表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/57

19 誤解ですよねーって話

 教室に着き、ドアを開くと杉谷先生が教室を出ようとしている所だった。

先生と目が合う。

教室の後ろのドアから入っていくと、


「おはよー」


 と、クラスメイトが挨拶してくれ、私も「おはよ」と返しながら、杉谷先生のもとに行く。


「坂田!遅刻だぞ」


 と、杉谷先生が言った。


「すいません」


 素直に謝っておく。


「まったく、寝坊か?次から気をつけろよ」


 と、言いながら軽くチョップされた。

注意しながらもやはり、杉谷先生は優しい。


「はーい!」


「よろしい」


 と、堅苦しい感じでわざと言って笑いながら杉谷先生は教室から出て行った。

私も、席につく。

前の席の透が、振り返り言った。


「遅刻なんて、珍しいじゃん」


「ちょっとねー」


 と、話すと長くなりそうなのでそう言っとく。

透は、「ふーん」と言って前を向いてしまう。

心なしか少し不機嫌そうだ。

なんかあったのかな?と思い、透に話し掛けようとしたところで、1時間目の授業の先生が来てしまい、話し掛けられなかった。



 それからなんとなく、とおるとは気まずいままになってしまった。

最後の授業が化学で、化学教室にいく時もお互い何もしゃべらなかった。

どうしよう?

というか、とおる、どうしたんだろう?

私、何かしちゃったのかな?

心あたりを探っているうちに授業が終わってしまった。

でも、心あたりが多すぎて分からない。

本当にどうしよう?

考えているうちに次々と、みんな帰って行ってしまう。

とおると目があい、なんとなく隣に並んで歩き出したが、呼びとめられる。


「坂田さん、少し残ってもらってもいいですか?」


 勿論これを言ったのは、楠木先生だ。

いつものパターンだが、今回は勘弁して欲しい。

今はとにかくとおると話したいのだ。

私は無意識のうちにとおるを見ていたようで、


「行ってきなよ」


 と言ってくれた。

行きたくないが、とおるがそう言ってくれたので、行かないわけにもいかなくて、


「うん…」


 と、言い、しぶしぶ楠木先生のもとへと行った。

楠木先生が準備室に入って行ったので、私も後に続き準備室へ入る。

窓とカーテンが全開なため、電気のついていない室内がずいぶんと明るい。

むしろ眩しいくらいだ。

入ってドアが閉まった瞬間、楠木先生は言った。


「今朝の男は?」


「けさのおとこ?」


 と、楠木先生の言っていることが分からず聞き返す。

すると、先生は不機嫌そうに、


「今日の朝バイクで登校してたでしょう?」


 と言った。

あぁ!なるほど、今朝の男ってことね!

大輝にぃのことか。

どうしてそんなことを聞くのだろう。


「はい。そうですが…」


 なにか?と言い終わる前に、


「あの男は誰?」


 顔は笑顔。

でも、いつもより、少し低い声。

その上敬語もない。

背中がぞわっとした。

なんだか、とても逃げなきゃいけないような気持ちになった。

私は、風で揺れるカーテンをぼーと見つめながら、

つい、黙ってしまう。

楠木先生は、私のことを見ているだけでそれから何も言わない。

息苦しい。

耐えきれず私は言った。


「あ、兄の友人です!」


 すると、途端に楠木先生の周りの空気が柔らかくなった気がした。

そのことに安心しながら、そろそろホームルームの時間なのだが、と思い時計を見た。

やばい、鐘が鳴る!

この前のようになるのは嫌だ! と、思い、


「先生、そろそろ時間が…」


 と、私が恐る恐る言うと、先生は、上機嫌で、


「そうですね、長く引き止めてすいませんでした。もういいですよ」


 と言ってくれた。

よっしゃ!

私はドアを開くために、ドアに手をかけた。


「咲笑さん」


 なぜか呼び止められた。

振り返ると、ちょうど逆光で先生の顔は見えない。


「好きな人ができたら、ちゃんと報告してくださいね」


 報告とは、おかしな言い方だな。

それに、なんで先生に?

