家族って、本当にいいものですねぇ 続々
アシルは村の憎まれ役である粉挽きの子で、水車の管理もあり、うちと同じく村の中心部とは離れた場所に住んでいる。このように似たような境遇である俺とアシルが友達となったのは必然といえるだろう。
もっとも、経済的には粉引きは村の中では裕福だ。
粉引きは、粉を引くさい農民から集めた小麦の目方をごまかしているに違いないと思われているので村から嫌われる職業だ。
だが旨味もある。まず、粉挽きは土地の領主から任命されるものであるので、村の意思決定、村長による裁判権の支配を受けない。要するに領主の下級役人扱いで、村長の横暴に晒されない地位にいるのだ。
さらに、水車用地を経営する権利も与えられており、いくらかの耕作地の運営の他に、水車を回す河川の使用権をもっている。つまり、なんと、粉挽きは川で魚を獲ることができるのだ!!
当たり前だと思った人は、中世という世界を舐めている。どうもここはヨーロッパ型の中世世界のようで、領主権という、数々の鬼畜な法律がある。
賦役;自分の畑での労働とは別に、領主の所有している畑での労働する義務
貢納;農作物の収穫の六割を収め、それと別に特産品を一定量収める義務。
結婚税;花嫁の処女を奪うための税。
なお、払えなかった時は、領主が責任を持って美味しくい(ry
人頭税・新頭税・死亡税;そこで生活するだけで住民税が掛かります。
子供が生まれたら税金が掛かります。家族が死んだらもちろん税金が(ry
そして、森に入るのや川を使うことにも前もって税を納めなければならないのである。
ええぇい! 中世の領主は化け物か!! (もちろん鬼畜的な意味で) これでもまだまだ地球の中世ヨーロッパに比べればましだというのだからとんでもない。
もうやめて! 中世の領民のライフはもう0よ!!
違うだろ! ファンタジー世界のイメージってこういうのじゃないだろ!!
ぜぇっ、はぁ、ぜぇ、はぁ……。
と、ともかく、話が脱線したので戻すと粉挽きは他の農民たちとは比べものにならないほどに裕福なのだ。
そして、当の粉挽きの子であるアシルは得意げな顔をしながらこっちらの方にやって来た。
「よう、ジャン。相変わらず不景気そうな顔をしてるな」
「よう、アシル。お前こそ相変わらずしまらない三枚目な顔をしているな」
「何を言う。将来の村一番の美男子にむかって。お前こそ三枚目じゃないか」
「さあね。正直俺は二枚目とか三枚目とかいう基準の容姿じゃないと思うがね」
俺はハーフであるので、その容姿はエキゾチックと言われても美麗であるかは判断がつかないだろう。目が青い以外に骨格も微妙に違うしな。要するに、その違和感を好むか好まないかだろう。まあ、前世の故郷である日本のようにハーフを賛美する者もいるかもしれんが。
そんな風に馬鹿話をしながら俺たちは村のはずれにある川に来ていた。この場所ならまわりの木が邪魔して他の人間の目につかない。
「さーて、じゃんじゃん釣るぞー!!」
「……おい。いいのか、川で釣りなんかしていたら怒られるぞ」
と何やら、いまさらながらに不安を述べるアシル君。
はははっは、似合わないぞ、こいつぅ。
もうすでに、木の枝と蔓から即席の釣道具を作ってしまっているというのに往生際が悪い奴である。
「大丈夫、大丈夫。あくまでここで作業していたのは君だから。
俺はその成果の何割かをもらうという契約で手伝っているにすぎないのですよ」
ええ、ただの村人が釣りしちゃうと罰金にかせらるからね!
「しかも、釣るのは魚じゃなくてザリガニ! たまたま大量に川沿いに出没していても不思議じゃないね!!」
「ふむ、なるほど!! 俺たちはこれから川からザリガニを釣り上げようとしていると思っていたが、思い違いだったようだな!!」
「俺たちは何も領主様の権利を侵害しなかった、釣り上げなかった
ただ、川沿いにあがっていたザリガニを見つけて、勿体ないから持ち帰った!!」
「……分け前は7:3でいいよな」
「……当然だな。俺はただの雇われだからな」
――ガシィ!!
そこには、力強く手を握り合い、不敵に笑う男たちの姿があった。まあ、どう見ても悪戯しようとしている悪餓鬼にしか見えないのですが!!
いやー、頭が大人になると小賢しいこと考えて困るね。大人って汚い。まあやっていることは悪餓鬼LVだけどな。幸い俺らの家は村から外れているのでばれないように持って帰ろう。
さーて、アニスに他の大人に見つからないよう見張らせて、俺たちは夕食を集めるとしますか。今一番大事なのは栄養を確保することだよね。ザリガニはフランスだと高級食材だというし味もいいだろう。
今日は腹一杯食うぞ~~~!!!!
森で薪、川で魚を取るだけで税金ってどれだけ鬼畜なのやら。
この時代の西洋はほんまに鬼やで!! 魔女狩りもあるしね!!
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