夫婦の時間(2)
夕方目を覚ました梢はアルトリウス達、三人と食事をとった。
その後畑仕事などを三人と行い。
祭りの賑わいを見せている村へ三人と向かう──
「ふぁあ……」
夕方私は目を覚ました。
パジャマからジャージに着替えて下の階へと下りる。
洗面所で顔を洗い、髪の毛をとかして食堂へ向かう。
「おはよ……」
「お早う、コズエ」
「お早うございます、コズエ」
「お早うございます、コズエ様」
「んー……今日のご飯」
「ブルーベリーのジャムを塗ったパンに、ハムとスクランブルエッグという料理と、銀牛から絞ったミルクです」
「うん、有り難う」
私は出されたそれらを食べる。
ジャムとパンは美味しかったし、ハムは分厚く、かみ応えがあって旨みが暁色されてて美味しかったし、スクランブルエッグはバターを使ってあるのかコクと甘みがあって美味しかった。
「ご馳走様」
「ちょっと畑を見に行くね」
「ついて行こう」
「ついて行きますとも」
「お供します」
と、四人で畑に行くことに。
収穫できる作物と果樹は全て収穫されてあった。
収穫された箇所は整備しておいた。
そして巨大な作物が取れる場所は私が収穫してアイテムボックスに入れてから、畑を整備して種を植えた。
土をいじる箇所は四人でやり、植物の手入れとかは三人でやった。
植物はアルトリウスさん触ったら枯れちゃうもんね。
土ならともかく。
あ、ブラッドフルーツは手入れして貰った。
ブラッドフルーツなら枯れないからね。
「これからどうする?」
家に戻りジャージから小綺麗な格好、御洒落なワンピースに着替えて言う。
「私アイスが食べたい」
自分で作るアイスも良いが、たまには人様の作ったのが食べたい。
「では、行くとするか」
「そうですね」
「はい」
三人と村──獣人と人間の居住区へ向かう。
村は大賑わい。
「シルヴィーナ、大丈夫?」
「大丈夫です、レームや他の方に助けて貰ってますので!」
「そ、そう?」
「だからコズエ様はゆっくりお休みください!」
「うん、じゃあアイスくれる? 苺で」
「はい!」
「俺はシャーベットのブラッドフルーツをくれ」
「了解っと!」
「私はシャーベットのレモンを」
「了解!」
「私はアイスクリームのバニラを頂けますか?」
「はい!」
全員別々。
苺は甘酸っぱく美味しいのだが、私の好きなアイスはまだ私しか再現できていない。
ラム酒をベースにライム混ぜたノンアルコールの某アイスクリーム屋さんのアイスだ。
私はこれが大好物なのだが、不味いと評判らしく必ず味見をさせてから注文を取るように言われているらしい、後確認。
一応作れたのだが、不味いと言われたらショックなので一人で楽しんでいる。
かき氷の方を奈緒さんがかき氷器で氷を削っている。
それを一二三ちゃんがシロップをかけて渡している。
一二三ちゃん、そこは大人がやるところやで……と、言いたくなった。
いや、言う。
「一二三ちゃん、お父さんのお手伝い? 偉いねぇ、でもアイスとか食べたくならないの?」
「大丈夫です! 日中食べましたし、お父様のお手伝いをするのが将来の役に立つかと!」
すげぇなこの子、この年でもう将来の事考えてるよ。
「将来は里に戻るの?」
「いいえ、私は梢様の元で働きたいと思っています! 父もその為に来ていますので!」
「跡取りとかの心配はないのか?」
「あ、それは無いです。私の姉……長女の家族が跡継ぎとなっておりますので」
奈緒さんが応える。
「じゃあ、どうして奈緒さん達がきたの?」
「最初は兄の五郎家族と他の家族が行く予定だったのですが、一二三がどうしても愛し子様にお仕えしたいと祖母に申し出て祖母がそれに折れて私も行くことになったんです」
やっべえな、私そんな人に仕えられる程立派な大人じゃねぇぞ?
「ひ、一二三ちゃん、私そんなに立派な存在じゃないよ?」
「いいえ、梢様は立派な御方です! 色々な方々を人種関係無く受け入れ、開墾し、開拓し、畑や果樹、田んぼ等、多くの作物を作って私達に無償で提供してくれる。こんなことは他の方々はできません!」
周りの皆がうんうんと頷いている。
顔が赤くなる、恥ずかしくて。
私はそれを鎮める為にアイスを口にした。
ひんやりとした苺の味が少し熱をが引ける感じがした。
「あ、あんまり褒めないでね。私やってることがただそうなってるだけだから」
やった事に、今までの結果がついて回っている。
そう、それだけのこと。
田んぼを作ったのもお米が食べたいからだし、小麦畑と大麦畑も同じようなものだし、果樹園は果物が食べたいからだし、畑は野菜が食べたいからだし、保管庫は新鮮な野菜をいつでも食べられるようにしたかっただけだし。
村の方だって似たようなもの。
作ってて楽しかった。
畑も、村も、果樹園も、何もかも。
スローライフと言う名前だけど、スローライフじゃない日々。
楽しくて仕方ない。
聖獣という家畜のお世話も、畜産物の回収も、何もかもが楽しいのだ。
ただ、楽しくてやっていたことを褒められると、なんか気恥ずかしいというか罪悪感が湧くというか。
「あんまり褒めないで!」
「喜んだらどうだ、天職だったという訳だぞ」
「クロウ!」
クロウの声に振り返ると、アイス、シャーベット、かき氷を制覇していた。
お前の腹はどうなってるんじゃ。
「どういうこと?」
「やっていることが苦ではなく、他者から褒められるのであれば、それは天職といえる。と神から仰せつかったのでな」
「はぁ……」
「ならば誇れ、お前は自分のやりたいことで生きる喜びを見いだしているのだから」
「うん、まぁ、有り難う」
としか返事ができない。
褒められて嬉しいが、天職なのかと言われると自分では納得できない部分もある。
だってこれが天職になったのは私が愛し子で、精霊と妖精と神々に愛されているからである。
そうじゃなければ、こんなに簡単に作物を作ったり、家などを作ったりできないだろう。
つまり「愛し子」が天職ってことか?
なんじゃそりゃ。
「コズエ、アイスが溶ける」
「わわ!」
慌ててアイスをかっ込む。
口の中がひんやりする。
かき氷じゃ無くて良かったと心底思った。
「全く、妙なところで悩む癖は抜けんな」
「仕方ないじゃん」
色々と理由があるんだよ。
「まぁ、そんな下らん事で悩んでないで、短い四人の時間を大切にな。何せお前は夜行性なんだから」
「わかってますぅー!」
むくれる私。
知ってるよ、アインさんとティリオさんは朝方元い人間だから、夜型であるダンピールと吸血鬼である私とアルトリウスさんとは生活時間がずれてしまうんだって。
だから今起きてる時間が大切なのも。
夕暮れ時から二人が眠るまでのわずかな時間。
悩んで居る暇はない。
楽しまなければ。
「コズエ様、あちらで飴売りをしてるそうですよ」
「どんな飴?」
「果物を飴で包んだ物だそうです」
「行こう!」
「はい」
「行くか」
「勿論です」
手を引き村の向こう側へと向かう。
まだ、夜の時間は余裕がある。
だから楽しまなくっちゃ!
夫婦の時間を満喫している梢。
今まで中々時間を割けなかったので梢自身も楽しんでます。
あと、好きなアイスはあのアイスクリーム屋さんのアイスです、わかった人いるかな?
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。