私の感情が表に出ていたのか、先生は少し笑って、


「恋バナしましょう?」


 と言った。

「女子か!」とか言うツッコミをするべきなのだろうか…。

少し悩んだが、時間がないこともあり、スルーすることにした。


「分かりました。恋バナしましょうね」


 と、私はわざと語尾にハートがつきそうな勢いで言い、「失礼しました」と言い準備室を出た。




 ホームルームにはギリギリ間に合った。

が、透とは、まだ気まずいままだ。

どうしよう。

今日は、陸さんもバイトがないから一緒に帰れない。

透に、久々に一緒に帰ろうと誘ってみようかな…と思っていた時、透が突然振り返り言った。


「ねー、ちょっと話したいことがあるんだけど、今日空いてる?」


 と、透が言ってきた。

驚いたが、私も透と、話そうと思っていたので頷いた。

それから前を向いてしまったけど。

ホームルームがやっと終わり、やっと、透と話せる!と思った矢先、


「学級委員!ちょっと頼みたいことがあるから来てくれ」


 と、杉谷先生からお声がかかる。

私が透の方を見ると、透と目が合った。


「待ってる」


 と、とおるが言ったので、


「ありがとう」


 と言い、杉谷先生の元へ行く。

もう1人の学級委員の子もいた。


「来週の校外学習のしおり作りを手伝って欲しいのだが」 


 と言われ、仕方なく、「はーい」と返事をした。

そして、職員室に行き、しおりの紙達を教室に運び、たくさんある紙をホチキスで止めるという地味な作業をすることになった。

みんな帰ってしまったようで、教室には私と、もう、1人の学級委員ー安田ありさちゃんと2人きりだ。

お互い話したこともなく、同じクラスになったのも初めてで、話すこともなく無言で作業を進めていく。

2人とも、もくもくと作業を進めたため、終わりが見えてきた。


「ねえ」


 そこで、初めて話しかけられた。


「はい?」


 突然話しかけられたから、声が裏返ったかもしれない。

しかし、安田ありさちゃんは、そこで言葉を止めてしまった。

沈黙。

私はその沈黙に耐えきれず、何か話そうと声を、出そうとしたとき、


「れい。あなた、れいだよね?」


 と、安田ありさちゃんは、言った。

すごく驚いた。

どうしてなの?

なんで、あなたがれいを知っているの?


「私、れいの歌が好きなの!れいが歌友のオーディションを受けた日ライブハウスにいたの!」


 だんだん安田ありさちゃんの声が大きくなる。

しかし、私は自分の顔が真っ青になっていくのを感じた。

耳なりがする。頭がぐわんぐわんしてきた。

今すぐにでもここから逃げ出したかった。

でも、椅子から立ち上がることさえできなさそうだ。

もう考えることも嫌だった。


「れい?」


 心配そうな安田ありさちゃんの声。

でも、耳がそれを拒絶する。

その名前を呼ばないで。


「さ…!…え!咲笑!」


 突然聞こえてきた声。


「咲笑!」


 自分の名前が聞こえ安心して顔を上げると、透がいた。


「ごめん、安田さん。咲笑、具合悪いみたいだから、連れて帰ってもいいかな?もし作業終わらないなら先生にも話してくるから」


 と、透が安田さんに言った。


「ううん。もうすぐ終わるから大丈夫。坂田さん大丈夫?お大事に」


 その声が聞こえてから、私は


「うん、ありがとう。ごめんね」


 と声が震えないように言ってやっと透の手をかりて立ち上がることができた。

透は、何も言わず私の鞄を持ってくれて、腕を掴ませてくれていた。






 学校を出た所で、


「もう大丈夫。ありがとう」


 と、透の腕を離す。

しばらく無言で2人で、歩き、駅の近くのコンビニを通ったあたりで、


「ばか咲笑」


 と、突然透に言われた。


「なんで?」


「なんでもくそもないわよ!ばか咲笑!なんで彼氏ができたこと教えてくれないのよ!」


 ばか咲笑とは心外な!

ていうか、彼氏?


「彼氏なんてできてないよ?」


「だって、咲笑の彼氏と電話したもん!」


 …?

なんだって!?

誰なんだ、それは?


「しらばっくれたって無駄なんだから!「咲笑の彼氏です」って言ったのを聞いたんだからね」


 本当に心あたりがない。

むしろ、私の周りには男のひとなんていないよね?

だって女子校だもん。

多分透は誤解している。

ゆっくり説明するために、どこか、カフェでも入ろうとしたが、透に、「あんた具合悪そうだからだめ。明日ちゃんと説明してもらう」と言われてしまった。

そして、引っ越して自分の家が学校に近くなったことを思い出し、透に自分の家に来ないか?と誘ってみたところ、また怒られた。


「引っ越したなんて聞いてない!!」


 だそうだ。

言うのを忘れていただけなのに…そんなに大事なことなのだろうか?


「とりあえず行くよ!」


 と、何故か透が言い、透と一緒に、家に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