それは”区切り”のつもりで置かれたが、誰も戻ってこなかった
短編です
まだ生まれて間もない頃に足元を切られたときは、どうしてやろうかと思ったけど、そのあと行った場所が、水はきれいでおいしいし、空調は行き届いているし、日光とは少し違うけど、日当たりもいいし、最高の環境だった。足が地面にしっかりつかないけど、なかなか良い場所に住めてラッキーだった。
それなのに、他の仲間たちと一緒に、カサカサした真っ白な物に包まれて、またどこかへ移動させられた。移動中は少し水をもらえたけど、仲間たちと奪い合うように飲んでいたら、足りなくなるような量。最悪、乾燥しちゃうじゃない。
長い間そのまま移動して、私たちをカサカサした白い物と一緒に誰かが持ち上げた。外に出たみたい。風を感じる。風の中に、ベタベタしたものが混じってる。ここの空気あまりおいしくないわ。寒すぎるし、風も強い。日差しも少ないし、明らかに私がいた環境より良くない場所なのはわかった。足元の水も少なくなっているし、早く水をくれないと、私たちみんな乾燥で死んでしまう。
私たちを抱えるやつは、まだ移動している。正直根元をギュっと持たれると、痛いし、苦しい。それに暑い。とても過ごしやすい環境とは言えないわね。早く綺麗な水をくれないかしら。だんだん息が苦しくなってきた。仲間たちも苦しそうな声を上げてる。まったく困ったものだわ。
風にはほかの仲間たちの情報も混じっているけど、どうやらこの辺には潮風って言う特別な風に耐えられる種類の仲間たちしかいないみたい。そんなの生まれてこのかた感じたことのないモノよ。体にまとわりつくベタベタが、水分を奪っていくみたい。この潮風ってやつ、私大っ嫌いだわ。でも私たちには自力で移動する手段はないから、こうやって誰かに運んでもらわないと、仲間を増やすこともできない。
移動する動きが止まった。私たちを運んでいた奴はそこからしばらく動かなくなった。
時々、ポタポタと水をくれたけど、ソレもなんだか潮風みたいで、あまり飲用に適しているとは思えない。お願いだから水を頂戴よ。飛び切り美味しくて綺麗な水を!
そう願っていると、そいつは私たちをそっと地面に下した。地面だわ!久しぶりの地面!やった!これで土から栄養と水がもらえる!!と思ったけど、なんだか硬い。土じゃないみたい。石?石の上なの!?石の上じゃ私たちは生きられない!どうしてくれるの!?
「ごめん、でももうそろそろ、俺も前を向かなきゃ」
何!?何て言ったの!?運んできたやつが、何かを言っていたけど、私にはそれが何の意味を含んでいるのかも、なんて言ったのかもわからない。
運んできたやつは私たちを硬い地面の上に置いてどこかへ行ってしまった。
まって!待ってよ!水をくれなきゃ!こんな風も強くて塩っ辛くって、寒い場所じゃ生きられない!お願い!誰か!水を頂戴!
雲がどんどん移動してく。お願い、雨を降らせて!水を頂戴!お願い!誰か!誰か!!
そのうち私たちは、風に吹かれて転がって行く。ああ、私たちは次はどこへ行くのかしら、次の場所に行くまでに、生きていられるのかしら。
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