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国家最終兵器に魔改造された転生魔女、正体を隠して王立学園に通います~異世界で二度目の青春始めました~  作者: 藤白ぺるか@4/1美容スキル第1巻発売


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第3話 可愛い同居人

「コイツが新入りか……。ほぉーん、なかなかの出来じゃねえか」


 どう見ても愛らしい黒猫にしか見えない小動物が、ぺらぺらと流暢に喋っている。


「ぁ……う……猫さん?」

「あーくんを紹介してあげるのだ!」


 喋る黒猫に戸惑っていると、ハナハナ博士が前に出て説明してくれた。


「あーくんは我が作った猫型サイボーグなのだ!」

「え、あ……私と同じ?」

「そうなのだ! 王都の路地で雨に打たれて死にかけていたあーくんを見つけてな。どうせなら死なない体にしてやろうと改造し、人間の声帯も付けてみたら――すごく人間っぽい思考をする猫になったのだ!」


 死にかけの猫を助けたという感動的な話……かと思いきや、私と同じくサイボーグ化したというとんでもない事実が付け加えられた。しかも不死身で人間の声帯付き? 私には想像もつかない技術だけど……見た目だけはとても可愛い。


「おい、新入り。俺はアーサー・ヘラクレスだ! お前が完成したらこの家に住むって話は前から聞いてるが、俺はこの家の先輩だ。後輩らしく俺を敬えよ!」


 見た目に反して、すごく偉そうなんですけど〜〜!?


「…………おい、何してる」

「じ〜〜〜〜〜」

「おい、やめろ」


 私は黒猫に近づき、ひょいっと持ち上げた。重さは日本で知っている猫と同じくらいで、だいたい四キロほど。機械なのに軽いんだなぁ。

 それにこのつやつやの毛並み。しかも肉球がとても柔らかい。


「……すぅ〜〜〜〜〜〜っ」

「おいっ! 吸うのも肉球をふにふにするのもやめろ!」

「だって、あーくん可愛いんだもん」

「俺はアーサーだ! 新入りのくせに可愛い呼び方するんじゃねえ!」


 猫吸いなんて今までやったことなかったけど、実際にやってみるととても癒やされる。

 そういえば、この子はアーサーって名前だったっけ。私は少し体から離して、あーくんのお腹あたりを眺めてみた。


「……可愛いアーサーだね」

「新入りてめぇぇ! どこ見て言ってやがる!!」

「ふふふっ」


 アーサーはアーサーでも、やっぱりハナハナ博士が呼んでいたあーくんの方がしっくりくる気がする。

 どうやらここで暮らすのは、ハナハナ博士とあーくん、そして私の三人らしい。

 日本の家族以外の人と暮らすのは初めてだけど……うまくやっていけるだろうか。


「りぃたん。部屋の案内は任せるのだ!」

「かしこまりました。――アリー様、この家の部屋や設備をご案内しますので、こちらへどうぞ」

「わかりました」


 あーくんを床に降ろすと、助手のリィゼルさんが家の案内をしてくれることになった。


 今いるリビングには、タワーマンションのようなアイランドキッチンがあり、L字型ソファや大きなテーブルが並んでいる。

 それに、あーくんのためなのか、立派なキャットタワーまで設置されていた。


 次に案内されたのは、ハナハナ博士の部屋、浴室、トイレ、物置部屋、そして仕事部屋だった。

 ハナハナ博士の部屋の扉には『ハナハナのへや』と日本語で書かれたプレートが掛かっている。手書きの可愛らしい字で、それを見るとハナハナ博士はやっぱり子供なんだなぁ、と感じさせられた。

 それと、日本語で書かれた文字を見て、やっぱり私が作った世界なのかなぁ、ともしみじみ思う。


 ただ、彼女の仕事部屋と呼ばれる場所には、パソコンのようなものが所狭しと並んでいて、部屋そのものが研究所のようにも見えた。


 さらにいくつか空き部屋があり、そのうちの一つはリィゼルさんが時々寝泊まりしているらしい。そして別の一部屋が、私の部屋になるとのことだった。すでに机やベッドなどの家具は揃っていて、好きなようにアレンジしていいと言われた。


 案内されている途中、私はリィゼルさんにいくつか質問してみた。


「ハナハナ博士って、何歳なんですか?」

「少し前に七歳になられました」

「はは……現実感のない年齢……いつから研究を?」

「四年ほど前からでしょうか」


 ということは、四歳の頃から研究をしていることになる。

 自分がこの世界を作ったとはいえ、天才すぎる幼女である。

 ちょうど、私が発見されたと同時期に研究を始めたのか。というか私って、こうして目覚めるまでよく生きてたな……。


「いずれわかることではありますが、ハナハナ博士が暮らしていた故郷は、アポフィス教団の手によって滅ぼされてしまいました。身寄りをなくした彼女を王国軍が保護したのですが、その際に天才的な頭脳を持つことが明らかになり、研究を任せたところ才能が開花したのです」


