故郷、遠くにありて思うもの
突然ですが可愛いにゃんこからの為にゃる格言コ~ナ~~♪
かつて偉い人は言いました。
努力した者が全て報われるとは限らん。
しかし、成功した者は皆すべからく努力している。
まったくもって何も言い返すことのない完璧な言葉です、よく考えると実在の人物じゃなかったような気もしますが。まあそれはともかく、上記の言葉に異論はないのですが、スタート地点に立てない人間、ようするに努力する、しない、以前に努力できる場所に立てない者達はどうすればいいのでしょうか。現状、私のご主人さまにとっては、その努力が無駄な努力に終わるかどうか以前にこの時代、成功者への門、登竜門への道をまず見つけなければお話が始まりません。つまりは努力すべく走り出す以前の問題なのですよ。よよよ、何とも難儀な話なのです。
この時代、貴族と平民は別の生き物と扱われるが、だからといって平民同士であっても同じ生き物と扱われるとは限りません。
平民同士でも職業ごとに貴賎が存在し、それらは、それぞれの職業ごとのコミュニティで一生を終えていくのです。よって、職を変えることはこの時代では生まれ変わることに等しいといっても過言ではないのです。
まあもっとも、幸い農村からの流入が活発になっている昨今では、かつてに比べればはるかに手に職を付ける可能性があったりしますから、本当にこの世界の文明レベルが中世でも後半に差し掛かっていたことは不幸中の幸いといったところですね。幸いなことにカースト制みたいな強固で細かい身分制度はこの世界には存在しないですし……たぶん。
ぶっちゃけ、私も大まかな情報しか入力されずに作り出されましたから詳しいことはわからないのですよ~。だが、謝らないのです! そもそもチュートリアル説明キャラには世界の全情報など不要なのですよ。どうせ遠からず消える運命でしたし。
まあ、それはともかく、ジャンに必要なものはチャンス、チャンスなのです。現代と違い、この中世という時代において、成り上がる為に必要なものは努力より前にチャンス、運と言って過言ではないのです。農村で農奴が学問に精を出しても学者にはなれない、武術に精を出しても兵士はともかく騎士になれない、政治を学んでも官僚になれない、例えるならば、オールをいくら漕いでも水面に接してなければ意味が無いのと同じです。
なのでチャンスを掴むことが肝要なのですよ。それもこちらから掴みに行かねばなりません。幸運の女神は前髪しかないと言いますが、そんなハイセンスな女神様がこちらに向ってくるのを待っている余裕はないのです! ぶっちゃけ、ジャンは星のまわりの悪いのです、不遇がデフォなのです、でなければ若い身空で日本海に沈みやがらねえのです。
幸運の女神が向っているのを待つのではなく、こっちから探し出して無理やり前に躍り出て力いっぱい前髪を掴み取るぐらいしなければジャンの未来はドブ色決定なのです。というわけで、ハイセンスな女神さんの前髪を掴み取ってスキンヘッドにすべく、近々、私とジャンは村を飛び出す準備をしている現状なのですよ~~。
さあ、幸運の前髪を掴み取る準備に掛かるとしましょう。あ、因みに実際の幸運の女神はごく普通な髪型らしいですよ。巷で言われているようなハイセンスな髪型をしておらず、この格言の相手は実は前髪だけ生えたすばしっこい”時”の神さまだったそうなのですが、ダ・ヴィンチが幸運の女神と混合して使ったのが広まってしまったのが原因だそうです。ひどい苛めですねぇ。
まあ、掴むほうとしては幸運の女神だろうと時の神だろうと髪を握ることでチャンスを掴むことができるんならやることは同じですけどね。どちらだろうと見つけたらジャンに掴ませるだけなのです。というわけで私達はこれから拾う神ならぬ、掴む神さまを見つけねばなりません。さあさあ、いっちょ出張っていきますよー。
たとえ使われ始めが誤用だとしても、それがまかり通って誤用の方がメジャーになってしまったのなら、誤用の方が正しいことになるのです。無茶を通せば道理がひっこむ、誤用がまかり通れば正しい用法の方が死語になるのです。役不足という言葉が本来とは逆の意味に使われてもまかり通っているのと同じですね。
まあ、そういうわけで、幸運の女神さん、南無南無なのですよ~♪
◆◆◆
――オークへの巣の襲撃から二年が経過した。
俺は十四歳になり成長期をむかえ、体格も父さんの血が出たのか年齢の割には発育がよく身長がぐんぐん伸びた。この調子ならば、もう一、二年もしたら前世での身長に届きそうだ。前世では中肉中背な体格であったが、今の人種が西洋人風だということを考えても、中世の平均身長でいえば前世の俺の身長は長身というべきであり、このまま身長が伸び続けば俺も父さんのような立派な体躯になれるだろう。
さて、では近状から入るとしよう。季節は春をむかえ、最近ではこの辺りから見える山頂の雪も溶け始めた。木々に花々がほころび、山々には緑が濃くなり、まさに山笑うような時期になってきた。村でも畑のあちこちでモグラの穴がボコボコと空いたのを目に付くようになってきている。思わず、ようやくここにも春がきたのだなと実感させられる、なんとも気持ちの良い陽気があふれる今日この頃、
わたくしめは自身の生命をかけてただいま全力逃走中だったりします。
「ハッハハハハッハハァッー!!」
「急げえー、もっと急げえですーー!」
ははははっは、いやはやもう笑うしかないね。後ろから追いかけてくるとは灰色の毛並みをしたグレイウルフが五匹、読んで字のごとく灰色の狼のモンスターである。それが猛り狂い、牙を剥き出し、涎を光らせながら俺の咽喉を喰い千切らんと猛追している。いや~、何でこんなに怒っているのかねぇ~、困ったものですよ、本当に。
「脇にそんな物を抱えておきながら、何をふざけた台詞はほざいていやがりますか!」
そんな俺の態度に、俺の横を併走しながら、こちらに白い目を向けてくる小さな相棒が何やらお怒りのようである。
ハハハ、そう怒るなよアニス、だってグレイウルフの巣穴に、こんな上等な毛皮をした狐が瀕死で倒れていたら誰だって取りたくなるだろう?
