プロローグ
世界は神様が作った。
それは、多くの宗教でいわれている定型句の一つである。
そして、ここもまた、その定型句を踏まえている世界だった。
そして、その世界はこれから滅びの運命を迎える事となったようだ。
「――――!? !!!!!!!? 」
喧騒漂う白亜の神殿、そこに一人の少女が立っていた。
月光のよような銀の髪を背に長く垂らし、その先を一纏めに結んでいる。
肌の色は純白。たとえ、闇の中で見つめようと、そのきめ細やかさは月明かりだけで悟ることができる。
鋭利さとは懸け離れた優しげな目、高い鼻筋、ふっくらとした、それでいて小さな唇という美貌は、見たものに、安らぎと敬愛を与えるだろう。
これは、ひとつの美の極致といえた。
……しかしながらそれは、残念ながら ”黙って立っていれば” という一言を加えなければならない。
少なくとも、現在の目から涙を流しているどころか、鼻水まで垂れ流し、うなだれ、動揺している彼女に対し本来感じてしかるべき、創造神への敬意なるものを感じるものは、その創造物ですらいないであろう。
そう、彼女は神なのだ。――信じたくはないけれども。
「あ~~、これはもう駄目ッスね。 」
「残念ながら、この世界の未来は終了しました。
女神様の新たな世界に期待くださいなのです! 」
「あばばばばばぶぶぶぅ」
「……お前ら、んなこと言っている場合か。
おーい、そこの奴、女神様に最高級のアールグレイを1杯用意してくれ。」
女神と言われた少女の周りに控える何人かの偉そうかつ古臭い衣装を着たものたち(少数ながら現代衣装のものもいる)の中の一人が、主人を落ち着かせるよう、周りのメイドぽい何かに、紅茶の手配をさせようとしている。
まさに、場は混沌と言ってよい。悲嘆にくれるもの、暢気に俯瞰するもの、そして主たる女神を補佐せんとするもの。しかし、いつまでもそのままでいてよいわけでは当然ない。何しろ、ひとつの世界が終わろうとしているのだから。
とりあえず、先ほど、女神のために紅茶を手配した、執事風の男はそう考え、これからのことを思案した。何しろ自分はこの未熟な女神を補佐するために女神の父より生み出されたのだから。
男は状況を確認するために、世界をモニターしている同僚に話しかけた。
「……お前ら、本当に手はないのか?」
「少なくとも、あっしら側からの干渉でどうにかなる段階は終わってるッス。」
「現在、世界の停止ボタンを押してあるので、いくらでも確認すればいいです。もう、こうなったら仕方ないので、この世界はもう諦めるってことで絞めちまったらどうです?」
「うう~~~~~~~~……」
「……」
正直、男も、もうこの世界の存続は諦めて、新たに作り直した方がよいと思っているのだが、この世界、主たる女神が始めて創造した世界、当然愛着があるのだろう、横で再創造の提案にうなっていらっしゃる。まあ、気持ちは分からんでもないが、正直、男にはもはや手がないのである。
「うう~~~~~~~~……」
「……」
だが、そいういうわけにもいかないらしい。少なくとも、今のこの状況
――恨らみまがしげに彼女が自分を見上げている状況を女神の父に見られたとすれば自分の命が危うい。
「――わかりました。
ですが、我々の手には負えないので、お父上にご相談しましょう」
「――――ん!」