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国家最終兵器に魔改造された転生魔女、正体を隠して王立学園に通います~異世界で二度目の青春始めました~  作者: 藤白ぺるか@4/1美容スキル第1巻発売


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第1話 サイボーグ

有理奈ありな〜。今日は何のお話するー?」

「私はねねっちが最近見てるっていうアニメの話がいいなー!」

「それなら、『ダンジョングールによろしく』はどう?」

「ぱるるん……それグロいヤツじゃん。そういうの苦手だよぉ〜っ」

「そう? 私は結構好きだけど」


 二人の友人との、他愛もない普通の会話。

 どこでも交わされているであろう、そんなやり取りを私は心から大切に思っている。


 なぜなら――ここは病室で、それでいて私の下半身は動かすことができないのだから。


 高校一年生の秋。私は突然、下半身が動かなくなる病気に見舞われ、病院での生活が当たり前になった。

 一時的に家へ戻ることもあったけれど、それから二年。今では、自分の命が長くないこともなんとなく理解していた。


 高校三年生になった私は、一年生の頃から仲良くしてくれている二人と、こうして時々会話をするだけ。

 あとは、静かに死へのカウントダウンを待つばかりだった。


「有理奈が最近書いてるっていう小説の話、聞かせてよっ」

「あ、それ私も聞きたい」

「いくつか書いてはみてるんだけど、やっぱり難しくてさ。だから今は新しい作品の設定を考えてるところ」


 足が不自由になってから始めた、ウェブ小説の投稿。

 まだ手が動かせた私は、パソコンを使って小説を書き始めたのだ。


「よくある設定ではあるんだけど――舞台は中世ヨーロッパ風の異世界……剣と魔法の世界って感じなんだけど……」


 テンプレートのような世界設定を用意して、読者にわかりやすい流れを大まかに作る。でも、そこに一つくらいは面白い何かを入れたいと思っていた。


「ふーん。じゃあ、こういうのはどう?」


 そう言って提案してきたのは、友人の一人だった。

 彼女は思いついたアイデアを楽しそうに語り始める。


 それを聞いていたもう一人の友人と、そして私の表情は――みるみるうちに明るくなっていった。


「「面白そう――!」」


 私たちは同時に声を上げた。

 なぜなら、その内容は――私にはできなくなったこと。

 それ以上の願いを叶えてくれそうな設定だったから。


 そして私は、パソコンの画面にその設定を一文で打ち込んだ。



 ――もう、心電図の音しか聞こえない。


 あれから時が過ぎ、手も足も動かせなくなった私の命は、どうやらここで限界らしい。

 意識が薄れていき、友人や家族の声もうまく聞き取れない。


 高校三年間。

 こんな不自由な私と、ずっと友達でいてくれた二人には感謝しかない。


 もし、生まれ変わることができたなら――

 今度は、友達と一緒に楽しい学園生活を過ごしたい。


 意識が、ゆっくりと遠のいていく。


 みんな、ありがとう。

 そして――さよなら。


 すべてが白に染まったあと、私の意識は静かに彼方へと消えていった。



 ◇◇◇



「ん、うぅ…………」


 ピ、ピっと、心電図のような音が聴こえた。

 あれ、心電図って、ついさっきまで聴いていたような……。


「――ハナハナ博士。目覚めました」


 女性の声が聞こえた。

 重たい瞼をゆっくり開けると眩しい光が差し込んだ。そのあと、徐々に視界がはっきりとしてくる。


 目の前には白衣を纏った複数人の女性が私を囲んで立っていた。


 あれ、そう言えば私、病室で寝ていたような……。

 ほとんど意識はなかったけれど、目の前が真っ白になったことまでは覚えている。

 もう死んだと思っていたけれど、少しだけ生き延びちゃったのだろうか。


「心拍数安定――異常なし。体温、異常なし。――全て問題ありません」


 カルテのような紙をバインダーに挟んで持っていた女性が、私の体を機械か何かでチェックしたのか、問題ないそうだ。


「――被検体ナンバー44(フォーティーフォー)! アリー・サンドレイの完成なのだ!!」


 しかし流れが変わった。

 ここは病院のはずなのに、なぜか幼女の声が聞こえた。

 ベッドに寝かされていたらしい私は、その場所から視線を下げると同じく白衣を着た幼女がいた。

 金髪ロングで外国人風の顔をした可愛らしい幼女だ。本当に小さい。


「って……え?」


 目を疑った。

 周囲を見渡せば、ここは私が知っている病院ではなかった。

 私が寝かされているベッドは病室にあるようなベッドではなく、どちらかと言えば、ここは研究――


「――落ち着いて聞いて下さい」

「へ……?」

「あなたにお話があります。どうか落ち着いてください」

「はい……」


 カルテを持った女性が説明をしてくれる。

 紫髪ボブの美人さんだ。


「あなたは昏睡状態でした。随分と眠っていたのです」

「どれくらいなんですか?」

「そうですね。三年ほどでしょうか」

「…………へ?」


 淡々とした彼女の説明。私は一度耳に通し、聞きながした。

 だけど、改めて脳内で噛み砕いてみると恐ろしいことがわかった。


「三年っ!?」

「ええ、ですが大丈夫です。あなたを発見した時と似たようなボディに調整しましたので、当時の年齢とほぼ同じ容姿に見えるはずです。――髪色だけは、なぜか変化してしまいましたが」

