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24 校外学習の話③

 私は、少しも手をつけていないお弁当箱をしまいながら安田ありさちゃんに言った。


「私、透のところ行くね」


 と。

安田ありさちゃんも私が透に何を話すのか分かったようで頷いた。

立ち上がりながら、ずっと言えてなかった言葉を思い出した。


「私のこと、れいのこと、大好きって言ってくれてありがとう。ありさちゃん」


 私がそういうと、ありさちゃんは少し驚いた顔をした後、嬉しそうに笑った。

なんだか、それがとても嬉しかった。


 私は、人がいっぱいいる所に行き、透の姿を探した。

透は、クラスメイトの美瑠と悠里と一緒にいた。

二人はお弁当を広げているのに、透はお弁当を広げていない。

不思議に思いながら近づいていくと、透は私に気付いて声を上げた。



「あー!いたー!咲笑!!どこ行ってたの?探したんだから」


 と、少し怒り口調だ。

そういえば、透とご飯食べる約束してたんだった。


「ごめん、透。もしかしてお弁当食べてない?」


 透がお弁当を広げていないから、もしかして…と思い聞いてみたら透は頷いた。

さらに申し訳なくなる。

もう一度「ごめん」と謝ってから、美瑠と悠里と離れ、木の下にレジャーシートを広げて二人でお弁当を出した。


「あー、お腹すいたーー!!」


 と、透は言いながらお弁当を食べ始める。

私を待っててくれていたようだ。

本当に良い友達を持った。

私は、透の食べている様子を見ながら話しを切り出すタイミングを見計らっていた。


「何?なんか顔についてる?」


 透に気付かれてしまった。

意を決して、私は自分が歌友会員であること、そして3年前誘拐されたことを話した。

透は静かに聞いてくれていた。

話し終わって、なんだか不安になって透をみると、真剣な表情をした透がいた。

そして、私の方に手を伸ばしてきて、その手は私の頭の上でとまった。


「大変だったね」

 

 と言いながら、透は私の頭を撫でた。

本当に優しく触れるだけの撫で方がくすぐったくて、それでいて心がほわーとして、泣きたくなった。




 それからしばらくして、私の心が落ち着いたあたりで、透が言いづらそうに話しだした。



「あのさ、私も、咲笑に言いたかったことがあるんだけどさ…」


「何?」


「咲笑が、歌友会員って聞いて今すごく言いづらくなったんだけど……私も、歌友会員なんだよね」


 

 透のまさかの言葉に私は、思わず目を見開いた。

透はリュックから、財布を取り出し、歌友会員のカードを「ほらっ」と言いながら見せてきた。

会員カードに書かれた名前をみる。


「ルーレン」


 それは、最近歌友の動画ランキングに上位に見かけるようになった名前だった。

ちなみに歌友では、動画の週間ランキングとかが見られるようになっている。

これが結構喜びになったり、プレッシャーになったりする。

まあ、それはおいといて、ルーレンという名前は最近歌友のなかでも有名になってきてる。

まさか、それが透だとは思ってもみなかったが・・・。


「去年の冬あたりから始めたんだけど、言い出すタイミングが分からなくて・・・」


 と透は困った時の笑顔で言った。


「そーなんだ。私、ルーレンの歌聴いたことあったから驚いちゃった。何で気づかなかったんだろう?」


 そう、私はルーレンの歌を兄のすすめで聴いた。

その時は、すごい歌がうまいなー位にしか思わなかった。

でも、透の声に似ているとは思わなかった。


「私、歌ってるときの声と、普段の声だいぶ違うんだよね」


 そう言われて、なんとなく納得した。

それと同時に家に帰ったらいっぱい透の歌を聴こうと思った。


「それより、咲笑の歌友の会員名教えなさいよ」


 うおっっっっっ。来てしまった。

聞かれるとは思ってはいたが、なんか教えるの嫌だ。

だってさ、教えたら絶対歌友で聴くじゃん。

私は透の歌聴くけどさー。


「咲笑」


 早く言え。

と言わんばかりの目で言ってくる。

うー、仕方ないなー。


「のぞみ」


 小さい声で言った。


「のぞみ!?」


 と、透は興奮気味に大きな声で聞き返した。


「“のぞみ”って、あのyoriとマチに二股してる、あの“のぞみ”!?」


 と透は早口で言った。

が、ちょっと待って!!

今の日本語?


 あの、のぞみってどの“のぞみ”だよ!

絶対人違いだよね?

まぁ、歌友の名前ってかぶることあるし?

人違いね。

ちなみにyoriは、りーくんでマチは、歌友での兄の名前だ。

なんか、知ってる二人が二股かけられてたなんて、地味にショックだ。

二人ともいつも明るいけどなんか、悩んでたのかな?


「その“のぞみ”では、ないと思うけど…」


「そうだよね…。咲笑に彼氏がいないことはこの前分かったし。それに、咲笑は二股とかできる程器用じゃないよねー」


 と、透は安心したように言った。


 それから私はやっとちゃんとお昼ご飯にありつけた。

ちなみに今日のお弁当は大輝にぃが作ってくれたものだ。

流石大輝にぃ!

