25 テスト勉強しなきゃって話
楽しい校外学習が終わった後は、定期テスト。
そして、只今テスト一週間前の日曜日。
二週間前位からやばいなーとは思ってたの。
でもね、やる気が出なくて…。
文系科目は得意だから、詰め込めば大丈夫だと思うの!
でもね、理系科目というか、数学はどうにもならない。
そして、気付いた。
家にはいっぱい大人がいるじゃないか!っと。
私は、まず暇そうにしている兄に目をつけた。
兄は、ゲーム制作会社の社長(肩書きだけ)だし、コンピューター系だし、高校でも数学の成績だけは良かったと母から聞いているので、勉強道具を持って兄の部屋へ。
「ねーねー、兄ー!勉強教えて!」
「おう!いいぞ」
と、兄は快く返事をしてくれた。
は、いいものの、教え方が下手過ぎる。
私の頭が悪過ぎるのか?
だってさ、兄は答え書くだけで、「それだけじゃ分からない」って言ったら、「わーっと解け」だの、「ばってやって、しゅって解くんだよ!」とわけの分からない擬音を並べられて、ちょっと私の足りない頭では分からなかった。
「もう大丈夫。別の人に頼む」
と言うと、兄はしょぼん顔で、
「そうか」
と言った。
なんか申し訳なくなって、
「ありがとうね」
と、言うといつもの兄に戻った。
私が教科書を持って立ち上がろうとしたときに兄が思い出したように言った。
「そういや、咲笑。母さんから「咲笑がメールを無視するー!」ってメールが来たんだけど…ちゃんと返信してやれよ」
別に、お母さんと仲が悪い訳じゃないんだよ。
むしろ良いんだけどさ、お母さん仕事終わって夜メールしてくるんだよね。
それは、いいんだよ。
仕事で疲れてるのにわざわざメールして来てくれてるんだから、嬉しいよ!
でもね、深夜のメールだと返信朝になるじゃん?
でさ、最初の頃は朝返信してたんだけど、段々忘れることが増えて来て、で、返信しないと次の日の夜には四十件くらいメールが来てるの。
それは流石に返信するんだけど、メール一件一件に返信しろって言ってくるわけ!
無理でしょ!
それに、週末は電話するんだから、いいのにさ…。
私のこと心配してのことだって分かってるからさ、あんまり邪険にできないんだけどね。
「全部のメールには返信できないけど、できる限りするよって今度電話来たら言っといて」
と兄に、言い部屋を出た。
次は、陸さんのところに行ってみた。
陸さんはリビングでコーヒーを飲んでいたので、テスト一週間前だということを話すと、
「俺にできることなら」
と、言ってくれた。
が、「教えて欲しいのは数学だ」と言うと、陸さんは気まずそうに目をふせ、
「ごめん、俺、数学壊滅的な学力なんだ…」
と、見かけによらず、文系だったらしく、断られてしまった。
兄よりは、教えられると思うんだけどなーと思いながらも、次のターゲット、大輝にぃの部屋に、向かった。
ちなみにりーくんはダメだ。
だって、りーくんも試験問題を作らなければいけないので忙しい。
現に今も部屋にこもっている。
私は、大輝にぃの部屋のドアをノックする。
大輝にぃから、「どうぞー」とのお許しが出たので中に入る。
「ねー大輝にぃ!数学教えて!数学!」
と、入った瞬間からお願い。
「仕方ないなー」
と言いながらも、小さめの机を出してくれた。
その上に教科書を広げる。
私の正面に、大輝にぃが座る。
教え方は、兄より全然分かりやすかった。
てか、学校の先生より…。
いや、途中で分かんなくなって、諦めて授業を、聞かなくなった私が悪いわけなんですけどね…。
なんとなく、テストの先が見えて少し安心。
テスト範囲の問題を重点的に解けってのと、ちょっとしたヤマを教えてくれた。
「でも、当たるかわ分かんないから」っと大輝にぃは言ったけどなんか当たる気がした。
「また、分かんないとこあったら聞きにおいで」
と、大輝にぃは言ってくれて、
さすが大輝にぃ!!
と思った。
それにしても、なんだかおかしい。
いつもの大輝にぃならもっと距離が近いはずなのに、なんだか少しだけ遠い気がする。
少し寂しく感じて正面に座ってる大輝にぃの隣に行く。
「咲笑?」
不思議そうに、大輝にぃに名前を呼ばれる。
私が大輝にぃの方を見ると大輝にぃの顔がどんどん近づいてくる。
なんか、色気ムンムンなんですけどー!
