらしい。

「もういいや」と言ったのは、さっき女生徒に言われたことなんて「さっきの坂田の発言でもうどうでもいいと思えて、気にならなくなった」と言う意味の独り言のつもりだったが、坂田の耳にははっきり聞こえたのだろう。



「よくないです!よくないです!確かに先生は私のすごくタイプのイケメンさんですが、それだけじゃなくて、先生としてもすごく好きなんです。優しいし、面白いし、でも何より私達の、生徒の立場に立って考えてくれるから、先生は…良い先生ですよ」


 と、全力で話し始めた。

こんな風に言ってくれる生徒がいるなんて、すごく幸せなんだな、と思った。


「うん。ありがとう。そう言ってくれる生徒が1人でもいるなら、良かった」


 お礼を言う

今の発言に対してもだが、坂田と話すことで、イライラがなくなった。

「そう言ってくれる生徒が…」と言ったが、実際は、「お前がそう言ってくれるのが、嬉しい」が正しい気がする。

そんなこと言ったら口説いてるみたいなのでそうは言わなかったのだ。

坂田咲笑は、とても可愛い生徒だな、なんてつくづく思った。

その感覚は妹を可愛がる兄のようで、少し違うような気がした。

まあ、俺には弟しかいないから分からないけど。


 そろそろ坂田も腹が減ってきているだろうからと、


「俺はもう職員室帰るから、最後にサービスだ」


 と言って坂田に近付く。

そして、坂田に顔を近付ける。


「近いです。先生」


 心なしか、坂田の顔が赤い。

可愛い。口には出さないが。


「だって、好みなんだろ?」


 さっき、イケメンを連呼されたので仕返しをしてやる。


「調子乗るな!イケメンー!」


 と、坂田は俺を押しのけて、


ーバン


 と扉をあけて、逃げるように出ていった。

そんな坂田の背中に、 「廊下は走るなよー」と言う。すると、坂田は振り返りもせず、 「先生、飴ありがとう」と言って走り去って言った。

人の話を聞いてないな。


でも、そんな生徒がとても可愛いと感じる。

不思議と消えたイライラは坂田のおかげ。

坂田の存在は、俺にとって二日酔い後のしじみ汁みたいだなーなんて、微妙な例えを頭の中でして、職員室に戻った。



話の番号間違えてました。

修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