 思いのほか壮絶な過去を持っていた。となれば、ハナハナ博士には両親がいないことになる。今まで寂しい思いをしてきたのだろうか。

 でも、これからは私が一緒だ。家族とは違うかもしれないけれど、まだ小さな子供なんだ。少しくらいは、その寂しさを埋めてあげられるだろうか。

 ……と言っても、私だってまだ子供だけど。


「……アポフィス教団って、なんですか?」


 リィゼルさんの話の中で、ひとつ気になるキーワードが出てきた。

 そんな怪しげな組織、私は設定に入れていない。


「アポフィス教団は、千年前に存在したと言われる邪神アポフィスという悪神の復活を目論む組織です。彼らはこの世界から魔法を消し去ることを目的としています。かつて邪神アポフィスは魔法を消すために世界を破滅させようとしましたが、それを阻止し打ち倒したのが太陽の魔女スーリヤなのです」

「ま、魔法……っ」


 剣と魔法の世界という設定は考えていたけど、やっぱり魔法があるんだ!

 嬉しい。早く魔法を見てみたいな……。


「あれ、私ってさっき右腕からビーム出しましたよね? もしかしてあれって魔法!?」

「魔法ではあるのですが、ハナハナ博士は素粒子魔導砲と呼んでおりました。ちなみにアリー様の体には魔力がないため、一般的な方法で魔法を扱うことはできません」

「ど、どういうことですか!?」


 そういえば、目覚めたときにハナハナ博士が「魔力を持たない人間を見つけた」なんて言っていた気がする。

 つまりそれは――魔法を使えない、という意味なのだろうか。


「初めから感じておりましたが、アリー様はこの世界の常識を何もご存じないのですね」

「……ぁ……そ、そうですね〜〜〜」


 私がこの世界の住人じゃないって言っても大丈夫なんだろうか。

 こういうのは大抵、暴露しない方がいいって相場が決まっている。そもそもすでに体は改造されちゃっているわけだし、今さら感もある……。


「では、これからはアリー様はこの世界の常識を何も知らないと仮定して、お話を進めさせていただきます」

「た、助かります……」


 私は三年前、何もない草原で発見されたらしいけど、それ以前の記憶はちゃんとある。そのことを聞いてもよかっただろうに、リィゼルさんはそれ以上踏み込んで聞いてこなかった。


