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誰か勝手に魔王、倒してくんないかな  作者: 山彦
第一幕 少年時代編
13/38

戦士への道 (下)

「ストップ! ストップです! モンスターがいます!!」

「……遂にでたか、どこにいるんだ?」

 


 罠を仕掛けたところに向かっている途中でアニスが話しかけてきた。

 正直、あまりに今まで出なかったので、この森にはモンスターが出ないんじゃないかと疑っていたのだが、遂にきたようだ。そして、アニスに位置を聞いてみたところ、どうやら罠を仕掛けた位置にいるらしい。


 ……ひょっとして罠に掛かったか? それなら嬉しいのだが。


 だが、どうやら罠に掛かったのはモンスターではなかったようだった。設置した罠の一つである投げ縄の罠に掛かり足を固定された猪がそこにはいた。肩には矢が刺さっていないことから前回の猪ではないようだった。


 罠に掛かった猪の周りにいる六体のモンスター……ゴブリン達が猪を嬲りいたぶっている。奴らは手にナイフや槍をもっているが弓矢は幸い持っていないようだった。


 ……糞野郎共が。


 俺の初めての獲物を汚した糞共に対する怒りが胸に込み上げてくる。

 俺は用意してきた槍(手持ちのナイフを木の棒に括り付けた物)を地面に刺し、背中に背負った二つの矢筒のうちの一方を地面に置いた。そして、クロスボウに矢をセットし始める。



「ちょっと、何やっているですか! 頭を冷やすです!!」

「俺は極めて冷静なつもりだが?」


 どうやら、アニスは俺が頭に血が上ってしまっていると思ったらしい。


「確かにいささか無謀かもしれない、だが無茶じゃない」


 そう無謀だが無茶ではない。この辺りは俺が作った罠が大量にある上に、これまでの探索でここの地理は理解している。それに、



「なあ、アニス。この村を出て行こうと思っているなら、今ここで戦わなくてもいずれ俺はモンスターを狩らなきゃならない。そして、その時、今よりよい状況とは限らない」

「…………」

「そして、今のままのステータスで森の中を動き回って居続けるのも十分危険だ。モンスター相手じゃない狩りだって十分危険なのは前回のでよく分かった」

「それらのことを換算して考えると、今無茶した方が後々には安全に繋がるんじゃないかな、それに」

「……それに、これぐらいの危険はこの世界でははいて捨てるほどあるということですね」


 そう、この程度対処できないならば、これから先やっていけない。何しろ、いずれ魔王まで誕生する世界なのだから。そして、その頃には父さんはもう生きてはいまい。その時は俺が家族を守らねばならない。



「もしもの時は、フォロー頼む」 

「アイアイサーなのです」



 ちょっとおちゃらけた感じで、アニスが俺に敬礼する。羽を光らせて飛びながら、人形みたいなアニスがそうするコミカルな様子に、ちょっぴり緊張感が抜ける。俺が力みすぎないように気を使ってくれたのかもしれない。



 さて


 狩りを始めよう。



 向こうはまだこちらに気づいていない。なので、慎重に狙いをつけて先制攻撃することができる。手のブレを最低限に抑えるために、木にクロスボウを押し付けながら狙いを定める。一番手前のこちらに体を向けている奴が撃ちやすそうだ。


 外すわけにはいかない!


 ここで、いかに数を減らせられるかということに、次の戦闘の優劣が決まるといって過言ではない。俺は獲物を確実に仕留めるタイミング、それがくるのを待つ。


 どれくらい時間が経ったか、今まで吹いていた風がピタと止まり、無風状態になった。その瞬間、俺はクロスボウを放った。放たれた矢がぐんぐんとゴブリンの胸に吸い寄せられていく。そして、


「ぐぎゃ!?」


 胸を撃ち抜かれたゴブリンは地面に倒れた。

 仲間が攻撃されたことで、周りのゴブリン共が騒ぎ出す。

 その騒ぎをよそに、俺は2発目の矢をクロスボウに装填し、そしてようやく俺を見つけたゴブリン達の先頭を走る一匹に向けて二発目の矢を放った。放たれた矢は瞬く間に二匹目のゴブリンを仕留めた。突き刺しておいた槍を抜き、その場を離れ、設置した罠の密集地帯に行くべく走り出した。


 耳障りな声をあげながら追ってくる奴らから距離をとるべく走っていくと、目の前に四方に竹を刺してある落とし穴の密集地帯が見えた。俺は安全ルートを走りぬけ、罠作動用のロープがあるところまで来ると、くるりとゴブリンの方に向き直り、ゴブリンどもを挑発する。



