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誰か勝手に魔王、倒してくんないかな  作者: 山彦
第一幕 少年時代編
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覚醒、異世界にて (上)

 

 20余年という青年の生きた、膨大な時間


 異なる世界で過ごされた、一人の人間のもうひとつの人生


 それは、一つの人生を終えた、青年の喜び、嘆き、悲しみ。




 「■■■■■■■■ーーー!」




 それは、元より、今、苦痛に喘ぐ少年の中にあった。だがしかし、人間一人の記憶を赤子の身で受け止められるはずもない。そのため、記憶は今まで奥深くで眠っていたのだ、受け入れることができる齢になるまで。




 「■■■■■■■■ーーー!」




 二つの記憶が、自我が交じり合う……

 それは違う色の絵の具が混ざり、まったく別の色になるのと似ていた。


 異なる世界から来た『俺』と、この世界にいるジャンから、新たに、異世界から転生されたジャンが生まれようとしている。  


 だがしかし、これが『俺』とジャンの死と、定義はされない。何故なら、ジャンの意識はあくまで、『俺』と同じだったのだから。


 記憶喪失の人間が数年後に記憶を取り戻したとして、それは新たな人格の誕生といえるだろうか?


 異なる異世界『地球』から転生した『俺』は、同時に農奴の少年ジャンでもあるのだ。



 


 「くはぁ、はぁはぁはぁ………ア、アニス、お前がチュートリアルの奴だったんだな………」





 ようやく、頭痛がひき、考えることができるようになり、目の前にいる羽の生えた妖精、所謂、ピクシー的な者にたいして話しかけた。


 目の前でこちらに向けて対面している形でホバーリングしている20cmほどの妖精。(分かり易い例えだと、ピーターパンのティンカーベル、ゼルダの回復してくれる妖精)

 これは、こちらの世界についての基本的な知識を与えるのと同時に、自立できる年齢まで保護するよう作られた”チュートリアル・ピクシー(以降、TP)である。

 

 転生する前に集められた奴らは、俺の目算で大体100人はいた。俺を含めても101人。そして、転生先はランダムだというのだから、転生先は人口の大多数を占める第一次産業を支えるお百姓さん、つまり農奴である。


 ぶっちゃけ、中世の文化レベルで、しかも、農奴として、育てられるとなったら世界に対して何等影響を与えないまま、何割も成人せずに脱落するはめになる。


 なので、この鮭の稚魚状態を改善するべくアニス達が俺たちの元に派遣されたのであった。なお、俺のも、他の奴のところの”TP”もコピーされた同名の同一固体である。、



「この五年、何度もそう申告していたのですよ。

 でも、認識できたということは、記憶を取り戻したわけですね。」



 まあ、たしかにそんなこと言われていた記憶はあるけどね。でも、記憶が戻る前だと、ただの、何故か俺にしか見えない妖精さんでしかないわけなのですよ。 俺にしか見えない妖精! どう見ても電波です。ありがとうございました。おかげで、俺は村では”見える”奴扱いなんだよ……。



「ぐがぁ、ガッデム!!

 何たることだ。こうなると分かっていれば、見えないフリぐらいしたものを!!」

「まあ、狭い村なわけですし、結果は変わらなかったと思うのですよ。

 ある意味、周りの目を気にしなくてよいので私としてはやりやすいのですよ♪」

「人事だと思って!!」

「100%人事なのですよ~~♪」



 あああ、そうだな。お前はそういう奴だったよ! 今、記憶が戻り、前世の自分と統合したばかりだというのに、この妖精に対して新鮮さは微塵もない。ちょっと不思議。まあ、よく考えれば当然なんだけどな。



「……何も違和感を感じないことに違和感を感じるな。」

「赤ちゃんから始めなくていいんだからいいじゃないですか。

 言葉もネイティブで話せますし、何より、常識、倫理観もこの世界のジャンに影響され、かなりこちらの世界よりに変化しているはずです。」  

「それはたしかに、重畳だがな」



 まあたしかに、現代人感覚が残っていちゃこの先の暮らしは厳しいわな。おかげで、この先の暮らしについていけるかに関しては特に不安はないわ。将来に関しては不安はあるけど。



「因みに、”ジャン”という名前は、ここでも、地球でも有り触れた名前なのですよ。

 日本風に言えば、太郎みた(ry」


「黙れ。」


「苗字をつけるならジャン=リュック・ピカードとか、ジャン・ロック・ラルティーグとか、ジャン・ロベール・ラップがお勧めなのですよ☆」

「俺は、無限に広がる大宇宙に航海に行く気も、ふしぎの海で冒険する気も、またまた、宇宙会戦で戦死する気もない!!」

「まあ、念のため、ちゃんと全部覚えているか確認するのですよ~~、

 覚えてますか~?」


 誤魔化した!! 普通にスルーしやがったよ、この妖精!!

 ああ、分かっているさ、平凡な名前だという事は。こちらの常識を持ってるからな。

 ……分かるのが悲しい。



「覚えてるよ。ようするに、通常はミュウが出るはずなのに、ミュウⅡが生まれてしまって、しかも制限時間ありなんだよな。」

「時間経過で自動LVUP付きで、カンストしたら世界破裂につき滅亡なのですよ~。」



 今はまだ魔王は誕生してないが、魔王という存在はもう発生しているらしい。バースディ予想日は50年+-10ほど。この誤差は運命を持っていない俺たち転生者の影響が計算できないからだ。

 そして、現時点では、この世界の人間では魔王を滅ぼせないと観測されている。一度観測されてしまった以上、運命は覆らない。俺たちがいなければな。因みに魔王を手にかけるのは、別にこの世界の存在でもかまわないらしい。俺たちが手引きして、こちらの人間が魔王を倒せるよう運命を変えてもいいのだ。


 まあ、これが、普通の所謂、チート系転生者だったのなら、俺としても嬉しかったのだが……。



 「オールFか……」



 アニスに調べてもらった俺のステータスは、どこに出しても恥ずかしくない、この世界の人間の初期値でございました。


ハハハッ、チート爆発しろ!!



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