「な、なんて?」


 次々と脳内へと流れ込んでくる意味不明な情報。

 ボディの調整? 髪色の変化? この人は何を言っているのだろうか。


 私は自分の体を見下ろしてみた。


「…………へ?」


 目覚めてからもう何度「へ?」と言ったかわからない。

 でも、そう言うしかなかった。


 なぜなら私は全裸で寝ていて、病院着も何も着ていなかったからだ。

 目の前にいたのが全員女性というのが幸いだったろうか――いや、この際それは些細なことだった。

 なぜなら――


「私の心臓〜〜〜っ!?」


 私の体の中心部――心臓があるはずの場所がぱっくりと開かれており、そこには虹色に輝く石が埋め込まれていたのだ。


「うぎゃああああああああ〜〜〜〜っ!?」


 続けて叫んだ私。

 するとなぜか体が急激に熱くなっていくのを感じた。


「ハナハナ博士! 体温が急上昇しています!!」

「何!? これはマズいのだ!」

「何これ!? 私どうなってるの!? いやっ、いやっ……」

「お前達、緊急退避なのだ!!」

「「「はいっ!!」」」


 私の様子を見るなり、目の前にいた白衣集団は一斉に部屋から飛び出ていく。

 いや、助けないの!?


 何が起きているのか本当にわからない。

 ただ、私の体が燃え盛る炎のように熱くなっていることだけはわかって――


「うぎゃあああああっ!?」


 心臓に綺麗な石が埋め込まれているだけなら良かった。

 それに加えて私の右腕が開いていたのだ。


 開いていた、というのはそのままの意味で、手首の部分がパカッと開いて、某ロボットアニメのようにそこに光が溜まっていった。


「えっ、なにこれ!? なにこれっ!? ――いやああああああああっ!?」


 眩しい光が溜まり、そしてぎゅっと収束する。

 次の瞬間には、前方に巨大な光が放たれた。


 私の叫びと共にその光は破壊を巻き起こし、前方の扉どころか、部屋全体を巻き込んで全てをふっ飛ばしていく。

 私の開いた腕からは、ビームが放たれていたのだ。


「もう、嫌だ…………」


 ぽたりと涙が地面に落ちる。

 意味がわからないことの連続で感情がぐちゃぐちゃだ。


「うっ、うっ……うがぁっ!!」


 涙を流していると、積み重なった土の中から這い出てきたハナハナ博士と呼ばれた幼女。彼女が土を払いながら私の下へと近づいてきた。


「さすがは我の作った世界初の吸魔石型サイボーグなのだ! ここに辿り着くまで何度失敗したことか! 魔力を持たない人間を見つけた時には不思議に思ったが、誰にも適合しなかった魔宝石アレキサンドライトがこれほどまでに適合するとは! にゃーっはっはっは! やはり我、天才!!」


 今、なんて言った?

 聞き捨てならないワードがあった気がする。

 でも、私の胸とこの右手――その言葉で全部が繋がっていく。


「わ、私って…………?」

「ん、ああ。目覚めたばかりで説明していなかったな! 被検体ナンバー44、アリー・サンドレイ。君は我の研究対象なのだ! 何もない草原で寝ていて、ずっと目覚めぬから勝手に連れてきて改造手術を行ったのだ! 簡単に言えば、アリーの体の九割以上は機械なのだ!」


 機械。機械。機械…………機械?

 幼女の言葉を聞き、私は彼女の顔とぱっくり開いた自分の胸元を交互に見た。


「あわわわわわわわわ…………っ!?」

「どうなのだ! 我は天才だろう! アリーは、この世界で唯一の機械人間――サイボーグなのだ! にゃーはっはっは!」


 私の脳裏に嫌な予感が過った。

 目の前の景色……草原が生えている広い大地。背後には石なのか鉄なのかで造られたこれまた広い研究所のような施設。


 そして空。鳥ではない不思議な生き物がふわふわと飛んでいた。

 日本では見たことがなかった。


 最後にこの体。

 サイボーグ…………そこから導き出される答えは一つだった。


「――これ、私が考えてた小説の世界?」


 現実か否か。

 でも、自分がここに立っているという感覚だけは確かにあった。





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