無自覚な愛し子の私
梢はイザベラから軽く魔晶石の作り方を教えて貰った。
色々使い勝手があるだろうと思い作り始めるが──
マリア様はイザベラちゃん達が寝てから帰って来た。
会議事態は問題無く終わったけど、それまでが長かったとぼやいていた。
そして疲れたと言って来賓の館に入っていった。
「さて、ちょっとやってみたい事があるから」
と私は自宅の自室に。
イザベラちゃんから魔晶石の作り方を教わっていたので、ちょっと試しに作ってみることに。
両手に魔力を集中。
イメージで宝石を作る。
びかびか!
「あれ⁈」
様々な色の石がゴロゴロ机の上に落ちてきた。
びかびか光る物体から。
「どどど、どうしよう」
光ってるのは消えてくれない。
「クロウ来てー!」
と窓から叫ぶと、クロウが窓から飛び込んできた。
「一体何を……魔晶石作ろうとしたのか梢?」
「う、うん、そしたらびかびかした光ができて……」
クロウははぁと呆れたようなため息をつき、光を包んで握ると光は消えた。
その後私の脳天に拳骨が落ちた。
「いっ~~!」
「たいして魔法も使わん奴が魔晶石を作ろうなんぞ言語道断だ。我が手を出さなければこの部屋中魔晶石だらけになっってたぞ」
「げ」
マジか。
「まぁ、さすが愛し子なだけあって魔晶石の質は最高級モノだがな」
キラキラ輝く宝石を拾って見つめる。
「そんなに魔晶石が作りたかったのか?」
「いや、そうすれば宝石代浮くかなぁとか色々考えて……アクセサリーにしたら凄いかなって」
盛大にため息をつかれた、何だよ馬鹿にすんなよ。
「梢、お前自分の魔力で作ったもんでアクセサリーだと? 国がひっくり返るぞそんなもん作ったら」
「え゛」
「お前は愛し子としての自覚がたりないが、愛し子としての仕事はこなしている。問題は自覚の無さだ」
「し、仕方ないじゃん、私引きこもりなんだし」
「まぁそうだが……仕方ないお前に話をするまいと思ったが……」
「?」
クロウは仮眠用のベッドに腰を下ろして話始めた。
「まず、お前がほぼ毎日のように収穫している野菜と果物、香辛料、それ+森で狩った動物の肉を今後月一でドミナス王国に卸す方針が決まった、ワインや酒も瓶で一つずつ」
「うん」
「さて、いくらだと思う?」
「えっと、白金貨50枚位じゃない?」
「白金貨250枚だ、王家の月の出費は白金貨1000枚弱、つまり四分の一を食費に使うレベルになったのだ」
「マジかー」
「それくらい毒の事件で食料を安全で新鮮なものを得たいというところから来た、分かるか?」
「あーうん……」
「ドミナス王国は大国だ、だからできた事だ。ムーラン王国などではできんぞこんな事」
「ふへぇ」
「お前はそれだけの価値のあるものを作れるのだ分かるか?」
「一応、納得……」
「梢、お前は無意識に作物の魔力を注ぎ込んでいる。そんな奴が魔晶石を作ろうとしてみろ、意識的にやるとスムーズにできてたものが凝り固まっちまった駄目になる、それくらいわかるだろう」
「分からないからこんな事態になってるんだよね?」
「そこまで理解できてるなら話は早い」
クロウはそこまで言うと指を一本立てた。
「一つ聞く、それでも魔晶石は作りたいのか?」
「だって、あったら便利なんでしょう? 色々と」
「そうだな、過去の記録を映像と音声付きで保管したり、現在のも勿論できる。ただ質高いものじゃないと劣化する」
「なるほど……」
「ちょうど良いどうやって使うか見せてやる」
クロウは私の魔晶石を全部アイテムボックスに仕舞うと、そのまま私の首根っこを掴んで窓から自分の家へと飛んだ。
着地して、家に入ると、アイテムボックスから銀色の器を取り出し、水の精霊に水をなみなみと注がせる。
そして魔晶石を入れてぶつぶつと呟いた。
水を見ると音が聞こえる、それは私達の結婚式の映像と音声だった。
映像が消えると、魔晶石を取りだし渡した。
そして魔晶石を渡してきた。
「石を手のひらに置いて、再生と唱えてみろ」
「れ再生」
するど、魔晶石が光り、映像が空中に浮かび音声と共に流れる。
「ほへー」
「とまぁ、こう言う使い方が一般的だ」
「ほへー」
「まぁ、宝石としての価値もあるが、こういう意味合いでの使い方の方が強い」
「なるほど……ところで何で結婚式?」
首をかしげる私。
「他の連中は持ってるのに、お前だけ持ってないのは不公平だと思ったからだ」
「……え、持ってるのみんな?」
「ハイエルフと王族は持ってるだろうし、あの三人も魔晶石を作って映像の保存を頼んでいるだろう」
「ど、どうやって撮るの?」
