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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

100円弁当

作者: 焼売弁当
掲載日:2026/02/26



商店街のいちばん端、

シャッターの半分だけ開いた総菜屋で

「100円弁当」は売られている。


白い発泡スチロールの箱に、白飯と薄いハムカツが一枚。

それから、真っ赤な福神漬けが三切れ。

値札は油でにじみ、何度も書き直した跡があった。


昼休みになると、決まって同じ顔ぶれが並ぶ。

年金暮らしらしい老人、建設現場の若い男、制服姿の高校生。

みんな目を合わせない。

100円玉を握りしめ、ただ順番を待つ。


「いつもありがとうね」


店主の老婆は、そう言って弁当を手渡す。

だが誰も礼を言わない。

ただ、小さくうなずくだけだ。


ある日、私は気まぐれでその列に並んだ。

噂を聞いたのだ。


「あの店は、あれで儲けが出ているらしい」と。


100円で。


持ち帰って、ふたを開ける。

ごはんは妙に艶がある。

ハムカツは衣が厚く、噛むと油がにじんだ。

味は、悪くない。

むしろ妙に整っている。

塩気も甘みも、きっちり計算されたように。


食べ進めるうち、違和感に気づいた。


骨がない。筋もない。

繊維がやけに均一だ。

ハムカツの断面は、どこまでも滑らかで、

まるで粘土を切ったみたいだった。


その晩、商店街で小さな騒ぎがあった。

三軒隣の肉屋が、急に店を畳んだという。

店主がいなくなったらしい。


数日後、魚屋も閉めた。八百屋も。


それでも総菜屋の100円弁当だけは毎日きちんと並んでいる。

むしろ以前より艶やかで、具が少し増えた。

昨日はメンチカツだった。


私はまた列に並んだ。


老婆は、にこりと笑った。


「最近ね、仕入れが安定してるのよ。

みんな、どこにも行かないから」


その手は、ひどく冷たかった。


弁当は今日も100円だ。


商店街は、ずいぶん静かになった。



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