13 私は、激戦を勝ち抜く勇者にはなれなかったって話
学校のターンです。
楽しみな日曜日の前に憂鬱な学校の時間だ。
今はロングホームルームの時間だ。
「じゃあ、ちゃっちゃか決めるぞ」
と、杉谷先生は黒板に文字を書き始めた。
学級委員
風紀委員
美化委員
文化祭委員
放送委員
図書委員
国語係
数学係
英語係
化学係
などなどが、黒板に書かれていく。
「希望する委員もしくは係で、手を挙げてくれ」
と、先生がどんどん黒板の文字を読み上げていく。
そう、員・係決めの真っ最中だ。
予想通り、化学係(楠木先生目当て)と国語係(杉谷先生目当て)に人数が集中する。
私は、楠木先生との約束通り化学係に手を挙げました。
女子のみなさんの激しい戦い(じゃんけん)に、見事勝ち抜く、ということもなく、一回戦のじゃんけんで負け、少しほっとしていた。
だって運なんだもんね!
仕方ないよね。
何にしようかなと、黒板を見てると先生と目があった。
しかし、なぜだか逸らされる。
日本人って目を合わせるのが苦手らしいからね。
無難に図書委員にでもなろうかなっと思っていたら、化学係の激戦を勝ち抜いた勇者達の名前が黒板に書かれていく。
他の委員や係も、楠木先生と杉谷先生に興味のない子で埋められていた。
あー、選択肢が少なくなってきた。
てか、学級委員の欄が空いてるって…。
学級委員なんて、最初に決めるものでしょ。
っと思っていたら、
「白熱しているところ悪いが、とりあえず学級委員決めようか」
と、杉谷先生が言った。
ちなみに、白熱しているのは、杉谷先生目当ての国語係のじゃんけんだ。
学級委員…杉谷先生ファンはなりたい人がいるかもしれないが、それよりも面倒な作業が多いのだ。
文化祭の時だって、文化祭委員並みに忙しいし…だから、学級委員は人気がない。
だから、先生の言葉でみんな一斉に視線を下げた。
ちなみに、私も。
ここで目があったら終わりなのだ。
「だれか、立候補いるかー?推薦でもいいぞ」
杉谷先生がそう言っても顔を上げる生徒はいない。
「仕方ないな。さっき目があったから、坂田。お前、やらないか?」
いきなり指名されたので驚いた。
さっきって…先生、目そらしたじゃないですか!
やらないか?って言いながらハテナマークはあってないようなものじゃないですか!
口調的には、「やるよな?」って感じですよね。
私の勘違いですか?いいえ、違いますよ!
「あのー」
それでも断ろうと、声を出すが周りの生徒が、私の方をみる。
断りずらい。
「坂田」
呼ばれ、先生の方をみる。
すごく見られてる。
ダメだ。
断れない状況になってる。
「やります」
そう言うしかなかった。
選択肢なんてありませんでしたね。
「じゃー、もう1人」
と、杉谷先生はクラスを見渡す。
「はい。私、やります」
と、一番前に座っていた女の子が手を上げた。
「そうか、ありがとうな」
とまあ、2人目は簡単に決まった。
女の子の名前は、安田ありさという。
おさげ頭でメガネをかけている。
真面目そうな子だ。
その後の係、委員はすぐに決まっていった。
早速学級委員としての初仕事の号令をして、ロングホームルームが終わった。
休み時間になり、透が私のところに来た。
「咲笑が学級委員って…キャラじゃないね」
透は、笑いながら言った。
私だってそう思う。
「なら、反対してよ!」
「いやよ。もし反対して、私に回ってきたら嫌だもん」
透は当たり前のように言う。
なんだよ、慰めに来てくれたのかと思ったのにからかいに来たのかよ。
「まあ、頑張ってよ」
と透が言って私に抱きついた。
「っわあ」
私は驚いて声を上げてしまう。
「いきなり抱きつかないでー、予告してからしてー」
私は透に文句を言う。
でも嬉しいのであまり強くは言わない。
「はいはい。がんばれのハグなんだから、ちゃんと受け取りなさい」
透に言われたので、ちょっとだけ頑張れる気がしてきた。
やっぱり透は優しいのだ。
「でさ、あんた、もう1人の学級委員と話したことあるの?」
と、透は安田さんの方を見ながら言った。
「ないけど…」
「それならー」
と、透は私を立たせ、背中を押した。
「話してきなさい!」
と。
いきなり背中を押され、倒れそうになるが、なんとか踏ん張る。
安田さんの席に向かう。
安田さんは読書をしていた。
本当に優等生って感じだ。
「安田さん。私、坂田咲笑。一年間学級委員、一緒に頑張ろうね」
突然過ぎた。
安田さんは驚いた顔で私の方を見ている。
「うん。よろしく」
とだけ安田さんは言った。
特に話すこともなく、私は自分の席に戻ったが次は化学だと気付き、背中に変な汗をかきはじめた。
いきたくない。
化学室怖いよー。
そんなことを言っても授業をサボれるはずがなく、透に連れられ化学室に行った。
化学の授業が始まり、楠木先生は出席をとってから思い出したかのように聞いた。
「今日、ロングホームルームだったそうですね。どなたが、化学係になったのでしょう?」
楠木先生と目があう。
うぅ…
2人の生徒が手を挙げる。
もちろん私は挙げていない。
怖くて、私は先生から、目をそらせない。
一瞬だけ、目を細めてからいつもの表情に戻すと、
「そうですか。一年間宜しくお願いしますね。では、授業を始めます」
と先生は黒板の方を向いた。
はぁー良かった。
あっち向いてくれて。
と、安心したのも束の間、先生はまた振り返ると、
「あっ、坂田さん。春休みの課題のことでちょっと聞きたいことがあるので、授業の後、私のところに来てください」
と言った。
「はい」
と小さな声で答えるしかなかった。
授業は当然のごとく頭に入ってこず、授業が終わらないことだけを願っていたが、当然のごとく、終わりのチャイムがなり、私は、誰もいなくなった化学室で2人になった。
「先生、なんでしょうか?」
私は心臓をドキドキさせながら聞いた。
ちなみにこのドキドキはお化け屋敷に入る前のドキドキと似た感じだ。
「咲笑さん。とりあえず準備室に行きましょうか」
準備室というので、本当に課題のことなんだろうか?
私と、楠木先生は化学室に入っていく。
ーパタン
と、扉がしまった音がした。




