かき氷とヴェロニカの悩み
妖精と精霊に頼んで氷を出して貰い、かき氷を作る梢。
子ども等が各々好きなかき氷を注文していくと、ダンピールのフレアとミラがやって来る。
ブラッドフルーツのシロップもあると言うと喜ぶ二人にかき氷を提供し、それを見ていた吸血鬼を親に持つ子等が同じ物を注文し始める──
「と言うわけで氷を出して欲しいの」
『暑いのは苦手だけど、愛し子の為なら頑張るよ!』
『だからかき氷を私達の分も頂戴?』
「うん、それくらいなら」
かき氷器を購入する。
それを持って外へ、行き、アイテムボックスに入れたシロップ達を出す。
苺、はちみつレモン、ブルーベリー、みぞれ、梅シロップ……等など。
器を取りだし、外の炊事場で、かき氷を作り始める。
「何がいい?」
「梢様、苺でお願いします!」
「はいはいー」
ふわふわの氷に、苺の果肉入りシロップをかける。
「わぁ!」
一二三ちゃんはそれとスプーンを受け取り、端っこによる。
「いただきます!」
そう言って食べると目を丸くした。
「いつもより氷がふわっと溶けて、かけている物も美味しいいちごの味! それが合わさってとても素敵!」
「それは良かった」
「コズエ様、僕も!」
「俺も!」
「アタシも!」
「私も!」
「はいはい、順番順番、並んでー」
並んでいる子ども達にかき氷を振る舞う。
皆思い思いのシロップを選んでいる。
並んでいる子ども達がはけると、その隅っこでこちらをちらちら見る小さな影が二あった。
アエトス兄妹だ。
私は手招きした。
「フレア君、ミラちゃん、おいで」
二人は恐る恐るやって来た。
「かき氷食べたいの?」
二人は小さく頷いた。
私はアイテムボックスからブラッドフルーツのシロップを出す。
「ちゃんと、ブラッドフルーツのシロップも作ってるからね」
二人の顔がぱぁっと明るくなる。
「愛し子様、ください!」
「くだしゃい!」
「はいはいー」
二人の器に削った氷を乗せ、ブラッドフルーツのシロップをかけてあげる。
二人はそれをその場で口にすると、嬉しそうな表情をした。
二人が食べているのを見て、他のダンピールと吸血鬼の子ども達がやって来て、同じ物を注文し始めた。
私はそれを作り、提供する。
全員ご満悦の表情で食べていた。
「かき氷とは懐かしいですね」
「里でも食べてたのですか?」
「ええ、氷を術と精霊と妖精の力で作り、削り、あまづらをかけて食べていました」
あまづらって平安時代でいう甘味料だよね。
かき氷って贅沢品かやはり極東でも……
「極東でもかき氷って贅沢品?」
「そうですね、夏に氷は高級品で統治者達が食べている位ですね、私達白狐は妖精と精霊と対話できるので氷は手に入りましたが……」
「なるほどー」
「ただ、これほどのかき氷にかける物があるとは思いませんでした」
「あははは」
私は少しだけ遠い目をした。
本当は元の世界からシロップ取り寄せられるんだけどしなかったんだよねぇ、アレ色は違うけど味は一緒らしいから……
「アイスクリームとシャーベットは今年はやらないのか?」
ヴェロニカさんがブラッドフルーツのシロップをかけたかき氷を食べながら尋ねたてきた。
「大丈夫ですよ、作りますから」
「それは良かった、かき氷も悪くないが、やはりシャーベットやアイスクリームの方が我らは好みだからな」
「なるほど」
人の好みは色々あるもんねー。
かき氷が好きな人用、アイスクリームが好きな人用、シャーベッドが好きな人用に分けて色々つくるべきかな。
私はかき氷を作り、苺のシロップをかけてもぐもぐと食べる。
ふわふわの氷が溶け、シロップと濃厚さと合わさって美味い。
口溶けが心地よい。
「さて、やることが沢山だぞ」
畑も果樹園に、田んぼに、小麦畑にetc……さて、頑張らないとね。
この土地と、私の愛し子としての能力で作物達はあっという間に実る。
だから美味いことやっていかなければ。
冬だけは休めるのだから。
まぁ、今は夏真っ盛りに入る手前。
村総出で収穫と、狩猟を行っている。
今も夜の狩猟チームが出て行っている。
「フォレストボアを狩ってきた」
アルトリウスさんがそう言ってやってきた。
村の広場を見れば、明らかに巨大な猪が。
「ワーオ」
「今日の成果はアレ一匹だ」
「十分十分。日中も取れたからね」
「そうか」
アルトリウスさんはそう言って解体場へと向かった。
外につるす用の器具を置いてあるから巨体のでもある程度は外で衛生的に解体できる。
「私も行けばよかったな」
かき氷を食べ終わったヴェロニカさんが言う。
