吸血鬼と夜の都
ヴェロニカの件を正妃マリアと話していた梢。
会話の中で、ワインの話になり側妃クレアの毒の結晶化、排出の話が出て理由が分からず梢は首をかしげる。
それをクロウに言うと──
「吸血鬼も色々とあるものだな」
来賓の館で私はマリア様と話をしていた。
「そうですねぇ」
マリア様は苺のワイン、私はレモネードを飲んでいた。
「あの、ヴェロニカ殿があそこまで発狂するとは相当根深いな」
「根深いというか、エリザベートさんの業が深いといいますか、性格悪いと言いますか……」
「愛し子様もそのように言えるのだな」
「私も生理的に受け付けませんでしたので」
「なるほど」
ちびちびと飲む私に対し、マリア様はくいっとワインを飲み干した。
空のワイングラスにワインを注ぐ。
「悪酔いしませんか?」
「他のワインでは悪酔いするが、ここのワイン。いや、酒類では悪酔いはしないな」
「はぁ」
「クレアも、このワインとジャムのお陰で健康になれたしな」
「そうなんですね」
「まぁ、毒が結晶化して口から排出されるとは思わなかったが……」
「なるほど……」
ちょっとだけ気になったけど聞かないことにした。
だって、呪いとか瘴気とかを浄化する飲み物が、毒だけ結晶化するとはちょっと理由が分からなかったのだ。
そのことをクロウに話すと──
「おそらく毒に悪意が込められていたからこそ、排出したのだろう。うっかり毒を摂取した場合なら解毒されて、排出されることはない」
「なるほど?」
「いやはや、お前の作るものは毎回驚かされる」
「そりゃどうも」
「で、今日の飯は何だ」
「んークロウ達が絶対行くなって言ってたダンジョンあるでしょう? クロウ達が今日行ってきた」
「ああ、あそこだな」
「そこでオクトパス元い蛸が大量に捕れて渡されたから蛸飯」
「米か……」
「駄目?」
「美味いなら良い」
「それにたこ焼きもつけるよ」
「オクトパスを焼くのか?」
「ちょっと違う、焼くけど違う」
ちょっと違うんだなーと思いながら私は家に帰っていった。
蛸を沢山使って蛸飯を作る。
レシピをクラフトで確認しつつ、あれこれ入れて巨大な魔導炊飯器で炊く。
そして、スマホのアプリで購入したたこ焼き器。
これでたこ焼きを作る。
ホットプレートの奴買ったから、今度これを素にして魔導ホットプレート的な物を作って貰う予定。
「さて、じゃあやりますか」
シンプルに行こう。
液体を作り、蛸を大ぶりに切り、たこ焼き器に全部注ぎ、蛸を入れ、焼けたらひっくり返す。
そうシンプルに作る事にした、でもこれが難しい。
青のりは見慣れないが、ソースとマヨネーズは見慣れるようになってきたのでかけるのにはそれを使う。
「できた」
蛸飯に、たこ焼きも大量に作ったので、たこ焼きにソースをかけてマヨネーズもかけておく。
それをクロウの家に運んでノックする。
「クロウ、ご飯だよー」
『おお、飯か。嬉しいのぉ』
おじいちゃんバージョンだった。
扉を開けて、床に置かれた器にこんもりと蛸飯をよそい、隣にたこ焼きを置く。
そして水飲みの器に水を新しく注いだ。
「じゃ、私帰るね」
『うむ、ほほー。美味そうじゃワイ』
「たこ焼きは熱いから気をつけてね」
『うむ、分かった』
私はそう言ってクロウの家を出た。
勿論、自宅に戻る為。
「あら、リサさん、今日も食事誘うの駄目だったの」
「ああ」
食卓に座ると、料理の前でアルトリウスさんが言った。
実は結婚して少しの間は一緒に食事とか家に居たんだけど、向こうが息子の新婚を邪魔したくないって言って、一人暮らしをして、それからヴェロニカさんところで暮らすようになった。
実の祖父母とはあまり良い関係を気づけなかったフレア君とミラちゃんだが、リサさんにはよくなつき、祖母のようにしたって居るらしい。
ヴェロニカさんも、年齢的にはリサさんが若いけど、実の父母とはまぁこの間来たエリザベートさんの所為もあって上手くいかなかったからリサさんが居てくれる事がかなり嬉しいらしい。
あと、噂程度の話だが、ヴェロニカさんに戻ってくるようご両親が手紙を送っているらしい。
が、ヴェロニカさんは「誰が帰るかバーカ!」の一文だけ載せて送り返しているそうな。
なんか、ヴェロニカさんの兄夫婦達もエリザベートさんのお陰でガタガタになると違う夜の都に引っ越して子どもが誰も居なくなってしまったそうだ。
一回、エリザベートさん締めた方が良いんじゃ無いか?
