39 天使は笑ってるの?泣いてるの?って話
学校は文化祭ムードで、教室の準備は問題なく進んでいった。
それより、私が嫌なのは、合同準備の方だ。
憂鬱ながらも、合同準備の教室へ向かった。
始まってすぐに、杉谷先生に隣の教室へ呼び出された。
そこには、先生のりーくんと、きょーちゃんがいた。
2人の向かいの席に座るように促され、座る。
杉谷先生は、私の隣に座った。
「昨日のことなんだが、浪川さんから話を聞いた。浪川さんが落ちる時、助けようと手を取った坂田も一緒に落ちたってことで間違いはないよな?」
杉谷先生に聞かれ、「はい」と頷く。
きょーちゃんとりーくんを見ると2人も頷いた。
「そうか。なら特に問題はないな。一応の確認だ。突然の呼び出し悪かったな」
と、杉谷先生は、私ときょーちゃんに言う。
「大丈夫です」と、返す。
それから、杉谷先生が立ち上がり、りーくんも、きょーちゃんも立ち上がった。
私もよたよたと立ち上がろうとしていると、杉谷先生が手伝ってくれた。
そこで、りーくんの視線に気付き、りーくんを見た。
「坂田」
りーくんに他人行儀に呼ばれる。
少し、胸がちくりとする。
仕方ないのは分かっているけど、痛い。
「そんなにひどいのか?」
心配している声。
でも、「先生」の声。
すごく壁を感じる。
「そんな大した怪我じゃありませんよ。ちょっと骨にひびが入っただけで…」
と、言うと、りーくんはすごく驚いた顔で、
「それ、本当に大丈夫なのか?!」
と言った。
本当に知らなかったようだ。
兄にでも聞いてるかと思ってた。
「大丈夫ですよ、多分…」
「多分かよ…。ー何かあったら言ってくれな」
最後の一言が妙に他人行儀に聞こえて、泣きたくなった。
でも、それをこらえて、なんとか立ち上がり、合同準備の教室へと向かった。
教室に行くと、天使は完成に近付いていた。
後は、羽根と、天使の顔だけだ。
「咲笑!!大丈夫!?」
私が教室に入ってきたことに気付いた透が、私の方へ来てくれた。
「大丈夫だよ」
と、私が答えると、 優美ちゃん、愛美ちゃん、里香ちゃんが、駆け寄って来てくれて、同じように、
「大丈夫?」
と心配そうに言ってくれる。
「うん、そこまでひどくないよ」
と、私は色々な人に心配をかけてしまい申し訳なくなりながら言った。
それからも、会長の中井先輩始め、多くの人が声を掛けてくれた。
本当にみんな良い人だ。
しばらくみんなで作業した。私は椅子に座りながらお手伝いだったけど。
作業中、副会長の相良先輩が、凄く私を気にかけてくれた。
基本的に、透や、きょーちゃんの近くで作業を手伝っていたのだが、ふと気付くと、近くにいて、助けてくれるのだ。
今だって、天使の羽の飛び出た羽をハサミで切っているのだが、使っていたハサミがどこかになくなってしまって、探していたら、相良先輩が、私に自分が使っていたハサミを渡してくれたのだ。
「ありがとうございます」
と、私は素直に受け取る。
最初は、「大丈夫です」とか、遠慮しながら言ってたんだけど、「気にするな。使え」の一点張りで、埒があかないので、素直に受け取ることにした。
「かーんせい!」
という、中井先輩の声が聞こえ、みんなで拍手する。
できたよー!羽!
手先が器用な子が多かったから、順調に進んだ。
短期間の割に、頑張ったよ!!
「はーい、じゃ、天使に羽つけちゃおっか!」
と、中井先輩が言い、みんなで羽を持ち上げる。
私は、見てるしかできないけど。
ここまでやってきたのに、なんか少しだけ悔しいなー。
天使の胴体と、羽がくっついた!!
