40 早く大人になりたいなって話
家に帰ると、りーくんはすでに帰って来ていて、兄と二人でおそろいのエプロンをつけて料理をしていた。
なかなか面白い光景だったが、気分的に笑う気にれず(陸さんは大爆笑)、リビングのソファに座った。
「ノリ、言われたもの買ってきたよ」
「おーありがとうな。でも、涼も買い物して来てくれたみたいで、とりあえず、それは明日の夕飯の食材にするわ」
と、兄が陸さんから買い物袋を受け取りながら、そう言い、さっきのスーパーでのことを思い出した。
りーくんと一緒にいた、大井先生。
きょーちゃんと、りーくんが一緒にいたときは、すごくもやもやした気持ちだった。
でも、りーくんと大井先生が並んだ時、凄く、お似合いだって思っちゃったんだよね。
大井先生は、社会の先生で、私が好きな先生だ。背は低いけど、おっぱい大きいし、可愛いし、授業はうまい。
二人とも先生で、大人で、私とは全然違う。
もっと、早く生まれてたかった。
「咲笑?どうした?ぼーっとして」
と、兄が台所から声を掛けて来た。
「眠いだけー」
と、誤魔化して、ソファーに横たわりふと、思った。
なんで、最近、りーくんのことばっかり考えてるのかな?
私の知らないりーくんをいっぱい見たからなのかな?
まだ、このもやもやした気持ちの正体は分からない。
ただ、兄のような存在が遠くに行ってしまうような、寂しさなのだと、思うようにしている。
それ以上を考えるのは嫌だから。
「咲笑」
身体を揺すられて、目を覚ます。
大輝にぃだ。
いつ帰ってきたのだろうか?
「ご飯できたってさ」
といいながら、私の身体を起こした。
「うーん」
起きるのは面倒くさかったが、お腹が空いていたので、仕方なくソファーを降りた。
テーブルの周りにはもうすでにみんな座っていて、私も大輝にぃと一緒に座る。
「いただきます」
と兄が言い、食べ始めた。
みんないつもの感じでおしゃべりをしている中、りーくんはあんまりしゃべっていなかった。
しばらくしてから、りーくんが小さめの鍋を持って来た。
「あっ!モコモコたまごだー」
鍋の中は私が好きな「モコモコたまご」。
これは、溶き卵に水と砂糖と牛乳を混ぜ、低温で火にかけるだけの料理だ。
もとは兄が風邪をひいた時によく作ってくれた、プリンもどきのようなもので、私はこれが大好きなのだ。
りーくんは、鍋を私の前に置いた。
状況がよく分からず、鍋とりーくんの顔を目で往復していると、再びりーくんが立ち上がり、大きめのスプーンと小さめのお皿を持ってきた。
なんとなく、受け取り眺める。
これ、食べていいってことかな?と恐る恐るスプーンで皿によそってからたまごを口に入れる。
「うんー、やっぱりおいしー」
私が思わず言うと、りーくんは
「おう。良かった」
と、笑った。
学校でのりーくんと全然違くて、凄く安心した。
それからは、皿にとることなく、みんなで鍋を突っつくことになってしまったが、男の人ばっかりだったから、仕方ないのかなと、思う。
食後寝る支度をしてからリビングにいくと、りーくんがテレビを観ていた。
やっぱり学校とは全然違う。
髪型だって、違うもんね、と思いながら、ぺしゃんこな髪に触ってみる。
おー、サラサラだ。
でも、私の髪よりは硬いかな?
「こら、イタズラするな」
と、りーくんが、振り返ってきて言った。
ふと、目が合い、さっき大井先生と一緒にあるいていたことを思い出した。
「さっき大井先生とスーパーで一緒にいたよね?」
思い切って口に出してみた。
「みてたのか。偶然会ったんだよ。なんで声掛けないんだよ」
「だって、車の中にいたし。てか、りーくん、大井先生と仲良いの?」
りーくん、一瞬不機嫌そうな顔をしたが、すぐに戻して、
「ミミの学校の備品返すのに手伝ってもらった時ちょっと話しただけ」
と言った。
「あ、そうなんだ」
二人が並んだ姿を思い出す。
私もおっぱい大きい美女になりたいと思った。
「それより、今日陸に迎えに来てもらってだろ」
突然嫌そうに言ったりーくん。
「うん。りーくん、陸さんが手振ってるのに無視してたよね」
私が笑いながらそう答える。
「 送り迎え、ノリにしてもらえよ」
私とは真逆のテンションで言った。
「うん、そうだよね。毎日とか陸さんに悪いしね。明日は兄に頼んでみる」
「大輝もだめだからな。むしろ、陸より大輝の方がだめだ。あいつの方が危ない」
りーくん、は小さな声で何やら言っているがよく聞こえないのでスルーすることにした。
まぁ、大輝にぃは大丈夫でしょ、と心の中で呟いた。
しばらくテレビを観ていたらうとうとしてきたので、りーくんに寄りかかり寝ることにした。りーくんが髪を撫でてくれているので気持ちが良い。
「今たまたまミミの近くで仕事してるけど、俺とミミの関係は教師と生徒じゃないからな」
心地よい優しい声が聞こえる。
「俺は杉谷先生と違って、お前と一緒に住んでるし、好きな食べ物も作れるし、こーやって寝顔も見られる」
そこで、どうして杉谷先生が出てくるのかよく分からないが眠いので、目を開けようとは思わない。
髪から、足に手が移動していって、怪我した足を優しく撫でてくれた。
「早く治るといいな」
と小さくりーくんは呟いて、その心地よさのまま私は意識を手放した。
もこもこたまご美味しいですよ!!