 この後説明されたのは、この世界で最大のエネルギー源となる魔力、そして魔法のことだった。


 空気中にも人間の体内にも、あらゆる場所に魔力や魔素という物質が存在しており、それを具現化させて扱うのが魔法だという。

 魔法を扱うには、体内の魔力を感じ取り、それを放出させる訓練を積んで、ようやく使えるようになるらしい。けれど、私の体内には魔力がないので、それができないそうだ。


「例えば、こんな感じです――」


 リィゼルさんが人差し指を前に出すと、その先端からボッと小さな火が灯った。


「す、凄い! リィゼルさん、凄いです!」

「……こんな簡単なことで喜ぶのは小さな子供くらいですが……魔法が使えない体のアリー様からすれば、珍しいのでしょうね」


 しかも、リィゼルさんは詠唱をしていなかった。

 念じるだけで魔法を使っていたのだ。これがいわゆる無詠唱というやつなのだろうか。その辺の仕組みについても、いろいろ聞いてみたい。


「話を戻しますが、アリー様が右腕から放った素粒子魔導砲は、胸に埋め込まれた魔宝石アレキサンドライトがあるからこそ使えるのです」


 そうだ、アレキサンドライト。

 ぱかっと開く私の心臓部には、日本でも聞いたことのある宝石が埋め込まれていた。こっちの世界では魔宝石というらしいけど、虹色に輝いていて綺麗だった。


「そのアレキサンドライトは、聖遺物と呼ばれる古代の遺物で、太陽の魔女スーリヤが持っていたとされる杖に嵌め込まれていた魔宝石なのです」

「なんですってええええっ!? いや、アポフィスを倒した人ですよねぇ!? そんな貴重な物が私の胸にっ!?」


 さっき言っていた、邪神アポフィスを倒したという千年前の魔女さんだよね。

 その人が杖に使っていた魔宝石が埋め込まれているなんて、本当にとんでもない話だ。急に胃が痛くなってきた気がする。……私って、そもそも胃があるんだろうか。


「この世に存在する全ての魔宝石にはそれぞれ特性があり、アレキサンドライトは我々研究者の中では吸魔石とも呼ばれています」

「吸魔石?」

「はい。吸魔石はあらゆる魔法を吸収してしまうという性質があり、そのため、どんな被検体にも適合しなかったのです」

「……魔力を持っているからですか?」

「簡単に言えば、そうなります」


 なんだか、少しずつ理解してきた。

 私は異世界人だから、この世界の人とは体の構造が違っていて、魔力を持たない人間なんだ。だからこそ、アレキサンドライトに適合した。


「でも、そのスーリヤって魔女が使ってたんですよね。どうやって使っていたんですか?」

「それは、私たちにもわかっていないのです。古い文献にも残っておらず……。ですが、アリー様に適合したということは、もしかすると太陽の魔女スーリヤも、アリー様と同じく魔力を持たない不思議な体質だったのかもしれません」


 確かに、そう考えれば辻褄が合う。

 ……となると、そのスーリヤって魔女も、異世界人だったりしない?

 いや、私が作った世界に私が入り込むならまだしも、他の人が入り込めたりするのだろうか。


「それで、魔法を吸っちゃうのに、どうして私は魔法みたいなビームが撃てたんですか?」


 まだ疑問が残る。

 魔法を吸うなら、自分が放ったものまで吸い尽くしてしまうはずだ。


「それについては、一言で説明できます。――ハナハナ博士が天才だからです」

「えっと…………え?」


 誇らしげに鼻を鳴らすリィゼルさん。

 ハナハナ博士のことになると、ちょっと頭が弱くなるのだろうか。


「おそらくハナハナ博士以外には理解できないでしょう。私にも全ての仕組みがわかっているわけではありません。ただ、その中で一つだけ言えるとすれば、アリー様の体は魔道具の一種になっているのです」

「魔道具……? それって、もしかして魔法を使わなくても、その道具自体を使えば魔法が使えるっていう――」

「あら、そちらはご存知なのですね」


 一般的なラノベ知識ではあるけれど、魔道具の認識はこの世界でも同じらしい。

 ってことは、魔力で動くコンロとか、そういうものがあるってことだと思うけど……私の体が魔道具?


「ハナハナ博士によれば、そうらしいのです。そして通常の魔道具は、埋め込まれた魔宝石によって魔法を扱えるのですが、アリー様の場合はその魔道具のような仕組みで構成されています。つまり一言で言えば、人間魔道具とも言えるでしょう」

「なんだか、微妙に嫌な扱い……」


 頭が痛くなってきた。でも、要するに、私の元の体では魔法は使えないけれど、体が魔道具のように作られているから魔法が使えた、ということなんだろう。


「私が理解している範囲で説明しますと、アレキサンドライトで吸収した魔法や魔素が、ハナハナ博士の作った魔道具となる装甲内部で魔力へ変換され、素粒子魔導砲が放てるという仕組みになります」

「大まかには理解しました。なんだか凄い体になっちゃったんだなぁ……」


 見た目はどう見ても人間にしか見えないのに、その内部はほとんど機械。

 不思議な感じだ。


「では、リビングへ戻りましょうか」

「はい」


 部屋の案内を終えると、私たちは二人でリビングへと戻った。



 ◇◇◇



 ウィーン。ウィーン……。


「猫だ! めっちゃ猫だ!」


 どう見てもロボット掃除機みたいなフォルムの丸い機械が、床を掃除していた。

 そしてその上にあーくんが乗っていて、日本にいた頃に見たロボット掃除機に乗る猫の動画を思い出した。


「あ、戻ったのだ! よし、じゃあ食事にするのだ!」

「かしこまりました。しばらくお待ちください」

「え、食事!?」


 ふと窓を見ると、差し込んでいた光が少しだけ暗くなっていることに気づく。

 今はこの世界でいう夕方らしい。


「博士、私って……食事とかできるのかな?」

「何を言っているのだ! 当たり前なのだ! 中身は機械でも、ほとんどの人間の機能は残しているのだ! 食事も睡眠もお風呂も、人間と同じ欲求を持つように設計しているのだ!」

「ええー! 嬉しい! 私、ご飯も楽しめるんだ……!!」


 機械になったら、そういうものは全部諦めないといけないと思っていた。

 でも、どうやらそうではないらしい。さすがはハナハナ博士といったところだろうか。


「今日は、アリー様の生誕記念ということで、豪華にいきましょうか」

「うおおおおお! やったのだ! 何にするのだ!?」

「もちろん焼き肉です」

「焼き肉ぅぅぅっ!?」


 まさかこの世界に来て、最初の食事が焼き肉になるとは思わなかった。




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