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03 行ってらっしゃいの話

 引っ越しが終わり、翌日には、それぞれの職場に向かう兄たち。


「ちゃんとお留守番できるかなー?」


 兄がわざと猫なで声でいう。


「はーい!ってなんでやねん!もう、そんなこと言われる歳じゃないし!」


 といいながら、兄の腹にグーパンチする。


「はははは」


 と笑うだけの兄。

腹筋ヤローの兄には効かないようだ。


「咲笑、お土産買ってくるから、いい子にしてろよ。早めに帰ってくるからな」


 と、本気で言っている様子の大輝にぃ。


 いやいや、あなた。私の年齢お分かり?

もうすぐ、JKだよ?


「分かったよ。お土産はマカロンがいい!」


 それでも、ちゃっかり、お土産のリクエストはしておく。


「火の元には気をつけて。知らない人が来ても開けちゃだめだよ?」


 と大輝にぃは言うと、私のおでこにキスをして、「いってきまーす」といいながら行ってしまった。


「行ってらっしゃーい」と言いながら手をふる。


横で、兄が「やれやれ」という顔をしてる。

大輝にぃのおでこにキスなんて、慣れたものだ。



「本物の兄より、兄っぽいぜ」


とか言いながら靴を履き、


「どうせ暇だろ。夕飯作っといて」


と言ってから家を出た。


「仕方ないなー」


といいながら、リビングに戻ると、そこではりーくんがまだ、ゆっくりと、朝ご飯を食べているところだった。


「りーくん、そんなゆっくりしてて、いいの?」


「うん。今春休みだし、家も学校に近くなったし」


「そうなんだ。後、どれくらいで出るの?」


「なに?俺に、早く出てって欲しいの?」


 りーくんの言葉に、頷こうとしたが、やめておいた。

後が怖いもんね!

早く一人になって、乙女ゲームやりたいだけだもんね!

乙女ゲームは、家で一人になってやれ!ってまえ兄に言われたもん!

だから、早く一人にさせてください。


「ミミ、今変なこと考えてるよね?」


 ばれた。

「いえいえ、めっそうもございません。悟りを開こうとしてただけです」


テキトーなことを言ってごまかしとく。


「そう、悟りね。がんばって」


 応援された。頑張ります。


「じゃあ、そろそろ、俺も行くわ」


とコーヒーを飲み終えた様子のりーくんが立ち上がった。


 改めてみるりーくんのスーツ姿はちょっとかっこいいかもしれない。

髪をワックスで後ろにしているので、いつもと雰囲気が違う。


 これはー、女子生徒にモテるでしょ!


 ぜひ、これでメガネをしてほしい。


なんて、心の中で言ってみた。


「なにみてんの、ミミ?」


 りーくんを見つめすぎた。

ヤバい、ヤバいと目を逸らして、


「なんでもない」


と答える。


「まぁ、いいや。家の中荒らすなよ、ミミ。行ってきます」


と、ほっぺにキスをしてりーくんは家を出て行った。

りーくんのほっぺにキスも慣れたもんだ。

どうせ、ペット扱いですよね。


「行ってらっしゃーい」


 と、そんなこんなで、やっと嵐が去ってくれたことに安堵し、大きなため息をついた。


 いえーい!やっと1人ー!

オレンジのソファーに座り漫画を読む。

読み終えたら、部屋からゲーム機を持ち出し、乙女ゲームを始める。


とだらだらしながら1日を過ごしていたら気付けば夕方。


 仕方なく、大人数で食べれるカレーを作り始める。

じゃがいも切ってー、玉ねぎ切ってー、お肉切ってー、焼いてー、水入れてー、あくとってー、煮込んでー、ルー入れてー、出来上がり!!


 まだ、誰も帰ってくる気配がなかったので、お気に入りになりつつあるオレンジのソファーに寝っ転がった。


それからしばらくして、


ーガチャ


誰か帰ってきたようだ。


「ただいま、ミミ」


りーくんだ。


「イチゴ大福買ってきたよ」


と、りーくんは私に袋を見せる。


「おかえりー、ありがとうー!」


と、私はイチゴ大福に手を伸ばすが、空振り。

りーくんがわざと袋を持ち上げたのだ。


「後でね」


 りーくんは袋を冷蔵庫の中にしまってしまった。

そして、私のお気に入りになりつつあるオレンジのソファーに座った。

つまり私の隣。

私は少し眠かったので、りーくんの肩に頭を預けて寝ることにした。

髪を撫でてくれるりーくんの手が気持ちよくて、すぐに意識を手放した。


 


 その後、私はカレーの匂いで目を覚ました。

りーくんは私の隣に座ったままで、何かの書類に目を通している。

どうやら、帰ってきた兄と、大輝にぃがカレーを温め直してくれたようだ。


「おう!咲笑。起きたか。早くカレー食え」


 兄が、私に皿に盛ったカレーを差し出した。

りーくんはもう起きていたようだ。

というかそもそも寝ていたのだろうか?


 私は真ん中の大きなテーブルの前に座りカレーを食べる。

何やら視線を感じるのですが…

発信源を辿る。


…大輝にぃ?


 大輝にぃに視線を向けると、にこっと笑顔を向けられた。

気のせいだったのかな?

気にせずカレーを食べ切った。

そして、お気に入り(確定)のオレンジのソファーにはまだりーくんがいるが、オレンジのソファーをりーくんに譲る気はないので、ソファーに座ろうとしたところで、


「咲笑」


と、大輝にぃに呼ばれた。


「ほら、マカロン」


 私は目を見開く。

マカロン!いえーい!


「大輝にぃ!」


とすぐに大輝にぃのとこに駆け寄る。


 大輝にぃは私を座らせると、マカロンの袋を開けた。

大輝にぃは機嫌が良いのか、私を自分の膝の上に座らせると、マカロンを一つつまみ、私の口に運ぶ。

 1個目は素直に食べたが、2個目もそうされたので、


「自分で、食べれるよ!」


と文句を言ってみた。

 すると大輝にぃは、


「そんなこと言うならあーげない」


と意地悪そうに笑って言うから、仕方なく従うことにした。


 マカロンを食べていることに気付いた兄が、途中から近づいてきて、


「俺にもくれ!」


と言いながら、食べ始めた。


「涼もどう?」


と大輝にぃがりーくんに聞いたがりーくんは少し機嫌悪そうに目を細めて、


「いらない」


と言った。


2人がたまに喧嘩するのは知っているので、気にしないようにする。


マカロンを食べてお腹いっぱいになったので、私はしっかりと、歯を磨いてからリビングでゴロゴロしてから、そのままリビングで寝た。





 次の日咲笑の頭がボサボサだったのは、咲笑の髪を競うように撫でていた涼と、大輝のせいだということを咲笑は知らない。

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