「今日は旦那さんが狩りに行ったんでしたっけ?」
「ああ、久しぶりに狩りをしたいと言ってな」
「そうなんですか」
「子ども達は寝ている時間だし、私も同じだから好きなようにと言ったんだ」
「ヴェロニカさんがその後狩りに行ってもよかったのでは?」
「子育てを夫に任せきりなのは母親として沽券に関わる」
「あー」
ヴェロニカさんの家、旦那さんの方が子育て積極的なんだ、ちょっと以外。
アレックスさんがヴェロニカさんのストッパー的かと思ってみてたけどそうでもないっぽい。
「どんな教育をしてらっしゃるんですか?」
「私は主にマナーなどに関することだ、厳しい分子ども達はアレックスになついていてな、私はおびえられる」
「マナーは大事ですが、それよりも子ども達のペースに合わせてあげる方が大事じゃないですか」
「ああ、ここに来てそれに気付かされたが、上手くいかん。プライドが変に邪魔をする」
ヴェロニカさんははぁとため息をついた。
「くそ、夜の都の統治者の一族の一人だというプライドが邪魔をして上手くいかん!」
「そんなに?」
頭をワシャワシャと掻いて乱したヴェロニカさんははぁとため息をついて頷いた。
「まだ一族のプライドに毒されているのがどうにかしたい、これでは子ども達の教育に良くない」
「どうしたのです?」
「あ、リサさん」
「リサ殿」
リサさんがふんわりと笑って椅子に腰かける。
「何を話していたのですか?」
「実は──」
私はヴェロニカさんの悩みを説明した。
「カインも似たような悩みを最初は持ってましたよ」
「カインって、アルトリウスさんのお父さんでリサさんの夫の吸血鬼でしたよね」
「飲まずのミストリアは夜の都でも有名だったからな、都から出たと聞いて誰もが耳を疑ったものだ」
「だから私はこう言ったのです『夜の都の吸血鬼ではなく、カインという一個人として息子とどう接したいか考えてみましょう』と」
「一個人として、子ども等とどう、接したい、か」
「少し時間はかかりましたが、夫はそれでアルトリウスとどう接したいか見つけ出し、アルトリウスに剣を教えつつ、それでも良好な関係を築けました」
「何故剣を?」
「吸血鬼の血を引くと言うことは忌み嫌われる存在であると言うこと、夜の都はその限りではありませんが、もし自分に大切な人ができた時、誰かを守らなければならない時にと剣を教えられたのです」
リサさんは少し悲しそうに微笑みました。
「アルトリウスの剣のお陰で、私は助かりここまで逃げてくる事ができました。あの子と一緒に」
「そうでしたか……」
「ヴェロニカ様、少し時間をとって貴方様自身がどう子ども達と接したいか考えてみてはいかがでしょう。ここは夜の都ではないのですから」
「そう、だな。そうするか。リサ殿助言感謝する」
ヴェロニカさんが頭を下げる。
「いいえ、どうか良い方向に向かうことを祈ります」
リサさん、アルトリウスさん育てたんだもんなぁ。
殺されちゃった夫さんと一緒に。
色々と思うところがあったんだろうか?
と考え込んでもどうしようもない。
「そう言えば愛し子様」
「んむ?」
「下世話な話になるんだが……子作りとかどうお考えで?」
ぶーっと吹きだした。
突拍子もない話が出て来たんだ、そうなる。
「まだまだ私の思考が子どもなんで子どもを授かっても周囲に迷惑かけるだけです!」
「そうかしら?」
「そういうものなのか?」
「ぶっちゃけると今の私が子どもを持つ自信がないのも理由の一つです」
「……そうか」
「アルトリウス達には不満はないの?」
「三人に不満はないです、私個人の問題です」
ときっぱり言い切った。
この世界だと結婚、出産が早いかもしれないけど、私は二の足を踏む。
だって、結婚してまだ一年も経ってないじゃん!
付き合い始めたのは去年の秋だけと今年の春結婚したばっかだよ!
もう少し夫婦生活をエンジョイしたい。
やっぱり私って我が儘だなー……と、思う今日この頃。
妖精と精霊と仲良しな為美味しい氷をいつでももらえる梢。
結果、かき氷だけでなく、アイス、シャーベットも作れると言うもの。
ヴェロニカは未だ実家の呪縛に囚われている感じですね。
それが解けるのはまだまだ時間がかかりそうです。
そして梢の子どもについて。
梢は親になる自信が全くと言っていいほどないので子どもを持つ勇気がないのです。
梢が親になるのは時間がかかるでしょう。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。