と、思うが私は関わりたくは無い。
「夜の都って貴族階級みたいなのあるのかな?」
「さぁ、それは分からない」
「私も夜の都の事はさっぱりです」
「すみません、お役に立てず」
「いや、聞いた私が悪いから気にしないで」
食事を終えて、満足感を抱えながらそんな話をしていた。
「ヴェロニカさんは嫌な思い出がありそうだから聞かないでおこう」
「となると誰に聞くのだ?」
「一人しかいないじゃん」
「あー……そうですね」
「うん、クロウ」
と、言う訳でクロウの家へと向かった。
「ん、どうした梢と三人とも」
「ちょっと夜の都について知りたくてさ、クロウなら知ってるでしょう多分」
「ああ、知っているが、ヴェロニカには──ああ、そうかあの女の件があるからか」
「そう、嫌な事思い出して欲しくないし」
クロウは頷いて私達に座るように促した。
椅子に座ると、クロウは紅茶を全員分用意し、砂糖も用意した。
私は砂糖を二杯入れる、アルトリウスさん達は一杯。
「夜の都って貴族階級みたいなのあるの?」
「ある、都の長が王族のような存在だ」
「長はどうやって決まったの?」
「始まりの愛し子によって夜の都を守るように託された事で決まった」
「ふむふむ」
なるほど。
「それなりに力がある吸血鬼ってこと?」
「その通りだ。飲まずの吸血鬼は飲む吸血鬼よりも基本力が弱い」
「え、そうなの?」
「まぁ、お前や今この村にいる吸血鬼は違うがな」
「どうして?」
なんでだろう?
「当たり前だ、お前の作ったブラッドフルーツは様々な加護がある、それをブラッドワイン等にして飲んでいるんだぞ。血を吸う吸血鬼よりも遙かに強くなっている」
「それヴェロニカさんに言っとけば、あの時ボコって二度と来ないようにさせてたんじゃ無いの?」
「……それは我も今思いついた」
「おい」
言ってあげてよクロウ。
私より知識あるんだからさ。
「まぁ、次来た時言っておく」
「そうしてあげて」
「また夜の都は吸血鬼の血を引くものとその伴侶しか入れない」
「でしょうね」
「またその伴侶が本当は吸血鬼を皆殺しにしようと企んでいようものなら都の闇に拒絶される」
「結構万能」
始まりの愛し子、色々考えて夜の都作ったんだなぁ。
「拒絶された上、妖精と精霊に呪われる」
「なるほど」
「夜の都の周囲には村があり、そこでブラッドフルーツが作られ夜の都で購入される」
「なるほど……ヴェロニカさんとアレックスさんはその村で出会ったんだよね」
「確かな」
「でも、アレックスさんはヴェロニカさんが吸血鬼だから大反対されて実家と縁を切られたって……」
「何、雇われているからといって吸血鬼を忌避してない訳では無い」
「なんかなぁ」
だったら他のところに行ったらいいのに。
「夜の都周辺で暮らしてたのがバレると何処に行っても針のむしろだ」
マジかよ、詰みじゃない。
「他に聞きたいことは?」
「あー……また何かあったら聞くね」
「分かった」
「紅茶ありがとう、ご馳走様」
「お前が作った紅茶と砂糖だぞ、礼を言うのはこちらだ」
クロウは微笑んだ。
その微笑みが少し誇らしかった。
「それにしても吸血鬼と、吸血鬼に関わるってだけで忌避されるの、どうにかならんのかね」
私は盛大にため息をついた。
吸血鬼って大変なんだな、と再度実感した。
ヴェロニカには兄達が居ますが全員エリザベートの悪影響から家族を守るため別の夜の都へ移住しております。
連絡とってないし、行き場も知らないのでヴェロニカへの圧とヴェロニカのストレスは相当なものでしょう。
そして夜の都について知る梢、結構凄い都なのが分かりました。
そして梢印のブラッドワイン、血を吸う吸血鬼の方が吸わずの吸血鬼より強いですが、梢印のブラッドワインを飲んでいる吸血鬼に関しては別物です、ワインのんでる吸血鬼の方が圧倒的に強くなります。
あと、吸血鬼はかなり忌避される存在です、ダントツ一位で忌避されてます。
だから梢はどうにもならない事に諦めを感じてます。
さて、今回ヴェロニカはあまり出てませんが反撃に出るのでしょうかね。
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