しかし、つかまれたのは鼻。
「油断しすぎだよ、咲笑。他人なんだから距離感っていうのが大切」
大輝にぃのその言葉がすごく冷たく聞こえた。
大輝にぃのことを怒らせちゃったのかな?と思ったがいつもの大輝にぃだったし、特に深い意味はないんだろうけど「他人」という言葉に私はなんだか冷たいものを感じた。
私は勝手にみんなを「家族」だと思っていたから。
その後は、大輝にぃとこれ以上話すのは怖くて、さっきの言葉の意味を知るのが怖くて、大輝にぃの部屋を出た。
無理やり笑顔を作って、
「お腹すいちゃったから、おやつ食べてくるね」
と、嘘をついて。
お腹なんてすいてない、けど、とにかくリビングに行った。
リビングには誰もいなくて、寂しくなった。
心がざわざわして、すごく一人が怖くなった。
今までなんて、家で一人のことなんてすごくいっぱいあったし、一人は割と好きだったのに、今はすごく嫌だった。
私は、兄の部屋に飛び込んだ。
部屋に入ると、兄はいつものごとく、アクションゲームをしていて、安心した。
「おにいー!」
つい、ここでは呼ばないと決めていた呼び方で兄に飛びつく。
軽々と受け止められた。
さすが筋肉!!
「どうした咲笑」
私の様子に少し心配そうな声をかけてくる。
私はさっきの話を兄にはしたくなくて、ぼかして話すことにした。
「おにい、あのさ、「他人」ってどういうことだと思う?」
ちょっと唐突過ぎたかも、と思いながら兄を見ると考えているようだった。
それからしばらく、「うーん」と唸っていたが最後に、
「分からん」
と言った。
仕方ないので、文明の機器に頼ることにした。
ネットで 他人 と検索してみた。
1自分以外の人。ほかの人。
2 血のつながりのない人。親族でない人。
3その事柄に関係のない人。第三者。
だそうだ。
大輝にぃはさっきどの意味で使ったのだろうか…。
他人かぁー。
1と2の意味だったら、私と大輝にぃは他人なんだよね。
なんで、他人って言葉に過剰反応しちゃったんだろう?
考えてみたけど分からなかった。
「大輝にも大輝の考えがあるんだろーよ」
と、言っていきなりギターを構えだした。
「何してるの?」
と、私が聞くと兄は、キラキラ星を弾き始めた。
兄が歌いだしたので、私もノリで歌う。
なんか、楽しく歌いきってしまったけど、兄は何がしたかったのかな?
不思議に思い兄を見ると、髪をくしゃくしゃにされるように撫でられた。
兄の撫で方は雑なんだ。
でも、それも嫌いじゃない。
「飯でも作るかー」
と、兄は立ち上がった。
そこで、なんとなく理解した。
兄は私の気分転換をしてくれたんだなって。
私も立ち上がり、兄に着いていった。
気付けばお昼で、確かにお腹がすいた。
私も手伝いをする事にした。
今日は、焼きそばだ!
出来上がると、兄は、みんなを呼びに二階に行った。
みんな降りて来た。
なんだか、大輝にぃと顔をあわせづらい。
りーくんは疲れた顔をしていたが、他のみんなは、いつもの雰囲気だった。
食べ終わり、食器の片付けをする。
大輝にぃが手伝ってくれた。
でも、いつもと変わらない。
さっきまで悩んでたのが馬鹿らしく思えてきた。
最後の食器を洗い終わり、手を拭こうとしたのだが、大輝にぃがいてタオルに届かない。
手が濡れた状態のまま、ちょっとどいてもらおうと、いつものように、
「大輝にぃー」
と、言うと、どいてくれる前に
「咲笑」
と、呼ばれた。
声の感じでいつもと違うことに気付く。
「そろそろ、大輝にぃって呼ぶの、やめない?」
手がつめたくなってきた。
水のせいかもしれないけど、違うかもしれない。
「なんで?」
とは、聞く気にならなかった。
「他人」という言葉が頭に浮かぶ。
怖くなった。
声が震えないように、気をつけながら、言う。
「じゃあ、なんて呼べばいいかな?」
大輝にぃは困ったように笑った。
それがとても悲しかった。
胸がぎゅーっと苦しくなって、鼻の奥がつぅーんとして、涙が出そうになる。
でも、やっぱり、私は笑って、
「勉強しなきゃ」
と言って自分の部屋に戻った。
私は、大輝にぃのことを兄のように思っていた。
でも少し頼りすぎちゃったかもしれない。
大輝にぃは、私が「大輝にぃ」と呼ぶのを嫌がった。
小学生の頃から知っている、優しいお兄さん。
本当の兄とは違う優しさを持ったかっこいいお兄さん。
でも、本当は迷惑に思ってたのかもしれない。
すごく悲しい。
わがままだけど、私は「大輝にぃ」と呼んでいたいと思った。
他人
1自分以外の人。ほかの人。「―まかせの態度」「―のことはわからない」
2血のつながりのない人。親族でない人。「赤の―」「遠くの親類より近くの―」
3その事柄に関係のない人。第三者。「内部の問題に―を巻き込む」「―の出る幕ではない」
コトバンクより。
誤字訂正しました。
ご指摘ありがとうごさいます!




