32 この感情は何?って話
次の日、午前中は通常授業。
午後に文化祭準備だった。
途中までクラスの準備をし、その後合同準備の方に行った。
全員が集まった。
今日は企画班との打ち合わせだ。
「で、どんなのにするんですか?」
と、中井先輩は企画班の子達に言う。
企画班の中の上級生らしき人が説明を始めた。
まず、文化祭に来てくれた人達にリボンを配る。
そのリボンは、天使の頭の大きさの半分長さにする。
リボンを誰かと、繋ぎ合わせて天使の首にかける。
「繋ぎ合わせるのは、誰でもいいんです。友達でも、恋人でも、先生でも、家族とだっていいんです。繋がりを持ちたい、繋がりを持ち続けたい相手と、結び合わせる。繋がりっという意味でっていうのはどうでしょう?」
確かに面白い企画かも。
「うん!面白い!いいね!じゃあ、それで行きましょうか」
と、中井先輩が言いみんな同意した。
それからはまた企画と制作に分かれて作業。
リボンの方は企画班がやってくれるそうなので、私達は制作に集中。
ダンボールだけでは弱かった骨組みに、ワイヤーをつけることにした。
ちょっと天使の頭が丸くなった。
これからが大変!
翼を作るのだ!
私と透、この前仲良くなった、愛美ちゃん、優美ちゃん、里香ちゃんとで翼の方を担当することになった。
ちなみに中井先輩と、相良先輩もだ。
とりあえず、ダンボールとワイヤーで骨組みを作り始める。
「どうだ、順調?」
と、後ろから声をかけられた。
声の主はりーくんだった。
昨日はできるだけ関わらないみたいなこと言っといたのにりーくんから声をかけてくるとは…。
「うん、順調!」
と、優美ちゃんは元気よく答える。
私は無反応。
というか、どうしていいのか、分からない。
とりあえず、なんでもなかったかのようにしゃべるべきかな?
そんな私の気持ちも知らず、りーくんは私達の作業を手伝い始めた。
優美ちゃんが面白いダンボールの破片を見つけて、りーくんに見せる。
「先生ー、これね…」
「そんなことしてないで、手を動かせ、手を!」
なんか、先生っぽい。
りーくんは緑青の3人と楽しそうに話している。
その中に、透は楽しそうに入っていった。
2人ともお互いに初対面ということにしているようだ。
りーくんも、透もすごいな。
話を振られても少し不自然になってしまう。
そんな私に透がフォローを入れている。
ごめんなさい、もっと頑張ります。
話している途中、私はトイレに行くためにその場を立った。
ドアに向かう途中、教室内を見回すと、1人でダンボール切っている緑青の生徒が目に入った。
声をかけるべきか迷う。
さすがに1人だとつまんないし、寂しい。
同じ学校の人だったら、まだ声かけやすいんだけどなー。
どうしようかと、悩んでいると、ふと杉谷先生と目が合う。
杉谷先生も、この生徒が気になっているようだ。
目が合い、複雑そうに笑った杉谷先生。
これは、あれですね、「どうにかしろ」というサインですかね?
私も、気になっていたので、杉谷先生の視線に背を押され、その子に声をかけてみることにした。
「何担当?手伝おうか?」
私がそう声をかけると、その子は顔を上げた。
…ーびっくりした。
髪は茶髪で、少し大人っぽくて、気が強そうなイメージの女の子。
この前、りーくんの隣にいた、りーくんと仲が良いらしい 浪川京香さんだった。
「いい、別に。必要ないし」
思った以上に冷たく返されてしまった。
困った。
このまま立ち去るのは嫌だ。
なんとなく嫌だ。
私はすごく勇気を振り絞って声をかけたんだから!