「改めて見ると、なんか感動するね」
と、隣に来た透が言った。
「うん、すごいね!キラキラだね」
「キラキラ?うんー?キラキラ…かな?」
と、透は、私の言ったキラキラが分からなかったようだけど、否定はしなかった。
後の問題は、天使に表情がないことだ。
のっぺらぼう。
笑顔が多数派。
もうむしろのっぺらぼうでいいんじゃないか、が少数派。
私は、笑顔派だ。
でも、みんなで作ったものだから、みんなが納得する形で決めたいと思った。
久々に、中井先輩と一緒に黒板のまえに立って、実行委員の副委員長として、天使の表情の多数決をとることになった。
「じゃー、笑顔派か、のっぺらぼう派で多数決とりましょうか」
私が言い、中井先輩の方を見ると、なにか考えているようだ。
そして、一呼吸おいてから中井先輩は言った。
「泣き顔っていうのどうかな?」
と。
教室内がざわざわし始めた。
「その心は?」
相良先輩が、中井先輩に聞く。
「青春の心の痣、というところで」
と、中井先輩は答え、二人はお互いに笑いあった。
いやいやいやいや、ちょっと待って。
二人の間には通じあうなにかがあったんだろうけど、私達全然分かんないからね!
という視線を送る。
そんな、私に気付いた中井先輩は、私に笑いかけ、それからみんなに聞こえるように、大きな声で、言った。
「文化祭と言えば、感動でしょ?いっぱい泣くじゃん。だからさ、涙は、天使に任せて自分たちはいっぱい笑おうってことで泣き顔。ねっ?どう?」
なんだか、妙に納得してしまった。
他の人達もそうなのだろう。
みんな黙っていた。
多数決の結果は言わずもがな、泣き顔で決定でした。
その後、表情は、発案者の中井先輩が書くということで話がまとまったため、今日はこれで解散となった。
前より早い解散で少し嬉しくなった。
本当に、陸さんのいう通りだ。
嫌だなーって思う日ほど、良いことがあった!
私は、陸さんに学校を出たところで、メールをした。
すぐに、返信が来て、後5分で着くそうだ。
私の横を緑青の生徒が通って行く。
私は、挨拶を返しながら、陸さんを待っていると、最後尾に、りーくんの姿があった。
りーくんと目があう。
何か言いたげな顔をしているが、普通に「さよなら」と言われて、私も普通に「さよなら」と返した。
そのすぐ後に、私の前に車が止まった。
兄の車だ。
窓が開いて、陸さんが顔を出す。
「おまたせ、乗って」
の声に、頷き、助手席に座った。
りーくんが、こちらを見ている。
陸さんも、それをハンドミラー越しに確認すると、楽しそうに笑い、
「あれ、涼じゃん」
と言い、手をふるがりーくんからの反応はない。
「ありゃ、そっか、まだ一応仕事中だからか」
と、陸さんは、言い、
「じゃあ、行こっか」
と、車は走りだした。
陸さんは、なんだか凄く上機嫌で、だから私も少し楽しいのに、こちらを見ていたりーくんの目が心をざわつかせた。
帰りに陸さんが、スーパーに寄るというので、私がいくと、遅くなっちゃうので、おとなしく車で待っていることにした。
しばらくは、車の中にある兄の演奏のCDを聞いていたのだが、飽きてしまい、ぼーっとスーパーの出口を眺めていた。
陸さん早く出てこないかなーなんて考えてた。
そのときは。
家族連れが出てきて、その後に出てきたのは、りーくんだった。
隣には私の学校の大井先生。
え?何で?
てか、いつそんなに仲良くなったの!?
スーパーでお買い物しちゃうくらい?
学校では私とは他人なのに、先生とは仲良くなるの?
よく分からないよ。
でも、一番よく分からないのはこんなこと考えている自分だ。
しばらくして、陸さんが帰って来て、家に帰ったけど、車の中でずっとりーくんのことを考えていた。
38話の放課後水族館に行くという話でしたが、あれは話の流れの中で怪我をしている咲笑には無理なのを先日気づきまして、修正しました。
39話でも水族館へ行く流れになっていましたので、その点も修正しました。
38、39の後半部分が変わってしまいました。
本当にすいませんでした(T^T)
陸さんとの水族館デートの話はもう出来ているので、文化祭の話が終わったら入れる予定です!




