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46 恋の相談の話

 文化祭が終わった。

 あの後、りーくんと私の関係も、同居生活も変わることなく、過ぎていった。

 


 授業が始まって、しばらくして、私の足も大分よくなり、一人で色んなことが出来るくらいまで足が回復したため、学級委員だからという理由で何故か私だけが化学係を押しつけられ、相変わらず私に絡んでくる楠木先生。

 

 でも、前のように楠木先生の言動に顔を赤くはしなくなった。

 ただ、楠木先生に告白していた及川さんを思い出して、その姿を自分と重ねていた。

 

 化学係の授業後の片付けの時、


「咲笑さん、なんか最近元気ないですね」


 楠木先生が心配そうな顔で私にそう言った。

 それは最近杉谷先生にもよく言われる言葉だった。

 

「大丈夫です」


 決まってそう答える。

 

 大丈夫。

 何も変わってない。


 そう思うと同時に心に満たされないものを感じていた。


「咲笑さん、少し、変わりましたね…」


 楠木先生はいつもの笑顔を浮かべながら言った。

 何を思っての発言なのか、良い意味なのか、悪い意味なのか、よく分からなかった。


「何も変わってないですよ」


 言い聞かせるように呟いて、作業を続行する。


「もしかして、恋人でも出来ましたか?」


 まさか、教師ー楠木先生からそんなことを聞かれるとは思わず驚いたが、最近文化祭が忙しくて、楠木先生と話す機会が少なかったから忘れかけていたが、楠木先生は最初からこんな感じだったかもしれない。


「先生、恋の相談をしてもいいですか?」


 なんでそんなことを言ったのか分からない。

 でも、楠木先生はそういうのに慣れていそうだし、私自身、誰かに話を聞いて欲しかった。


「後で何があったか話してもらうからね」と透は言ったが、結局私は、りーくんが好きなことも、両親からの話も透にしなかった。

 できなかった。


 でも、友人じゃなく、家族じゃなく、もう少しだけ遠い存在になら…。


「……。いいですよ」


 やっぱりいつもの笑顔で、何を思っているのか分からない。

 でも、私は話した。


 かなりぼかしながら、兄の友人が好きなこと、でもその人との関係を壊したくないこと。

 それから、文化祭で相良先輩に嘘を吐いたこと。


「そんなことがあったんですね」


 楠木先生はそう呟いて、少し俯いてから、真っ直ぐ私を見た。


「そんな顔をして…。もう、私の可愛いハムスターちゃんではないのですね…」


 楠木先生の言っている意味はよく分からなかったけど、少し寂しげに見えた。


「楠木先生?」

「その彼に、想いを伝えてみてはいかがでしょう?」


 楠木先生はそう提案してくれた。

 楠木先生ならやんわりと、やめときなさい、と言うと思った。

 いや、むしろ言って欲しかったのかもしれない。


「でも、…」


 そう言って、何かを言おうと思ったが、後に続く言葉は出てこなかった。


「咲笑さん、あなたがどんな綺麗な華になるのか楽しみにしていますよ」


 そんな気障なセリフも楠木先生の声で紡がれれば、悪い気はしなくて、改めて楠木先生の瞳を見た。

 いつもと違うと感じると同時に、綺麗だとも思った。


 少しだけ、ほんの少しだけ、


 りーくんに気持ちを伝えても良いかなって思った。


「楠木先生、ありがとうございます」


 吸い込まれそうなその瞳から目をそらすように、お礼を言ってお辞儀をした。


 顔を上げると、何か言いたげな楠木先生の顔。

 少し待ってみたが、楠木先生は何も言わなかった。


 でも、楠木先生のおかげ少しだけ、すっきりした私は、片付けのスピードを早めた。

 すべての片付けを終え、私は


「じゃあ、お疲れ様でした。失礼しましたー」


 と、化学室から出た。



 廊下に出てから感じたのは、すっきりとした気持ち。

 

 だけど、さっき少しだけ、生まれた勇気も、すぐに萎んでやっぱり、想いを告げる決心はつきそうになかった。

 

 もう少しだけ、待って。

 

 もう少しが永遠に続きそうな程、私はそう心の中で呟いていた。



***


 

 咲笑の居なくなった化学室で、楠木志紀は教員机の前に座りながら、咲笑が出て行ったドアを見ていた。


 楠木は大きなショックを受けている自分に驚いた。

 心を落ち着けるため、先ほどいれたコーヒーを一口飲む。


 楠木は咲笑の表情が、可愛らしいから綺麗に変わったことに気付いた。


 咲笑を変えたのは、咲笑の想い人。

 そう思うと、腹立たしくもあり、羨ましくもあった。


 楠木は咲笑を気に入っていた。

 しかし、それは恋愛感情とかそんなものではなく、単なる興味の対象。

 しかも咲笑を他のものに例えるなら、ハムスター。


 しかし、あの咲笑の表情には人を惹きつける何かがあった。


 応援なんて決してしたくなかったが、


「咲笑さん、あなたがどんな綺麗な華になるのか楽しみにしていますよ」

 

 といった、その言葉は本心だった。


「はぁー。恋人つくろーかな…」


 楠木は大きく溜め息を吐いてそう呟き、あんな咲笑を見た後では、相手が見つかりそうにないな、と思ってまた、溜め息を吐いた。

 凄く書きにくい楠木先生。

 

 良い恋人が見つかることを願ってます笑

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