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イザベラ達の迎え

森の入り口に馬車がやって来た。

イザベラ達と共に出迎えると、現れたのはイザベラの兄マルスだった。

兄との再会を喜ぶイザベラだったが──




 白亜に言われてついにやって来た夕刻。

 私は目を覚まし、森の気配を感じ取る。


──もうすこし、かな──


 そう思いながら収穫や水やり、聖獣達のお世話とくれる畜産物の回収、小屋へ戻すなどをやっていた。


「来た」

「コズエ様!」

「うん」


 森の入り口へとイザベラちゃん達を連れ行く、勿論抱きかかえて。

 そして森の入り口で降ろし、馬車が近づいてくるのを待つ。

 イザベラちゃん達は私の後ろに隠れている。


「イザベラー!」


 若い青年が顔をだした。


「マルスお兄様!」

 馬車が止まり、青年が駆け寄ってくる、イザベラも駆け出す。

「マルスお兄様!」

「ああ、イザベラ! 無事で良かった‼」

「愛し子様に助けていただいたんです!」

「愛し子?」

「ええ、こちら神の愛し子のコズエ様でございます。この森を開拓し、畑を作り、聖獣を愛し、精霊や、妖精達にも愛されております」

「あ、あははは、らしいです」

「らしいとは?」

「コズエ様には自覚がないのです」

「まぁ、話も何ですし、そろそろ夜にもなるので……」

「イザベラ様!」

 何か黒いものが滲み出ている女性が馬車から降り近寄ろうとしたが弾き飛ばされた。

「な、なんなのこれは!」

「来ないでテレジア! 貴方が野党連中に私達を売る手引きをしたのを忘れた訳じゃないのだから!」

「何だとテレジア! 貴様乳母なのにイザベラを売ったのか!」

「そやつはただ売ったわけではない、お前達の側妃の一人メリーウェザーが自分の娘メリーをムーラン王国の王太子の婚約者にする為にイザベラを亡き者にしようとしたのだ」

 クロウがいつの間にか来て説明をする。

「何だと⁈ 貴様何者──」

 クロウがエンシェントドラゴンに姿を変えた。

『我はエンシェントドラゴン、神の使い魔。今の情報は風の精霊達から聞いたのだ』

「えん、しぇんと、どらごん……⁈」

 護衛やら皆腰を抜かしている。

 イザベラちゃん達は何度か姿を見てるから平気そう。

「……分かりました、エンシェントドラゴン様。神の使いである貴方の言葉を信じましょう。テレジア、そうなのだな⁈」

「うう……だって、メリーウェザー様がイザベラ様を奴隷として売りさばくようにしないとお前の家族を奴隷にすると……‼」

「話は城に戻ってから聞く、近衛兵この者の監視を」

「は!」

『それと、愛し子である梢はこう見えて吸血鬼だ。怒らせないようにな』

 怒りませんよーだ。

「な……⁈」

 イザベラちゃんのお兄さんめっちゃ驚いてる、失礼だなぁ。

「本当よ、お兄様。だってコズエ様ブラッドフルーツを生で丸かじりすることもあるのですもの」

「本当なのか?」

「ええ、でも普段は普通の食事を取るわ。本人曰く寝坊した時だけブラッドフルーツを食べてるの。おっちょこちょいで、でもとっても優しいの」

 そんな風に見られていたのか私。

「血は吸われなかったのか?」

「ええ、全然。コズエ様はとってもお優しい方なの」

「マルスでんか、イザベラ様の仰るとおり、コズエ様は優しい御方です」

「吸血鬼であることなど気になりません」

「そうよ、お兄様」

「……分かった、イザベラとエンシェントドラゴン様達を信用しよう。村へ案内を頼めるか?」

「はい、どうぞ」

 私は村というか居住区に案内する。

「小さいが畑や果樹園が凄いな……あれは家畜小屋か? 二軒建っているがー?」

「あー片方が聖獣小屋で、もう片方がフェンリル達のお家です」

「聖獣とフェンリル達も暮らしていると⁈」

「アッハイ」

「お兄様、しぃー。ゆっくり休んでる時間なのよ」

「う、うむ、済まぬな」

「そう言えば、側妃の一人っていってましたけど何人もいるんですか?」

「正妃が一人、側妃が二人、だ。」

「複雑な家庭だー」

「我が国では普通なのですが……」


 王族って大変だなぁ。

 としみじみ思う私であった。


「借宿を作りましょうか」

 私は空きスペースにクラフトで二階建ての一軒家、まぁ、他の家同様ログハウスを建てる。

「今日はここでお休みください」

