家族って、本当にいいものですねぇ
――おおお。
――”父”よ、”母”よ。
――”俺”のせいで、貴方たちのジャンを歪めてしまったことを許して欲しい。
――だが、理解して欲しい。俺はジャンであり、ジャンが俺なのだ。
決して、妖精の取替えっ子ではないのだ。
俺とアニスは、あれからもうしばらく話をした後、家に帰った。
家の中では母が父の衣服を繕っていた。入ってきた俺に気が付くと、ゆっくりと椅子から降りて近づいてくる。
「あら、お帰りジャン。あまり遠くにいっちゃ駄目よ?」
めっ、という感じで母は、俺の顔を高さまで視線を下げ、
正面から柔らかな微笑で俺を窘めた。
そして、いつまでも中に入らない俺に対して、首を傾げる。
「……ジャン、どうしたの? どこか痛いの? 泣きそうだよ?」
だが、俺は、なぜ泣いているか話す事はできない。そして言うべきでもない。
これは……今抱いているこの思いは、あくまで、他の世界で暮らした"俺"という存在の思いであり、この世界の、ジャンの思いではないはずだ。
だが、今だけは、許して欲しい。
前世、もはや記憶の片隅に消えていった”母”という存在を前に俺は涙した。
「記憶が戻っても甘えん坊です」
横からアニスのからかう様な声が聞こえてくる。恥ずかしく思うのと同時に、
やはり、世界が変わっても俺は俺だというのを実感する。
母に抱きとめられ、心臓の鼓動と人の温もりで、俺の心の傷をとかしてくれた……。
――その日、俺は声をあげて泣いた。
俺が生まれたのは、とある農奴の一家だった。
父は元々この村出身の元傭兵で、体格のよかった父は子供の頃に、この村を飛び出し数年後には、とある街を中心に傭兵兼冒険者家業についていたらしい。
それを辞める切欠は、ある奴隷商人の護衛の仕事を引き受けた事に始まる。当時、母はその奴隷商人に奴隷として買われ王都に運ばれようとしていた。
母は北方の国の生まれだった。その国に住む人種は、地球でいう白色人種、ようするに金髪碧眼であり、中東系の容姿が一般的なこの国の人間とは毛筋が違うのだ。要するに出す所に出せば高く売れるというわけだ。
その輸送の護衛の仕事の際に、会った母に一目惚れした父は、隙を見て母を攫い、生まれ故郷に逃走したのだった。そして、兼ねてから貯蓄していた資金で畑と家を買い、現在に至ると。
いやはや、あの無口な父の行動とは思えんね。因みに、この話を母に聞いた時、母の生暖かい視線に耐えかねた父は大いに目を逸らし、俺は母と二人で笑いあったものだ。
そういう経緯からか、俺の家は村の中心部から離れた場所に存在している。
本来は、村の周囲には防護壁や柵が設けられ、村民は、共同耕作がし易いように農民の住居は、教会や墓地、あるいは領主の屋敷などの傍に密集しているものだ。そうして一箇所に集中することで外的から防衛し易くしようと図るものなのである。これが一般的な普通の村配置なのだが、残念ながら我が家は蚊帳の外である。
閉鎖的な村社会において、村を飛び出して傭兵になった父と、なにより異国の血を引き、異なる容貌を持つ母。うちの家族は村八分とまでは言わないまでも、あきらかに異分子なのだろう。
かくいう、俺自身も、村のお子様グループから目の仇にされているようだからな。
流石は子供、異質なものに対する残酷なまでの嗜虐性はこの世界でも相変わらずである。ましてや、中世という時代ならばなにをいわんや。
まあ、やられっぱなしじゃないがな!
特に、俺と統合する前のジャン君は、母親と母譲りの碧眼を馬鹿にされると、断固としてやり返したもんである。
うん、この世界の俺、GJ!!
あ、言い忘れてたが、俺の容姿は、黒髪碧眼、そして肌は褐色である。そして、肩ほどまで伸ばしている黒髪を一纏めに紐で結んでいる。
まあ、栄養不足のせいで、現代人が見ると、肌も髪もパサついて見えるだろうけどな。
、
「何を、あらぬ方向を見て話しているのですか」
「いや、なんとなく、神さんが見てそうな気がしてな」
まあ、お約束というやつで。
それに、あの神さんなら、暇つぶしに俺たちを観察してても驚かんね。
さてさて、貴族とかの生まれならともかく、流石に一般人では、5歳では、何ができるっていうわけでもない。とりあえず、自分のスキルの確認といきますか。
「あ、言っときますけれども、”使い魔作成”は魔法系列ですので、
魔力0のFでは使えませんよ」
…………何……だと…………?
あけましておめでとうございます。
今年度も、本作品をどうぞよろしくお願いいたします。
※お気に入り登録や、感想、評価ポイントなどを頂ければ、作者が喜びますw