私の好みを分かっていらっしゃる。


 いつもの雰囲気でお昼ご飯を食べ、山を下りた。

その時には、安田ありさちゃんとは、登った時のような気まずい空気はなく、友達になれるような気がした。


 バスの中で、安心して寝ようとしていた時、隣に座っていた透が突然、私の片耳にイヤホンを突っ込んできた。

反対側のイヤホンを透は自分の耳に入れた。

流れ出したのは、「泣き虫」という曲だった。

これ、知ってる。

というか、これ兄の曲だ。

昔のアルバムを見てるときに私が泣いている写真ばかりあったので、それを見た兄がその頃のことを思い出して書いた詩と曲だった。

よく、聞いてみると、これ私の声…。


「これがさっき言ってた“のぞみ”なんだけど、どう?知ってる?」


 私は黙る。

なんか、ヤバい。

知ってるも何も、本人です。


「本当に綺麗な声だよね。yoriとマチが落とされちゃう訳も分からなくもないよね…。どうせスレンダーな美女なんだろ!羨ましいー。まったく、人生って不平等だよ!」


 と、透は若干怒り口調で言う。

ごめんなさい、スレンダーな美女じゃなくて。

そもそも、その噂自体がおかしい。

なんで、私がりーくんと、兄に二股かけるのよ!


「あのー、透。その噂ってどこからなの?」


 噂のもとを突き止めなくては!


「えー、結構有名な話よ?歌友会員限定の掲示板とかで」


 そんなものの存在すら知らなかった。


「でさ、咲笑の歌が検索しても出てこないんだけど?名前のぞみで合ってるんだよね?」


 私は頷くべきか悩む。

でも、頷くしかない。

てか、素直に言うしかないよね…。


「あのさ、これ………私な、の」


 イヤホンを指差しながら、言った。

ちなみにまだ「泣き虫」の歌が流れている。


透は「え?」と、言い勢いよく私の方を見たので透のつけていたイヤホンが取れた。

私の方のイヤホンもとれかけたのでそのまま外した。


「いや、まさかそんな噂がたっているとは知らず…」


 と、私が言うと、


「えーっとー、まさか咲笑が、この“のぞみ”なの?」


 次こそ頷いた。


「うそっ!?」


「残念ながら本当」


 透の口が開いてる。

間抜け面。


「じゃあ、二股…」


「してないから!」


 透が言い切る前に私は否定する。


「あとさ、yoriはこの前駅で紹介した兄の友達の同居人でマチは兄だからね、二股とかありえないの!」


「ちょっと待って!もしかして、二人も歌友会員なの?」



「さっき話したじゃん。私は兄のついでみたいな感じで歌友に入ったって…」


「そう!その話!さっき軽く流したけど、お兄さんも歌友会員なんだよね!で、お兄さんがマチなの?!」


「なんで、流したの?」


「いや、聞いていいのかな?って思って…。でも実はすごく気になってた!」


 透がすごく強く言うので、私は体を少し引いてしまう。


「兄は、マチって名前で歌友の活動してる」


「ほ、ほっ、本当!?」


 透が私の方にぐいっと身体を近づける。


「う、うん」


「私、マチさんの歌だいっすきなの!」


 と、透は嬉しそうに笑った。

そういえば、透の、ルーレンの歌う曲って大抵兄の曲だったなー。

それに「泣き虫」をさっきも私に聴かせてきたし。

あっ!さっきも“のぞみ”に羨ましいーって言ってたもんな。

すごく納得した。


「そうなんだ。マチがお兄さんかぁー」


 と、透はつぶやいた。

マチって名前が、マッチョから来ていることは言うべきじゃないかなーっと思った。


「もしかして、咲笑の家に住んでいる人全員歌友会員?」


 よく考えてみれば、確かにそうだ。

私は頷く。


「家で紹介した兄の友達の、大輝にぃは伊東って名前で、紹介できなかったもう一人の人は、ANって名前で活動してるよ」



 それにしても、りーくんの話は完全スルーってどうしてなのかな?


「りーくんのことは?驚かないの?」


「そりゃあ、歌友会員だったことには、驚いたけどさ、咲笑との二股?というか恋仲疑惑はなんとなく納得できたわ」


 なんで納得なのか、私には、理解できない。

ワケワカメ。


「ワケワカメって顔してるけど、自覚しなさい」


 透に心読まれた上に変なこと言われた。


「自覚って、何の自覚?」


「馬鹿ねー。というより、鈍感?咲笑の言う兄のお友達の涼さん?多分咲笑のこと…」


 そこまで言って透は言葉を止めた。

気になって、私が言うと、


「なに?」


「私が言うべきじゃないよね。ごめん、忘れて」


 と言われてしまった。

うー。

そこまで言ったなら最後まで言ってよーと不満げに透を見つめると、


「ごめんね」


 とまた言われてしまい、もう何にも言えなくなった。

それから、しばらくして、学校の最寄り駅に着いて、そこで解散となった。


 自覚って言葉が妙に頭に残っていて、駅から家までの間ずっと考えていたが、答えは見つからなかった。


 


 家に着くと、りーくんが玄関で


「おかえり」


 と出迎えてくれて、今日は昔のことをいっぱい思い出して疲れていたから、嬉しくて


「ただいまー」


 と言いながら抱きついてしまった。



 りーくんは普通に抱き留めて、ほっぺにキスしてくれた。

それがすごく安心できた。


 その後帰って来た陸さんに、


「何してるの!?離れて!離れて!」


 と言われ、りーくんから引き剥がされた。


「ちゃんと自覚持って!咲笑ちゃんは、女の子なんだから!」


 よく陸さんに言われる言葉。


陸さんと、透の言う「自覚」はどう違うのか私にはよく分からなかった。




自覚の意味を理解できていない咲笑(笑)


二人の言う自覚はほぼ同義じゃないかな?


誤字訂正しました。

ご指摘ありがとうごさいます!

これからもじゃんじゃん教えてください(笑)

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