「宝石の平らになっている面を向けて魔力を込めると撮れる、魔力が高いほど画質が良い」
「何で皆教えてくれないのー?」
「そりゃあ、一般常識中の常識だからな、知らないお前が不思議だったんだろう。まぁ記憶吹っ飛んでる発言からこの常識も吹っ飛んでもおかしくないとは思って居るようだったがな」
「うへぇ」
「まぁ、ここまで話しておいて分かったと思うが、今のお前は一人で魔晶石を作るととんでもない事態に発展しかねない。だから我が見てやる」
「え、他のヒト達は?」
「愛し子の魔力暴走を止められるなんぞ我位だぞ、自分が愛し子というとんでもない存在であることを忘れるなよ、吸血鬼であることは忘れても良いが」
「いや、どっちも忘れちゃいかんでしょ」
吸血鬼なのも愛し子なのも。
「ところでクロウは寝なくて平気なの?」
「百年単位で寝てたから今は起きてて問題無い、寧ろ眠って何かあったら困る要素がいるのでな」
と私の額にデコピンする。
「いてっ」
「梢、お前だ。お前が心配なのだ」
「ぶー……だって」
「愛し子になったのはお前の我が儘を叶える為に神々がそうしたのだろう、だからこそ、愛し子故に引きこもっている事が重要か考えておけ」
「うーん、政治利用されるから?」
「そうだ、正妃マリアは政治利用を若干しようとしている、マルスの結婚式とイザベラの結婚式で」
「へー……」
「ドミナス王国は愛し子が最後に穏やかに過ごせた国としての誇りがある、それ故の政治利用だ」
「最後まで?」
「知らんのも無理はない、お前の前の愛し子はドミナス王国にいた最中に、カインド帝国の連中に攫われて処刑されたのだ」
「え、わざわざ誘拐して処刑したの、なんで⁈」
「当時カインド帝国は強大になりつつあった、その力を誇示するために愛し子を攫い処刑しようとして滅びた」
「馬鹿じゃん」
「その通りだな」
クロウは呆れたようにため息をついた。
「お前は自分の力を把握仕切ってない、使い切れてない、だから何かあると爆発的な事が起きる」
「う、うん」
「本音言うと、すろーらいふ以外の事は面倒だがしたくないが、関わってきた相手が相手な為、もしくは事情が事情の為そうせざる得ないと思ってるだろう、大抵のことは」
「う゛」
図星を突かれる。
「全くそんなだから目が離せぬ」
「うーでもでも」
「取りあえず受けてしまったものはやらせるが、公に愛し子と名乗らせないようにする、我の弟子ということだ」
「はぁ」
「明日正妃にもそれで話を通させる、お前が政治利用されるのは御免だ」
「弟子ってことで通りますかね?」
「お前が愛し子だと知ってるのはごく少数、だから我が弟子で通させる、異論は認めん」
「えー」
このクロウ、横暴だ、マジで。
「いいな?」
「へい……」
でも、全部私の為だしなぁ、仕方ない。
我慢しよう。
「さて、そろそろお前を家に帰さないとな」
「ふへ?」
クロウは扉を開けた。
どさどさどさと、三段重ねになるアルトリウスさんにアインさんに、ティリオさん。
「妻が自分達じゃない男のところにいって不安だったから聞き耳をずっと立ててたんだぞ此奴等」
「えー!」
気付かなかった!
「再三言うが、我は梢を恋愛対象として全く見ておらぬ。安心せよ、暴走した時手助けできるのは我位だからな」
「悔しいがその通りです」
「エンシェントドラゴン様には敵いませんねぇ」
「あのお二人とも重いんですが」
「アルトリウスさん、アインさん。ティリオさんが可哀想だから退けたげて」
二人が退けると下敷きになっていたティリオさんが立ち上がった。
「分かったらいつも通り畑仕事でもしていろ」
「はーい」
家の方向へ四人で歩いて行く。
「ごめんねー心配かけちゃって」
「いや、君が何かあった時何もできない自分が辛い」
「そう思い詰めないでよアルトリウスさん」
私はからからと笑う。
「じゃあ、ティリオさんとアインさんはお休みなさい」
「はい、お休みなさい」
「お休みなさい、コズエ様」
そう言って家の前で別れる。
「じゃあ、アルトリウスさんは夜の狩り頑張ってね」
「ああ」
アルトリウスさんを見送り、私は畑へと向かった──
梢が無自覚なところが大量にあるんですよね。
愛し子の自覚がない、吸血鬼の自覚はあるけどたまに忘れる。
間が抜けているんですよね。
そんな梢だからクロウは目を離せないのです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
イイネ、ブクマ、感想、誤字報告等有り難うございます。