「……はっ! 貴方様は本当に愛し子なのですね?」

「さぁどうでしょうか」

「愛し子です、だからこの森の開拓を許されているのです」

 シルヴィーナが言うとマルス王子達、平服した。

「か、数々の無礼をお許しください!」

「いやぁ、気にしてませんので、ソレよりもイザベラちゃんの心のケアを優先させてくださいね」

「はっ!」

 イザベラちゃん達と共に入って行くマルス王子と一部の近衛兵。


「さて、なにするかな? うーん、ホワイトリカーはスマホの販売で買えるから梅の木植えるか」

 そう言って自分の家に戻り色々と購入する。

 梅の木、葡萄の木、レモンに、キウイとか色々。

 苺やメロン、スイカとかも購入。


 果樹園を広げて木を植える。


「精霊さん、妖精さん、ようく育ててくださいな。大きく育って美味しい実を一杯つけてくださいな」


 そう言いながら肥料を水をあげた。





『愛し子様からのお願いだー!』

『ようし、精一杯頑張るぞー!』

『大きくなぁれ、美味しくなぁれ!』





 と、精霊と妖精達が騒いでいるのを、シルヴィーナは遠い目で見つめた。





 翌朝、普段なら私は眠っていた。

 が、イザベラちゃんが帰らなきゃいけないという事で急遽色々と持たせた。

 自作キャラメルを入れた袋と購入した飴を入れた袋と、イザベラちゃんが大好きなブルーベリーの苗を一つと、取れたてブルーベリーをパック詰めにしたものを手製の鞄に持たせてあげた。

 リーゼちゃんとミーアちゃんも同じように持たせてあげた、リーゼちゃんはサクランボ、ミーアちゃんはラズベリーだが。


「コズエ様、また来ていいですか?」

「私はいつでも大歓迎だけど、お父様達に許可貰ってからじゃないと駄目よー」


 イザベラちゃんは王族だ、今生の別れになるかもしれない覚悟をしている。


「大丈夫ですわ! お父様を説得してみます! 駄々をこねたらマリアお母様のように物理で許可をもぎ取りますわ!」

「マリアお母様? イザベラちゃんのお母さん?」

「いえ、正妃マリアです。側妃の子である私達にも優しくしてくれますが、怒ると父上でさえ敵いません」

 マルス王子、頭痛そうにしてるな。

 お兄ちゃん頑張れ。


「じゃあ、またね!」

「はい、また!」


 私はほんのり寂しい気持ちで見送った。


『コズエ様、護衛をしておきましょうか?』

「白亜……うん、そうだねお願い」

『分かりました、姿を隠して護衛してきます』

 白亜は走り去るのを眺めていた私は──





「これは?」

「キャラメルといって牛の乳からできるとっても甘いお菓子なんですの。でも作るのが大変だからコズエ様が私達の為に夜遅くに作って下さったのですわ、きっと!」

 マルスは濃厚で甘く、そして乳の味もわずかにする菓子に驚いていた。

「そしてこれが私があの村でよく食べたブルーベリーという果実なんです、苗を貰ったから庭に植えてくださいね」

 イザベラはマルスの口にブルーベリーを運ぶ。

 マルスはソレを食べると甘酸っぱく濃厚な味が広がり、そして活力が満ちる感じだった。

「これは素晴らしい……!」

「コズエ様は妖精や精霊が見えていませんが、妖精や精霊はコズエ様の言葉を聞いて下さるので、きっと植えたら村のような果実が実りますわ。リーゼやミーアの苗も」

「それは良いな」

 マルスは思った。

 神の愛し子が吸血鬼というのは前代未聞だが、紛れもなく愛し子であるのが分かった。

 奴隷にされた者の隷属の首輪を破壊し、育てた果実の汁でイザベラを救ったというあの女性──コズエ。

 イザベラが交流することが国にとって益であると思った。

「ところでイザベラ、その服は?」

「ふふ、可愛いでしょう? コズエ様が作って下さったの」

「なんと……」

 其処までコズエは無償の愛を子ども達に持って居るのかと感嘆した──






イザベラが奴隷にされた経緯が明らかになってきました。

きっと戻ったら何かあるでしょう。

そしてイザベラが帰宅時、夜中に頑張って梢はキャラメルを銀牛の乳から作りました。

かなり高級な代物ですが、イザベラはそこまで気づいていません。マルスもです。

梢は、かなり好印象を持たれたようです、吸血鬼ですが。


ここまで読んでくださり有り難うございました。

次回も読んでくださると嬉しいです。

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