「この腐れ■■■共め!! こっちまで来てみろ!!」 



 頭に血が上ったらしい、ゴブリン共はこちらに向かってくる。俺は奴らが落とし穴まで来る前にもう一つの罠を作動させるべく、俺の横に張ってあるロープを叩き切った。


 ぱらっ、ぱらっと上から小石が落ちてき、次の瞬間人間の頭大の岩がゴブリン達に襲い掛かった。こちらに向かっていた3匹のうち一匹がそれに巻き込まれ、一匹はジャンの方にそのまま向かったが落とし穴の餌食になった。


「ちっ、殺しきれなかったか!!」



 俺は槍を構えるとゴブリンと向き合った。ゴブリンは最初は荒い息をしながらナイフを構えて俺に対して威嚇していたが、しばらくすると焦れたのか俺に対して突撃してきた。


 背丈は同じくらいだが、地力が違うのか俺はゴブリンに押し倒されてしまう、奴のナイフが俺の槍に食い込み、そのまま俺を押さえ込もうとしている。このままでは槍の柄の方が先に真っ二つになる。はぁはぁ息を吹きかけんじゃねえ、気持ち悪い!!


 さらに状況が悪いことに、どうやら回り込もうと迂回してきたらしい、残り一匹のゴブリンがこちらに向かってきた。


 ちくしょう、数が足りないと思っていたが、お前逃げたんじゃなかったのかよ!


 俺は南無三と一か八か賭けにでることにした。振り下ろされているナイフに対抗しようと槍を押さえていた力を抜き、押さえつける力に抗わず、手をすっと引いた。そうすると、とつぜん力が抜けたことで体制を崩したゴブリンの顔に、アシルから貰った唐辛子爆弾を叩き付けた。


 悲鳴を挙げてのたうち回るゴブリンに対して、矢筒から零れ落ちた矢を突き刺した。矢を突き刺されたゴブリンはさらに大きくのたうちまわった。先ほど地面に置いた矢筒とは違い、この矢筒の底には毒が入っている。そして、鏃には小さな溝を作ってあるので、表面張力によって毒が溝から抜け出ないような仕掛けになっているのだ。毒を食らった獲物の肉は食べることができない為、この矢は純粋に殺傷用だった。この毒矢をくらってはひとたまりもあるまい。


 そして、向かってくる残りのゴブリンを倒そうともう一本、地面から矢を取り対処しようとしたが……



「残念。ゲームオーバーだったのですよ」



 目の前には失神しているゴブリンと、俺に向かって、「えっへん」とばかりに、仁王立ちしているアニスがいた。アニスの背丈は気持ち小さくなったような気がする。どうやら、俺は残り一匹に対する対処が遅かったらしい。アニスが居なかったら危うく死ぬところだったようだ。


 まったく、アニスにはいくら感謝してもしきれない。



「流石は、守護霊様ならぬ、守護妖精様だな」

「暢気なもんですね。

 死にかけたんだから反省しないと駄目ですよ

 いずれは自分は消えてなくなるんですからね」


 そうなんだよな。アニスはあくまで”チュートリアル”なんだから、俺が一人前になったら消えちまうんだよな。そう考えるとちょっと悲しくなるな。


「おっと、何辛気臭い顔してやがりますか。初めての戦闘からの勝利なのですからもっと喜ぶですよ~☆」


 俺の周りをグルグル飛び回り、即興の踊りをして盛り上げようとするアニス。そのアニスを見ていると何だか元気が沸いてくる。


「そうだよな。喜ばなきゃいけないよな」

「あ、そういえば、この転がっている奴や、落とし穴に落ちた奴が生きていたら

 ちゃんとこの手で始末してくるですよ~。そうしないとステータスがUPしないですからね」

「…いきなし、血生臭いな、おい」


 なお、落とし穴の奴はかろうじて生きていたので、止めをさすことができました。それでちょうどステータスがあがったらしい。とりあえず、これからゴブリン共が持っていた物を回収しながら、猪の元に戻りますか。とりあえず、動脈を切って血抜きをしなきゃな。


 さすがに、一人じゃ難しいから父さんも呼んできた方がいいが、……やっぱり怒られるよな。とりあえず、帰るまでに覚悟は決めておこう。




--------------------------------- 

・ジャン 


 筋力 E-  耐久 E-

 敏捷 E-  魔力 F


 保有スキル 【使い魔作成】

  

---------------------------------  

  

参考までにゴブリンのステータスを提示


・ゴブリン 


 筋力 E- 耐久 E-

 敏捷 E  魔力 F


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