考えた末、私は勝手に彼女の横に座った。
そして、気をつけながら、彼女が切っていたダンボールとカッターを奪った。
ダンボールには下書きがあり、その線にそって切っているようだった。
私は、勝手に浪川さんの作業を引き継ぐ。
「ちょっと、あんた!なにしてるのよ?!」
すこし、荒い口調の言葉が飛んできた。
が、周りの声にかき消され、気にしている人は少なかった。
「手伝ってるの!」
そう言って、私はダンボールを切る。
「なんなのよ…」
と、浪川さんが諦めたように呟いたのが聞こえて、私は心の中でガッツポーズをした。
なんとか、浪川さんから引き継いだ分は、切り終わったが、私がやったところと、浪川さんがやったところに大きな違いが…。
私、下手…。
「えー」
隣から思わず漏れたみたいな、声が聞こえてきた。
浪川さんだ。
「うー、なんですか?だめですか?」
言われる前に聞く。
「うん、だめ」
はっきりと言われました、
「だめというか、下手?」
もっとはっきり言われました。
つらっ。
「ひどいよ!頑張って切ったのにー!!」
と、私は浪川さんが切っていたダンボールをとった。
「うわ、器用…」
つい、呟いた。
「ぶっはっっ」
浪川さんが吹き出して、笑い始めた。
「面白いね、あんた。そんなに素直に言われるとね…」
面白いって言われた。
でも、浪川さんも、思ってたより怖い人じゃなかった。
そんなことよりも、
「あんたって呼ばれるのやだ」
私がそういうと浪川さんはきょとん顔で私を見た。
こういう顔は、綺麗じゃなくて、可愛いんだね、と思いながら、昔、流行ったあの言葉を言う。
「あんたわたしのことあんたあんたっていうけどわたしはあんたのことあんたあんたっていってないからあんたもわたしのことあんたあんたっていうのやめてよねあんた」
矛盾だよね、あんたって言ってないとか言っといて普通に言ってるし、でもさ、これを噛まずに言えるのがかっこいいだなんて、思ってた時期があるんですよね。
浪川さんの様子を確認する。
完全に固まっている。
目の前で手を左右に振ってみる。
「うん、分かったから、それ言うのやめてね。なんか頭ぐわんぐわんするから」
それからやっと意識の戻った浪川さんがそう言ったので「うん」私はすぐに頷いた。
「で、名前」
浪川さんは素っ気なく言う。
そういえば、自己紹介してなかったな。
「坂田咲笑です。よろしくお願いします」
「浪川京香。こちらかそよろしく」
なんとなく握手をしあう。
「じゃー、きょーちゃん、続きやろ!」
「もしかして、きょーちゃんって私のことだよね?」
「何か問題でも?」
「……いや、もういいや」
しばらくきょーちゃんは私を変な目で見たが、最後にはそう言った。
京香だから、きょーちゃん。
可愛いじゃん?
「あっ、続きの前に待って、透達にこっちで作業すること一応言っとくから」
「別にこっちで作業しなくても「言って来る」
きょーちゃんの言葉を遮り立ち上がって、透達に報告。
戻ってからおしゃべりしながら(と言っても私が一方的に話しかけているだけなんだけどね)作業を進めていると、
「絵の具が欲しい」
と、きょーちゃんが言った。
なので、杉谷先生に言って、きょーちゃんと、上の階にある美術室に行くことにした。
「なんか咲笑って、妹みたいだよね」
廊下に出たところできょーちゃんが言った。
初めて、咲笑って呼んでくれた。
少し嬉しい。
「きょーちゃんは、妹いるの?」
「いやー、一人っ子なんだけどさ、なんか妹っぽい」
「うーん。兄がいるからかな?年離れてるからさ、兄の友達もひっくるめて、兄みたいなもんだからかな?」
「なんだそれ」
と、きょーちゃんは、笑ってから
「少し羨ましいな」
と、言った。
小さな声で。
なんだか、それが少し寂し気で、
「今度うち来てよ!みんないるからさ」
と、言ってしまった。
来たら、りーくんがいるから色々とまずいのに。
つい、言ってしまった。
「うん」
きょーちゃんはすごく素直に頷いた。
それから、美術室で、絵の具を借りた。結構大きなダンボールを一つ分くれた。
「咲笑が持つと危なっかしいから」
と、きょーちゃんが持ってくれたが、それくらい私にだってできる!
「階段の踊場に着いたら交代だからね!」
と、しつこいくらい言ってから、私達は美術室を出た。
廊下を出て、階段を降りようとしたとき、きょーちゃんが足を滑らせた。
ダンボールのせいであまり足下が見えていなかったようだ。
不意に私はきょーちゃんの手を掴んだ。
でも、踏みとどまれなくて、私は一瞬の浮遊感の後、目をぎゅっとつぶった。
「坂田!坂田!」
杉谷先生の声だ。
目を開けると、泣きそうな杉谷先生の顔。
すぐに聞こえた、大きな声。
「浪川!!」
りーくんが走っていく、私の前を通り過ぎて、きょーちゃんの方へ。
りーくんは、私の方を見ない。
きょーちゃんしか見ていない。
なんで、りーくんは私の所にこないの?
なんで、私じゃなくて、きょーちゃんの名前を呼ぶの?
なんで、優しく抱き起こす手がきょーちゃんの方にあるの?
酷い頭痛がする。
耳なりが鳴り止まない。
嫌な感情が溢れ出して、もうどうなっているんだか、分からなかった。
今、凄く、自分が嫌いだ。
「あんた私の事、あんた、あんたって言うけど、私はあんたのことあんた、あんたって言ってないからあんたも私の事あんた、あんたって言うのやめてよね、あんた」
見やすくするために漢字にしたんですけど、逆にみずらい?(笑)
小さい頃やりませんでしたか?この遊び!




