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誰か勝手に魔王、倒してくんないかな  作者: 山彦
第一幕 少年時代編
9/38

くぅ~、くぅ~、お腹が空きました

「お兄ちゃん、高い高いして~~」

「僕も~、兄ちゃー。かまってー」



 記憶を取り戻してからはや五年。

 俺は十歳になり、六歳のときに、双子の弟と妹が同時に増えた。

 我が家は慎ましくも賑やかな暮らしをしていた。


 農奴としては極めて珍しいことに、俺は農作業の合間に父さんや母さんに文字を習い、今では文字が読めるし、簡単な文章なら書くことができるようになった。


 どうも、詳しくは教えてくれないが、母さんが元はそこそこいい所の生まれらしい。そして、読み書きや、礼儀作法などを子供たちに教えてくれているのだ。父も村を飛び出した後に傭兵家業時代に読み書きは覚えていたらしく、母と一緒に教えてくれる。


 ……まあ、礼儀作法に関しては偶に子供たちと一緒になって、父さんは母さんからお叱りを受けたりすることもあるが。 


 まあ、そういうふうに、弟や妹の子守をしながら、楽しくやっていたわけなのだが、

 ……正直、俺はまだこの時代を舐めていたらしい。



「姉さん、飢饉です」

「おめぇーに姉はいねーです」

(――ジャンに登っている)「「わーい。高い、高い!!」」



 うむ、通じなかったか。古いがそこそこ有名なドラマネタだったのだが……。


 

 まあ、ともかく飢饉である。

 凶作が去年に続き二度目をむかえてしまい、村の空気が悪いこと悪いこと。 


 都市部と違い農村なわけだから、凶作であってもすぐには命にかかわるということはない。馬鹿な支配者の失敗で食料が確保できなかったり、ごうつくばりな商人が食料を買い占めて物価を上げて民衆相手にあこぎな商売をしたりもしない。 

 

 生活が苦しくても蓄えさえあれば生きていける。つまり、実際に命の危機になるまでそれなりの猶予があるのだ。なので、その間に人々は何らかの飢餓対策をしなければならないのだが……。



 まあ、真っ先に思い浮かぶのが領主からの免税なのだが……。


 ――不作のため税が納められません。

 ――パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない。


 というやり取りがあったかどうかは知らないが、本当にまったく余裕がない量しか残らないLVの免税しかしてくれない。


 こちらとしては、免税の大判振る舞いをして欲しいところなのだが、それでは国家財政が成り立たなくなる。農村から食料をまきあげないと、都市部で餓死がおこるし、他の、ここよりさらにひどい飢饉に襲われている地域に食料を運び込まなければならないので、多少余裕がある領主は国から追加の税が発生しているのだ。


 まあ、もっとも、食料の輸送はピンハネが横行しているだろうし、領主達は上でいったことを建前に自分が贅沢できなくなるからというのが本音だろうが……。



 免税が大して足しにならないとなると、農奴としては身を切るしかない。この場合、一番手っ取り早く、一般的なのが、口減らしである。ようするに、役に立たない子供や老人を殺すなり奴隷商人に売るなりするのだ。


 特にうちは毛色の珍しい子供がいるため、村の他の家に買い取りにきた奴隷商人の鬼畜野郎がうちの弟、妹を買い取ろうと猫なで声で勧誘にきやがったりした。


 ええ、もちろん叩き返してやりましたよ。


 父さんが傭兵時代の剣を持ち出して威嚇したので、奴隷商人の鬼畜野郎は命からがら逃げていきました。



 ……父さん。

 


 いままでも尊敬していましたが、今後は更に尊敬させていただきます!


 むしろ崇めさせてく… ――すまないセシルにユーグ、兄ちゃんは大事な回想中で……あ~~、わかった、わかった。



 ――じゃあとりあえず



「ほーら、大車輪だ!!」

「「「きゃっきゃっきゃ!!」」


 俺の腕に掴まりながら回転させられた事ではしゃぐ妹のセシルと弟のユーグ。ユーグは普段病弱なのだが、今日は調子が良いらしい。

 セシルは金髪を、ユーグは白い肌を母から受け継いでいる。セシルはかなりお転婆、ユーグは少々病弱だが、子供心的には遊びたいらしく調子がいい日はセシルと一緒になって走り待っている。だが、あまり無理をすると翌日寝込むのでほどほどにさせないとな。肌の色素が薄いので日差しに弱いし。


 それにしても、前世も含めて初めて兄弟ができてわかったことがある。



「うちの弟と妹はベラボウにかわいいにきまっとるだろうが!!」

「ありもしないマイクを持つな、小指を立てるなです」

「かわいい? かわいい?」

「お兄ちゃん、私ら愛でろ~~!」



 そう叫びながら俺に突進してくる天使達。なにこの可愛い生き物達!!

 俺の精神はもう三十路過ぎな為、兄弟というより息子、娘な感じである。

 両親が畑仕事している時は主に俺が赤ん坊の頃からお守りをしていたから余計に。


 ああ、神よ。これが父性本能というものなのですね!!



 ――ぐぅぅぅ~~~



 ――兄ちゃ、お腹空いたという感じでお腹を押さえるユーグ。まったくこんな幼子にも苦労させるなんて嫌な時代だ。そう思いながら袋の中の椎の実(どんぐりの仲間、生でも食べられる)を二人に渡す。


「兄ちゃんは?」

「子供が気にすることじゃない。しっかり食べるんだよ」


 まあ、俺も子供だというのは突っ込まない方向で。少なくとも俺は病気にならない体質なので、栄養失調にはなっても、体力の低下が元での病気の発病はないからな。


 この時代、さらにいえば農奴という経済・身分状況で幼子の病気は死に繋がる。父さんは俺達を売り払うという選択はとらないが、それはもちろん貧困をどうにかすることにはつながらない。むしろより厳しい。母さんは、お腹の中に四人目がいるようなので、あまり動かせたくはない。



 俺がどうにかしなくては……。




 前回は前々回に続き、評価ポイントをいただきありがとうございます。

おかげで、総合評価100まで達するのに七話近くかかったのに、

前回と前々回のおかげでもう200に届きそうな勢いですw

そして、感想ありがとうございます。おかげでブーストできました!


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