多分、子供の狩りの訓練用に文字道理、半殺しにされていたんだろうな。むむむ、留守っぽかったのでつい手が出てしまったが、冷静に考えれば状況的に近くに家主達がいないなんてことはないわな。
「アホの子なのですね」
「そう言うなよ。逃げる算段はあるし、今は少しでも蓄えが欲しいところだからな」
さてさて、脇の締めた狐を落とさないようにしないとな。そう冷静に考えれるのだから、なんだかんだで結構余裕ができたものだ。これも日頃の鍛錬の賜物かね。さあ、もうじき目当ての場所に着くぞ、お~~、見えた、見えた、目当ての大岩発見!!
「乗れ、アニス!!」
俺に呼ばれて、アニスが俺の肩の上に飛び乗った。アニスを載せたまま俺は目の前の大岩まで駆け上がり、そこから手前に生えている樹までジャンプするべく駆ける。狼共がぐんぐん迫り来る状況のなか俺はある呪文を唱えた、俺が所持するスキル【使い魔作成】に起因する特殊な呪文を。
――【従者が技は主に帰する;技能取得】
俺は自身に呪文をかける。すると俺の動きは使い魔の、猫の動作のものへと変わった。その動きは軽業師もかくやと思わせんばかりの動作。その技を使い俺は大岩周りに点在する岩の上を連続で飛び移る事で大岩の上に飛び乗ることに成功した。
「あらよっと」
そらに、そこから俺は傍に生えている木まで飛び移る。大岩の上から手前の木の枝へと跳躍した俺の体は”くるり”と一回転して無事に木の枝の上へと着地した。着地した衝撃で枝がゆっさゆっさと上下に揺れる。並みの人間ならば位置を保持できず真っ逆さまに落ちていたに違いない。だが、今の俺は猫の平衡感覚と技を持っている。枝から転げ落ちようはずもない。
そのままさらに人間離れした速さで樹を駆け登る。狐を持つ為、片手が塞がっているとは思えない速度だ。そのまま登りに登る。さて、もう大丈夫かな、いくらモンスターでもここまではやって来れまい。俺はどっこらせと、木の枝の上に腰を乗せた。
「お~、怒ってる、怒ってる」
木の下では狼達が口惜しそうにこちらを見上げて唸っている。悪いね、横取りして。だがしかし、所詮この世は弱肉強食。俺の方が一枚上手だったということで、狼さんたちにはご退場していただきましょう。
――【種火よ、ともれ;発火】
魔法で作り出した炎で、叩き折った木の小枝を数本いっしょにあぶる。生木なので、なかなか火が付かなかったがしばらく時間をかけるとなんとか小枝に火がついた。火のともった煙がもくもく湧き出すその小枝を俺は狼達の元に投げ飛ばす。狼達は火の付いた小枝に怯えたのかしばらく遠巻きで様子を見ていたが、じきに諦めたのか森に帰っていった。
辺りは所々、つい最近まで残っていた雪のせいで湿っているので山火事とかの心配はなかったが、まがり間違って辺りに燃え広がったら困ったことになったろう。早々に諦めてくれて助かった。俺は木からすべり降りると小枝についていた火を踏み消した。
さて、いい物も手に入ったし、そろそろ帰るか。
「この森に入るのも後、僅かか」
山笑う春きたる昨今、皆様どうお過ごしでしょうか?
私事ですが、近々、この村を飛び出して新天地へと向います。
まあ、実際に俺がこの村を飛び出すには、いま少し準備を終えないといけないんだけどな。はぁ~、やれやれ難儀なことだ。でも準備は終わってないが用意は終えた。そう時間が掛かることなく全てを終えるだろう。
第二章スタートです。
※書き忘れていましたが今のジャンのステータスです。
・ジャン
筋力 E 耐久 E-
敏捷 E+ 魔力 E+
保有スキル 【使い魔作成】【魔術行使 E 】